ウィスコンシン州 ミルウォーキー マディソン ウィスコンシンデルズ

　アメリカには全部で11の国立景勝トレイルがありますが、ウィスコンシン州の氷河期トレイル（Ice Age Trail）もその一つ。そもそも、州の全域に氷河の痕跡が残っているといっても、言い過ぎではありません。

　｢北部高地｣は、北米大陸の最古の時代に形成されたカナダ楯状地という大地の南端で、シクアマガン-ニコレ国立森林公園のような大森林に覆われています。ミネソタ州と同じく、氷河が土地を削りながらゆっくり流れて作り出した湖が至る所にあり、鉱物資源も豊富です。

　氷河期は過去に何度もあったといわれていますが、ウィスコンシン州は緯度が高いわりに全域が氷河に覆われることがありませんでした。特に寒かった前回の氷河期にも、南隣のイリノイ州では南部まで氷河が達したというのに、「西部高原」一帯は氷河に侵食されず、穏やかにカーブする自然の丘陵が残りました（Driftless Area）。

　氷河期は1万9千年前にはピークを過ぎ、その頃、「中央平野」に現在のソルトレイク並みの巨大な氷河湖ができていました。1万5千年前には、さらに気温が上昇して氷のダムが決壊。大洪水が西部高原の谷間を一気に突き破り、現在のウィスコンシン川ができたと考えられています。ウィスコンシンデルズの峡谷の奇景が誕生したのは、このときです。

　ウィスコンシン川の上流と下流が、ほぼ直角に曲がっているのは2つの川が合体したからです。マディソンを流れるヤハラ川は、ロック川に合流してイリノイ州ロックフォードを経てミシシッピー川に注いでいます。

　ところで、ドア半島…ミシガン湖に向かって北に突き出した「東部」の半島は、氷河ではありませんが、もっと古い4億年以上の昔に一続きだった大地に侵食のスピードの差が生じてできたナイアガラ断崖の一部です。

　ナイアガラ断崖は、ニューヨーク州のオンタリオ湖東岸から、ロチェスターの滝やナイアガラの滝を経て、シカゴの北東方面まで伸びる全長1千マイル（1609�q）の大構造です。本州が約1300�qですから、規模の大きさがお分かりでしょう。氷河期トレイルは、ナイアガラ断崖の上の稜線をいったん南下した後、過去の氷河の限界線に沿って北上し、最後は西に進むスケールの大きいハイキングコースです。

===== ≪アメリカの酪農場≫ =====

　愛称に｢アメリカの酪農場（America's Diaryland）｣とあるように、ウィスコンシン州の農牧業といえば酪農（乳業）です。牛乳生産の全米シェアは2011年に13.3％でカリフォルニアについで2位ですが、チーズの方は24.9％でトップ。中でも、希少価値の高いチーズの生産に注力しています。

　もっとも、歴史をさかのぼると、1840〜80年の頃には、ウィスコンシン州が｢アメリカのパンかご（America's Breadbasket）｣と呼ばれていた時代もあったそうです。当時、移民してきたばかりの農民にとって、小麦は、少ない元手で大きく儲けられる魅力的な農産物でした。

　しかし、小麦は、次第にアイオワ州やミネソタ州でも栽培されるようになっていきます。連作すると地味が落ち、天候によって収量が一定しません。さらに、1860年代にアメリカコバネナガカメムシという害虫が繁殖する災禍にも襲われ、困った農民は、代替農産物を一生懸命探したのですが、その中で特に成功したのが酪農。1899年には90％の農場が乳牛を飼育するまでになっていました。

　ウィスコンシン州で酪農が根付いたのは、1840〜50年代に、酪農が盛んなニューヨーク州から先進的な農業経営者が南部ウィスコンシン州に多数移住してきて、チーズやバターの製法を広めたこと、酪農の本場ドイツやスカンジナビア系の移民が多く、｢スイスチーズ｣などヨーロッパの味をアピールしてビジネスとして成功したことなどが上げられます。

　中央平野や東部の低地は、氷河が運んだ土砂が堆積して肥沃です。主に、サヤエンドウやグリンピースなどの豆類、（飼料用ではなく）食用とうもろこしなどの穀類が栽培されています。　

ウィスコンシン州の歴史

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