大陸の集合と離散…超大陸ヌーナ・ロディニア・パノティア・パンゲア
鉱物・エネルギー資源が豊かな北米大陸史40億年
私は子供の頃から探究心が旺盛で、家族に「理屈っぽい」と非難されることもありました。ナイアガラの滝など世界有数の絶景を見ても素直に感動する一方で、いつどのようにしてできたのか成因が気になってしまいます。このホームページで、読者の皆さんに北米の観光地をご紹介する際も、いつもそう感じていました。
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Supercontinent
Nuna(⇒拡大) |
しかし、北米は、地球46億年の歴史を創生期から全土の大地に刻んでいて、各地の景観や地下資源のありかを一貫して理解するには何年もかかりました。これから、このホームページでは北米を地質学的に6つに区分し、それぞれの地域が誕生した経緯を振り返ってみますが、その前に、今回は全体を図と動画で大づかみにご説明します。
きっと、絶景を見るのにクドクドした説明は要らないとおっしゃる方が多いことでしょうね。中にお一人でも「ほっほう」と喜んでくれる人がいればよいのですが…?
超大陸パノティアの分裂
46億年前に誕生したばかりの地球の表面は熱く溶けたマグマで覆われ、上空はガス。まだ、海も陸もありませんでした。やがて地球は冷えはじめ、大気中の水蒸気が雨となって地表にふりそそぎ、43億年前に原始の海が生まれます。
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Supercontinent Pangaea(⇒拡大) |
陸の一部は、遅くとも40億年前には存在したことが知られています。陸地のプレート(岩盤)はマグマの対流に乗って離合集散を繰り返し、現在の7大陸に成長していきました。
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Supercontinent
Rodinia(⇒拡大) |
Supercontinent
Pannotia(⇒拡大) |
超大陸
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年代
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バールバラ/ウル
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36~28億年前
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ケノーランド
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27~21億年前
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ヌーナ(コロンビア)
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18~15億年前
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ロディニア
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12.5~7.5億年前
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パノティア
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6.0~5.4億年前
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パンゲア
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3.0~2.0億年前
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下の地図と大陸移動の動画を照らし合わせてお読みください。
6億年前に、南極を含む地域に諸大陸が集まり、超大陸パノティアが形成される時期がありました。大気中の酸素濃度が急上昇したおかげで、初めて多細胞動物が誕生した時代(エディアカラ紀)です。
5億4千万年前にパノティアは分裂し、北米(ローレンシア)は、北欧(バルチカ)やシベリアとともに北上を始めました。現代の生物の先祖は、その頃(カンブリア紀)に出そろいます。
46億年の地球史も、これを境に、先カンブリア代と顕生代(目に見える生物の時代)の二つに大区分されます。
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過去6億年の北米大陸の地形推移 |
過去6億年の大陸移動(現コロラド州境を表示) |
ローレンシア大陸
地図上の赤線で囲まれた地域は、先カンブリア代に形成された古い陸地で「安定陸塊」と呼ばれています。
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カナダ楯状地(ピンクで示した地域)
北米を新大陸と呼ぶのは、自然史的には大きな誤りです。特にカナダ楯状地は40億年前の石も見つかる世界最古の陸地の一つで、ダイヤモンドや金銀や鉄、ウラニウムなど数多くの地下資源が埋蔵されています。
カナダ楯状地は、海面が今より4百メートル高かったオルドビス紀にも、海底に沈んだことがありません。そのため地表に堆積物がなく、先カンブリア代の地肌が残っています。
海面上昇期と氷河期の北米大陸 |
450百万年前(オルドビス紀) |
345百万年前(石炭紀)
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75百万年前(白亜紀後期)
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12万6千年前(前回の間氷期)
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A
