豚インフルエンザが流行・汚染注射で髄膜炎が多発
大統領選挙は終盤戦に入りロムニー挽回
アメリカ生活を存分に楽しむなら、たまには現地マスコミの報道を通じて、ナマのアメリカの日常に触れてみませんか。このコーナーでは、毎月、現地マスコミの動画ニュースの中から皆さんのご興味をひきそうな話題を選んで、日本語解説付きでごらんいただきます。
9月16日…豚から感染するインフルエンザが中西部で流行
10月8日…全米の髄膜炎感染源は腰痛沈静ステロイド注射
10月3日…ロムニーの「壷算」にはまってオバマ苦戦(選挙)
9月16日…豚から感染するインフルエンザが中西部で流行
患者数
(〜9/28) |
2011 |
2012 |
インディアナ
|
2
|
138
|
オハイオ
|
|
107
|
ウィスコンシン
|
|
20
|
メリーランド
|
|
12
|
ペンシルバニア
|
3
|
11
|
ミシガン
|
|
6
|
イリノイ
|
|
4
|
ミネソタ
|
|
4
|
ウェストバージニア
|
2
|
3
|
ハワイ
|
|
1
|
ユタ
|
|
1
|
アイオワ
|
3
|
|
メイン
|
2
|
|
Total
|
12
|
307
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今年8月頃からH3N2vというA香港型から変異した豚インフルエンザのウィルスがインディアナ州とオハイオ州を中心に暴れています。
今のところ「人-人感染」のおそれはなく、患者の大半は、抵抗力の弱い幼児です。季節性インフルエンザのワクチンは効かないのでご注意ください。
農場やステートフェアなどで豚に接触して感染することが多く、幼児の場合は発症すると病状も重くなるので、中西部の皆さんは、しばらくの間、豚がいる農場にお子様を連れて行ったりしないよう気を配ってあげてください。
大人の感染リスクは低いようですが、それでも、豚がいる農場に立ち寄る際には、@食べ物や飲み物を持ち込まないこと、Aおもちゃやおしゃぶりなど幼児が口にするものを持ち込まないこと、B元気のない豚に近づかないこと、C石鹸と流水による手洗いを頻繁に繰り返すことなど特別な注意が必要です。
10月8日…全米の髄膜炎感染源は腰痛沈静ステロイド注射
州
|
患者 |
死者 |
テネシー |
52 |
6 |
ミシガン |
41 |
3 |
バージニア |
34 |
1 |
インディアナ |
27 |
2 |
メリーランド |
15 |
1 |
フロリダ |
9 |
2 |
ニュージャージー |
8 |
0 |
ミネソタ |
4 |
0 |
オハイオ |
3 |
0 |
ノースカロライナ |
2 |
0 |
アイダホ |
1 |
0 |
イリノイ |
1 |
0 |
テキサス |
1 |
0 |
計
|
198 |
15 |
全米各地で真菌性髄膜炎が多発していますが、感染源はマサチューセッツ州の注射液メーカーが、腰痛をやわらげる目的で製造したステロイド注射であることが分かりました。メーカーは9月26日にリコールを開始して、今後の新たな感染は防げるはずですが、問題の注射液は全米23州の75のクリニックに17,700回分が出荷されていました。

■■患者が発生した州■ほかに注射液が出荷された州 |
しかし、既に注射をされた人の中から、さらに数百人が発症するおそれもあり、CDC(米国疾病予防管理センター)は5月21日以降に該当クリニックでステロイド注射を受けた人たちの特定を急いでいます。注射液が汚染された経緯については調査中です。
この種のステロイド注射は坐骨神経痛やヘルニアの患者に施されます。今回の感染源となったのは、日本でハヤリのコウジと同じ仲間の菌類(アスペルギルス)です。腐葉土が好きで、屋内にも普通に漂っていますが、健康人には全く問題ありません。腰痛鎮静剤の注射が脊髄注射で、しかもステロイドに免疫抑制の副作用があることから多数が発症したものとみられています。
髄膜炎は、脳を囲む三層の髄膜のうち最も内側の軟膜に起きる炎症で、発熱、頭痛、嘔吐などの症状が現われ、進行すると脳圧が高まって痙攣や意識障害が起こり死に至ります。
10月3日…ロムニーの「壷算」にはまってオバマ苦戦(選挙)
「壷算(つぼざん)」という落語をご存じですか?瀬戸物屋さんを言葉巧みにだまして、水がめを半値以下で安く買う上方落語です。現代版に焼き直した立川談笑さんの「薄型テレビ算」という話の動画がYouTubeにありました。
さて、2週間前の世論調査では、再選が決まったも同然というほどリードしていたオバマ大統領でしたが、10月3日のテレビ討論会で形勢が悪くなってきました。
ロムニー候補が得点を稼いだのは「メディケア」という高齢者向け国営医療保険の給付についての議論です。アメリカには保険制度がないと思っておられる方も多かろうと思いますが、アメリカ人は将来のソーシャルセキュリティ(年金)とメディケアを税として払っています。
しかし、ベビーブーマー(団塊の世代)の高齢化が進み、このままでは10年間で7.5兆ドルの赤字が予想される状況。そこで、オバマ大統領は、やっとの思いで成立させた医療改革法案の中で、国民皆保険制度をうたうとともにメディケアの支出を7160億ドル抑える方針を打ち出していたのです。
共和党は、極端にいえば社会保障もメディケアもいらないという人たちが多い政党で、年金で生活する高齢者は当たり前なら民主党を支持するはずなのですが、テレビ討論でロムニーが考えたのは、国民皆保険制度がメディケアの給付削減の元凶のように印象付けて、動揺する高齢者の票をオバマから奪おうという戦術でした。
これに対して、オバマは上品すぎたのではないでしょうか?…テレビ討論の視聴者には自信なさげに見えたようです。反対に、オバマがロムニーにまじめにメディケアの赤字対策を問いただしても、ロムニーは曖昧な説明を早口で述べて、元の言いっ放しの主張に戻るという具合。単純に、メディケア抑制の数字「7160億ドル」を10回以上繰り返して、悪いイメージを植えつけることに成功したようです。
そんなわけで、私は、冒頭の落語「壷算」を思い出した次第です。ここしばらくの大統領選挙では、テレビ討論会で民主党候補が共和党候補を見下した態度を取り、それが有権者に悪印象を与えて敗退するケースが続きました。だから、オバマの腰が引けてしまったのかもしれません。
11日には副大統領候補のテレビ討論会がありました。オバマは、共和党のライアン副大統領候補に手の内を見せたくなかったのかもしれません。大統領候補のテレビ討論会は後2回、16日と22日に予定されています。まだまだ駆け引きは続きます。
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