ペンシルバニア北東部で警官射殺から1ヶ月
映画"ランボー"なりきり男が森に立てこもり!!
事件が起きたのはペンシルバニア州北東部で、アパラチアの北端ポコノ山脈山中のパイク・カウンティ。9月12日の深夜、州警察宿営所の前で見張りの警官2名が狙撃され、一人は死亡、もう一人も重傷を負いました。
犯人はエリック・フレイン31歳。どうやらサバイバルゲーム気違いが昂じ、シルベスター・スタローン主演の映画「ランボー」の第1作「一人だけの軍隊(英文名はFirst
Blood)」を演じ切っている様子です。当局の大捜索をあざ笑うように、1ヶ月経っても森に立てこもって逃げています。
映画「ランボー」はベトナム帰還兵を描いた名作
「ランボー」の原作は、まだベトナム戦争(1962~75年)まっ最中の1972年に書かれました。最強の特殊部隊「グリーンベレー」の元兵士ジョン・ランボーが、ワシントン州の田舎の保安官事務所で残虐に扱われ、森に逃げ込んで大捜索隊を相手に一人で戦うストーリーです。時代を画すアクション映画として大成功した一方で、ベトナム帰還兵のPTSD(心的外傷ストレス障害)を描いた社会派映画としても高い評価を得ました。
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映画「ランボー(一人だけの軍隊)」予告編(1982年公開) |
あらすじ(日本語Wikipediaから)
日本発祥のサバイバルゲーム
さて、フレインが夢中になったサバイバルゲームは、本物そっくりの遊戯銃で敵味方に分かれて撃ち合うスポーツ(?)で、1970年代に日本で始まったといわれています。
使用する武器は、威力が弱く人を傷つけるおそれのないエアソフトガンと呼ばれる空気銃で、弾丸は球形でプラスチック製のBB弾…"BB"は"Ball
Bullet"または"Ball Bearing"に由来するといわれていますが、私も少年時代(昭和30年代)に聞き覚えがある名前ですから、もともとは縁日や駄菓子屋で売られていた銀玉鉄砲で使う粘土を固めた丸い小さな弾丸のことだったのではないでしょうか?
エアソフトガンが日本で進化したのは、逆説的ですが、銃刀法が厳しく一般人は本物の銃を手に入れにくかったせいかもしれません。サバイバルゲームは、欧米に伝わって"エアソフト"と呼ばれるゲームになりました。今では、インドアのゲームから、シナリオのある白兵戦や数百人規模で演じる戦争の再現ショーまで様々なレベルに枝分かれして、ネオナチなどの極右組織が育つ温床になっていると危惧する声もあります。
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第二次大戦再現ショー(インディアナ州北東部の農場) |
セルビア兵になりきりの戦争マニア
フレインの犯行の背景には、帰還兵のPTSDも特別な政治的信条もなさそうです。フレインは高校の部活でライフルの腕をみがき、ねらった的は絶対に外さない射撃の名手となりました。
20歳の時に参加した第二次大戦再演ショーで盗みを働き、109日間入獄しています。何を盗んだかは分かりませんが、きっとどうしてもほしい銃や軍服など戦争用品に手が出てしまったのでしょう。
2008年にはソーシャルネットワークに"イースタン・ウルブズ"というページを開設し、サバイバルゲームでユーゴスラビアの粗末な野戦服を着てセルビア兵を演じる自らの姿に酔っていたようです。警察の調べで、フレインが南東ヨーロッパにたびたび旅行し、セルビアの首都ベルグラードで記念写真を取っていたことも分かっています。戦争史に詳しく、戦争映画には出演するだけでなく、第一次大戦の映画セットの考証を引き受けたこともありました。
フレインは、犯行当日まで現場付近の両親の家に同居していました。3日後に現場近くで両親の車が乗り捨てられているのが見つかっています。警察の山狩りは、州警察にFBI、連邦保安官事務所、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局を加え、9月17日に200人の体制で始まり、22日には400人に増員されました。
捜索にはパトカーのほかに多数の装甲車、少なくとも4機のヘリコプターと狙撃手を乗せて防御壁ごと動くモンスター重機(動画)1機が動員され、正に映画「ランボー」の再現ショーになっています。
まるでゲーム…姿を見せて警察を挑発
フレイン自身も、川を渡って臭いを消し警察犬の追跡をかわし、足元にパイプ爆弾を仕掛けるなど「ランボー」の再現ショーを楽しんでいるものと信じられます。時には木々が密集した2~3百メートル先の木陰から姿をのぞかせ、警察を挑発しているようで、周辺は封鎖され、住民は家に息をひそめてこもっています。
FBIは、フレインを最重要指名手配逃亡者10名(FBI
Ten Most Wanted)のリストに掲載し、逮捕につながる情報を提供した人には賞金10万ドルを支払うことにしました。
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