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2013年1月15日(第79号)


グレートプレーンズの大草原で続く干ばつ

 1930年代の大砂嵐(ダストボウル)再来の懸念

異常乾燥干ばつ極度深刻 まれ

Tallgrass Prairie Nature Preserve

 2012年は、年間を通じてアメリカで観測史上最も暑い年を記録しました。特に6〜7月には記録的な熱波に襲われ、中西部のコーンベルト地帯の干ばつが悪化し、トウモロコシと大豆の相場が暴騰したのを覚えておいでですか?


アメリカのパンかご


 深刻な干ばつは、今年に入っても中心を西に移動して続いています。

 このあたりは、ロッキー山脈に連なるグレートプレーンズ。主に丈の低い草が生える標高500〜1500mの高原地帯で、昔はバッファローの天下でしたが、今は「アメリカのパンかご」と呼ばれる穀倉地帯。黒海沿岸のウクライナとともに、世界の食糧供給を支えています。


ダストボウルと「怒りの葡萄」


File:Dust-storm-Texas-1935.png

ダストボウルと「怒りの葡萄」

 大恐慌の最中の1931年に、ダストボウルと呼ばれる砂嵐がグレートプレーンズの南部で頻繁に生まれ、砂塵はしばしばニューヨークなど東部の都市に届くほどになりました。

 干ばつに加え、未熟な農法が土質の劣化を招いたのが原因です。1934年と1936年には、昨年並みの熱波が全米を襲い、干ばつとダストボウルもピークに達しました。各地で40℃を超える気温を記録しています。

 ノーベル賞受賞作家スタインベックの名作「怒りの葡萄」は、オクラホマ農民がダストボウルで耕作不能となった土地を差し押さえられ、生活の糧を求めてルート66をカリフォルニアに向かう物語です。1940年に、ジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演で映画化されました。


オガララ帯水層


 ダストボウル発生源のオクラホマやカンザスは、その後、灌漑と農業の機械化により復活しましたが、それも地下にオガララ帯水層と呼ばれる大水脈が潜んでいたからです。

オガララ帯水層

Center Pivot Irrigation

Crop circles north of Umatilla, Oregon, USA.jpg

 1948年にはセンターピボットという地下水に依存する大規模な灌漑農法が発明され、乾燥地帯では、円形に仕切られた農地が飛行機から見下ろせる時代になりました。

 しかし、そのオガララ帯水層も永遠ではありません。使いすぎればいつか枯れ果ててしまうので、栽培する作物を変えるなど節水の努力も欠かせません。

 2012年夏の熱波を経験し、大恐慌と現在の世界不況を重ねて連想し、1930年代のダストボウルの再来を怖れる人々が増えています。

 実際、かつてダストボウルが発生した地域の南端に当たるテキサス州ラボック周辺は、このところ例年のように砂嵐が発生するようになっています。

Lubbock, TX 10/17/2011