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2014年2月15日(第92号)


性犯罪特集@ ホワイトハウスの性犯罪白書

 女子大生5人に1人が被害大学の隠ぺい体質

 アメリカには先進的な顔と保守的な顔があります。これだけ女性の社会進出が目立つ時代になっても、表面的にはレディーファーストを装いながら、本音では女性蔑視の男性が少なくないようです。

 「痴漢!! 」と叫ばれたら無実でも捕まってしまう日本と違い、(地域差もありますが)アメリカでは「自ら進んでオリに入ったらライオンに襲われても自己責任」と考え、性犯罪の被害者に冷淡な人々がいます。あるいは、警察や検察の中にもいるかもしれません。


男子の7%が強姦・強姦未遂経験者


 1月22日にホワイトハウスが発表した「性的虐待白書」は、特に大学キャンパスで起きる性犯罪に注目しています…信じがたい数字ですが、女子学生の5人に1人が強姦の被害に遭うというのです。

 特に気をつけたいのはパーティで、酔いつぶれたりして抵抗力のない被害者に対する強姦の58%、力ずくの強姦の28%が、アルコールの席で起きています。ある調査では、男子学生の7%が強姦や強姦未遂をしたことを認め、しかも、うち63%は平均6件の複数犯行に及んでいたというのですから、驚きです。

 それを許しているのも、被害届を出す女子学生がわずか12%しかいないという痛ましい現実なのかもしれません。アメリカ人なら臆せず名乗り出るかといえば大きな誤解で、被害者の多くはPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、加害者を告発するどころではなくなります。うつ病や薬物・アルコール依存症になって、退学に追い込まれるケースも少なくありません。


大学の隠ぺい体質


 事件が報道されると大学の評判が落ち入学志願者が減りますから、大学に事実を隠ぺいしようとする傾向があるのも問題です。

===== イースタンミシガン大学事件 =====

 2006年に、イースタンミシガン大学の学生寮で、女子学生が強姦された上に殺される事件がありました。デトロイト都市圏で、日本人が多数住むアナーバーの隣町イプシランティにある大学です。

 最初のうち大学は殺人の疑いがあることを否定していましたが、被害者の足に付着していた体液が証拠で、突然、犯人の男子学生が逮捕されます。その日は、ちょうど新入生が、キャンセル料なしには入学金を返してもらえなくなる日に当たっていました。

 この隠ぺい事件で、大学は当局に35万ドルの罰金と被害者の家族に250万ドルの慰謝料を払うことになります。

===== ペンシルバニア州立大学事件 =====

Coach Joe Paterno

 アメリカンフットボールの名門ペンシルバニア州立大学で発覚した性犯罪の隠ぺいは、アメリカの大学スポーツ界をゆるがす大事件でした。アシスタントコーチの少年強姦癖を、大学首脳陣が黙認していたことが、2011年に明らかになったのです。

 アシスタントコーチの性犯罪は1970年代から続いていたと推定され、少なくとも1994年以降の45件の犯行で有罪とされました。もちろん、それだけでも大ニュースですが、スキャンダルの核心は既に「大学フットボールの殿堂」入りまで果たしていた名監督ジョー・パターノが学長らに口止めをしていたことです。

 パターノは1950年に大学卒業後ただちにペンシルバニア州立大学のアシスタントコーチに就任、1965年に監督に昇格した後は409勝136敗で全米優勝2回。NFLのピッツバーグ・スティーラーズなどの誘いも断り、46年間にわたって一途にペンシルバニア州立大学のアメリカンフットボール・チームに尽くしてきた人物です。当時85歳。NFLも含む全米歴代アメフト監督の人気投票で13位にランクされたこともありました。

 2011年11月、パターノは、学長、副学長、スポーツ局長とともにシーズン途中で解雇され、そのわずか2ヶ月後に肺がんで世を去りました。1998年以降の111勝が公式記録から取り消され、通算最多勝監督(2位は323勝)のタイトルも自動的に失います。スタジアム門前に立っていた銅像も取り除かれました。

 その後、学長ら3名は刑事告訴され、ペンシルバニア州立大学も、全米大学体育協会に6千万ドル、所属地域リーグにも1千3百万ドルのの罰金を支払い、さらに4年間にわたるポストシーズン試合出場停止及び奨学金支給選手枠カットという前例のない厳しい処分を受けることになりました。処分はそろそろ緩和されるという観測も出てきましたが、現在も継続中です。