ヒューストンとメキシコ湾岸(ガルフコースト地方)

Houston & Gulf Coast Region


 テキサス州ガルフコーストの中ほど…ラテン語で「キリストの聖体」というありがたい名前の都市コーパスクリスティの周辺には、冬になると、ウィンターテキサン(冬だけテキサス人)と呼ばれる観光客がやってきます。緯度的にはフロリダ州のオーランドよりも少し南ですから、冬もほどよく暖かいのです。私の知人のテキサス人も、元はといえば、毎冬、カナダのアルバータ州からテキサス通いしていたリピーターの観光客だったそうです。下のGoogleマップをズームアップしていただくと一目瞭然ですが、ヒューストンから西の沿岸にはバリアアイランドと呼ばれる砂州が連なり、最高の釣り場なのだそうです。

 でも、この地方の産業で最も重要なのは、観光よりも港湾ビジネスです。2004年のアメリカの上位149港の貨物取扱量の表が見つかったのでグラフにしてみました。ごらんください。

テキサス州とルイジアナ州の主要港貨物取扱量

より大きな地図で テキサス州ガルフコースト地方 を表示

 グラフにするまで私自身が知らなかったことですが、ガルフコーストだけでアメリカの貿易の半分近くを取り仕切っているのですね!! 

ヒューストン港

 ヒューストンには、バッファロー・バイユーというメキシコ湾岸に特有の低地をゆったりと流れる川があります。1900年に湾口の砂州にある港町ガルベストンがハリケーンで壊滅した事件を契機に、鉄道網の要=ヒューストンのバイユーに航路が掘られて大港湾ができました。

ヒューストン港の地域別貿易量

 規模の大きな複数のコンテナターミナルがあり、貿易貨物の取扱量は全米一。周囲には石油精製施設が林立し、フォルクスワーゲンやアウディが陸揚げされる一方で伝統的な綿花の輸出も健在です。

ボーモント港

Spindletop

 ボーモントも、東隣のルイジアナ州の港町レイクチャールズも、砂州が発達して湾が潟湖(せきこ)になっている違いを除き、ヒューストンとそっくりの地形です。テキサス独立直後から地域の米作や林業の中心となっていましたが、1901年にテキサス初で世界最大のスピンドルトップ油田が掘り当てられ、以後、石油積出港として発展します。人口1万人の町が3ヶ月で5万人に増えたそうですから、すごいですね。

ミシシッピー川河口の4港とガルフ沿岸内水路(Gulf Intracoastal Waterway)

アメリカの内陸水路と各州の輸送額(⇒拡大)

100億ドル以上20〜100億ドル10〜20億ドル1〜10億ドル1億ドル未満

 ミシシッピー川の河口は、外洋船がさかのぼることができるバトンルージュまで切れ目なく港〜港といっても大げさではないでしょう。テキサスの港に比べて、輸出と国内貨物の取扱量が多いのは、アパラチアの石炭などミシシッピー川やオハイオ川の上流からはしけで運ばれた貨物が外洋船に積み替えられて輸出されるからです。

 右の図は、アメリカの航行可能な内陸水路を示したものですが、ガルフコースト沿いに水路が走っているのにお気づきですか?そばに海があるのにわざわざ作る必要もなさそうですが、湿地帯を流れるバイユーや砂州の内海伝いですから掘削の手間はさほどかからないのでしょう。

 フロリダ州カラベルからメキシコ国境のテキサス州ブラウンズビルに至る1700qの長い水路。これを利用して、ミシシッピー川のはしけがそのままテキサスの港に乗り入れることができるのです。Googleマップの作成中に、ヒューストンの近くを航行中のはしけの姿を見つけました。