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2014年1月15日(第91号)


北米に「極渦」が襲来して大寒波…皆さんはご無事でしたか?

 地球温暖化で北極と中緯度の温度差が縮小

 記憶にまだ新しい話ですが、新年早々ロッキー山脈の東部にはとんでもない大寒波がやって来ましたね。中西部や北東部はもちろんですが、南部でも観測史上最低気温を記録した場所が多かったようです。

 下のニュース動画は、最低気温の記録を更新して川や湖から蒸気が上がっているシカゴと緊急自動車以外の運転を禁止したインディアナポリスの様子を伝えています。西海岸や日本にお住いの皆さんのために掲載しましたが、実際に寒さを経験なさった皆さんは無理にごらんにならないでください。あんな寒さは二度とイヤですよね!!

 今回の寒波で目立ったのは、マスコミが「極渦(Polar Vortex)」という耳新しい言葉を頻繁に使い、しかも地球温暖化と結びつけて報道していたことです。


ホワイトハウスも動画で説明


 次の動画は、まさかのホワイトハウスが今月7日に制作した動画ですが、地球温暖化により中緯度の国々を大寒波が襲う頻度が上がる理由を説明しています。北極では中緯度より速いスピードで温暖化が進み、北極と中緯度の気温差が従来より縮小しています。その結果、「極渦」の力が弱まって大きく蛇行しやすくなり、中緯度の各地に寒気をもたらしているというのです。


貿易風・偏西風・極東風


 しかし、突然、極渦と言われても、話がよく分かりません。(少なくとも)私が子供の頃は、理科で教えてもらった記憶もありません。

 左の図をごらんください。赤道付近は暑いので、空気が熱せられて上昇し低気圧が発達します。北極と南極では、空気が冷やされて下降し高気圧が発生します。

コリオリの力

回転盤の中心から赤点に向かい球を転がすと、赤点からは球が左に動いて見える。

 空気は高気圧から低気圧に流れて風になりますが、赤道から両極の距離は遠いので、一つの大気循環にはなりません。赤道と両極の大気循環の間に、逆方向のもう一つの大気循環ができ、地球の大気のバランスが保たれています。

 さて、地球は東に自転していますが、風は自転におかまいなく真っすぐ吹こうとします。これを地球と一緒に自転している人類から見ると東西に吹いているように見えるのです(コリオリの力)。

 したがって、高緯度から低緯度に吹く赤道付近の貿易風と両極の極東風は東⇒西向き、日本やアメリカなど温帯で低緯度から高緯度に吹く偏西風は西⇒東向き…だから、お天気も西から東に移動して行きます。

 コロンブスは、貿易風に乗ってアメリカにやって来て、偏西風に吹かれてヨーロッパに帰りました。だから、カリブ海の島々を最初に発見したのですね!


極渦がだらけて寒気が中緯度に漏れる


 さて、本題に戻りましょう。下の図は一種の気圧(ジオポテンシャル高度)の分布を示したものですが、今月上旬の極渦は、高気圧の中心がだらしなく5〜6個に分散し、北極圏に寒気を閉じ込めきれなくなっていた様子が見て取れます。

 極東風はもともと貿易風ほど強くないのですが、弱まれば弱まるほど偏西風も蛇行しやすくなります。北極の高気圧はいつまでも強く、ひとりで寒気をエンジョイしてくれるといいのですが…。

Map of a compact blob over the Arctic

典型的な極渦 (201311月)

Map of a blobs spreading from the Arcitc

大きく蛇行する極渦 (201415日)

 ちなみに、ジェット気流は偏西風の上空の風です。今回の話に直接の関係はないので説明しませんが、寒帯ジェット気流と亜熱帯ジェット気流があります。