内陸平野(卓状地)
近年は地球温暖化が懸念されていますが、地球史のスケールで見ると現代は寒冷期です。内陸平野は古い陸地ですが、温暖期には海面が上昇して海底に沈み、先カンブリア代の地層は、生物起源の石灰岩や堆積物の層で覆われるようになりました。
シルル紀に動植物の地上進出が始まり、石炭紀には湿地帯でシダ類が大繁栄しました。北米の石炭と石油は、主に石炭紀と白亜紀の大森林が地中に堆積し、地圧や地熱で変成したものと考えられています。
標高500~1500mのグレートプレーンズも、白亜紀には海底でした。古い堆積層をロッキー山脈の氷礫土(氷河に削り取られた岩屑)が覆い、地下に氷河の化石水を貯めた巨大な帯水層を作りました。
肥沃で平坦な北部の内陸低地は、氷河の浸食と堆積作用により形成されました。五大湖はじめ氷河が残した大小の湖水群、氷礫土が運ばれて土手のように堆積したモレーン、氷河湖が決壊してできたオハイオ川やウィスコンシン川…。
超大陸パンゲアの誕生と分裂
北米の大西洋岸は、5億4千万年前に分裂した超大陸が再結集して超大陸パンゲアとなり、再び分裂していく過程で形成されました。変形陸塊は先カンブリア代に形成された古い陸地の一部ですが、その後の造山運動で変形しています。拡張陸塊は、大西洋が拡がるにつれて新たに生成された陸地と海底の地殻です。
B
変形陸塊(大西洋/メキシコ湾岸)
北米(ローレンシア)は、490~390百万年前に北欧(バルチカ)などと合体してユーラメリカ大陸となりました。アパラチア山脈北部は、この時のカレドニア造山運動で形成されたものです。グリーンランド東部と、イギリスやスカンジナビア山脈及び中欧北部も、その片割れです。
ユーラメリカ大陸は、380~280百万年前にゴンドワナ大陸(南米、アフリカ、オーストラリア等など)と合体し、超大陸パンゲアが誕生しました。この時のバリスカン造山運動で、アパラチア山脈の主要部が隆起しました。ヨーロッパ側では、アルプスを含む中欧からトルコにかけた地域やイベリア半島と北部アフリカの陸地が形成されています。
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CAMP(⇒拡大) 中部大西洋マグマ域 |
ミズーリ南部のオザーク高地やアーカンソーのワシタ山地も同じ造山運動でできましたが、パンゲア分裂の過程で現ミシシッピー川下流域で北米プレートに亀裂が入り、アパラチア山脈と分かれました。
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Caledonian
Orogeny(⇒拡大)
カレドニア造山運動 |
Variscan
Orogeny(⇒拡大)
バリスカン造山運動 |
C
拡張陸塊
2億年前に超大陸は再び分裂サイクルに入り、大西洋中央部(中部大西洋マグマ域=CAMP)では6千万年にわたり溶岩が噴出しました。その後も北米プレートは、大西洋中央海嶺のマグマで新たな海洋地殻を付加され、西に移動を続けます。大西洋側に広大な大陸棚が成長し、氷河時代(258万年前~現代)の海退により一部が陸上に現れ、沿岸平野となりました。
パンタロッサ海
超大陸パンゲアを取り囲んでいた大洋は、パンタロッサ海と呼ばれています。2億年前にパンゲアが分裂し大西洋が生まれ始めた頃、パンタロッサ海を支える3枚の海洋プレートの境界で新たに太平洋プレートが誕生しました。
周辺に押しやられた先輩プレートのうち、イザナギプレートはユーラシアプレートに対して沈み込み、周辺に日本列島などを残しました。ファラロンプレートは、西進する北米プレートの下に重なるように浅く潜り込み、大陸の奥深くにロッキー山脈を形成。後に地球内部のマントルに崩落し、一部は溶けて地上に再噴出しコロンビア高原の溶岩台地を作りました。
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3プレート時代(イザナギ・ファラロン・フェニックス) |
パンタロッサ海で太平洋プレートが拡大 |
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大西洋が拡大・北米プレートが西進 |
イザナギが消滅・ファラロンが分解 |
D
変形陸塊(西部山岳地帯)
西部山岳地帯は、17億年前に誕生の古ロッキー山脈もある古い陸地でしたが、ファラロンプレートの沈み込みで複雑に変形しました。ロッキー山脈、コロラド高原、グレートベースン、コロンビア高原の4地域に区分されます。
ロッキー山脈の造山運動は、80~70百万年前に始まって55~35百万年前に終わったといわれています。始期と終期に幅があるように、メカニズムも近年まで未解明でした。
(1)
それ以前のファラロンプレートは大陸に深く沈み込み、北米プレートの周辺にシエラネバダ山脈などの新しい陸塊を付け加えていました。当時のロッキー山脈は西部内海(Western
Interior Seaway)の海面下でした。
(2)
しかし、ファラロンプレートの沈み込みの角度は浅くなり、その圧力で、コロラド高原はじめ現山岳地帯の広い地域が隆起します。造山運動の中心も大陸奥深くに移動し、ロッキー山脈が形成されました。
(3)
ファラロンプレートの沈み込みが終り、収縮圧力がかからなくなった陸地の一部が反動で伸長し、平原に山脈が散在する大盆地グレートベースンが誕生しました。
(4)
ファラロンプレートは崩落し、一部が溶けてマグマの上昇流に乗って地上に再噴出。コロンビア溶岩台地(コロンビア高原)が誕生します
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太平洋岸の付加陸塊
その後、ファラロンプレートから分裂してできたフアンデフカプレートの沈み込みにより、カスケード山脈の火山活動が続いています。
カリフォルニアでは、太平洋プレートと北米プレートが直接接し、横ずれでセントラルバレーの盆地とサンアンドレス断層をはじめとする南北の断層ができました。断層は、南に伸びてバハカリフォルニア半島とメキシコ本土を隔てるカリフォルニア湾を形成しています。
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