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2016年10月15日 (第123号)

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アメリカ生活・e-ニュース


医  療

健   康

 ユタ州では新登場のアヘン系鎮痛剤で中学生2名が死亡!!

 全米の大学で覚醒剤の「学業ドーピング」が流行

 世の中にはスマートドラッグ(頭がよくなる薬)が数限りなく出回っていますが、これまで気にかけたことがありませんでした。しかし、中には有名なイギリスの車いすの理論物理学者ホーキング博士が勧めるサプリまであるというので、一度その効き目の真偽のほどを確認してみようとしていたところ…ちょうどNBCのモーニングショーのニュースで、全米の大学で多数の学生が、覚醒剤をスマートドラッグとして乱用していることを知りました。深刻な状況です。


軽いノリで学生の3割が体験


 問題の薬は、ADHD(注意欠如多動性障害)と睡眠発作の治療に使われる"アデロール(Adderall)"です。成分は日本で覚醒剤として厳しく取り締まられているアンフェタミンで、アメリカでも規制物質法の第2表指定薬物なのですが、問診で虚偽の病状を説明したら医師が自動的に処方してくれるのが実態です。

 元巨人軍の清原選手を例に引くまでもなく、覚醒剤は依存症に陥りやすい怖い薬物ですが、飲むと一時的に頭が冴え集中力が高まるので、スマートドラッグとして試験前に服用したら成績アップにつながる可能性も否定できません。

 学生たちは仲間うちでアカデミック(学業)ドーピングと呼んでいるようですが、チョイ悪程度の認識で服用しては危険極まります。そもそもスポーツ界のドーピング検査も、1960年のローマオリンピックで自転車選手が、問題のアンフェタミンを投与され、死亡したのを契機に始まったのですから、他人事ではないのです。

 下にご紹介するNBCニュースの動画は、ボストン大学(Boston University)の学生たちへのインタビューから始まりますが、アカデミック・ドーピングは全米・全加の各地の大学で流行しているそうですから、日本人学生の皆さんも、十分お気をつけください。アメリカでは学生の3割、3~4年生ともなると5~6割が体験しているとさえいわれています。

 学生たちが顔も隠さず悪びれずに動画に出ているだけでも驚きですが、ボストン大学の図書館では誰もが他人の目を気にせずにアデロールを服用しているそうです。動画の中盤(4:00~)では名門バンダービルト大学3年生で自殺した男子学生の両親が息子を失ってくやしい心情を語っていますが、覚醒剤中毒は、それが直接の死因とならなくても、廃人化したり自殺願望を呼び起こしたりする怖ろしい病態です。

 中には、大学病院でアデロールの処方を取りやめたり、処方する場合には学生の両親に連絡したり、対策を始めた大学もあるそうですが、まだまだほんの一部です。ヘロインやアヘン系のオピオイド鎮痛剤の流行が鎮静化する傾向にある一方で、最近はアデロールがブーム…思春期の若者を待ち受けるワナは多いので、うちの子に限って…と油断せず、ご両親もお子様たちと風通しのよい関係をお築きください。

 ADHD(注意欠如多動性障害)治療の処方薬には、ほかに日本でも認可されているリタリン(Ritalin)がありますが、これも第一種向精神薬で依存性も知られています。いずれキャンパスで流行しないとは限らないので、気をつけましょう。


ソーシャルメディアで情報拡散


 さて、キャンパスではアヘン系の鎮痛剤の流行が鎮静化する傾向にあると申し上げましたが、昨年(2015年)末から急に出回り始めた危険な鎮痛剤があります。正式名はU-47700で、通称ピンクまたはピンキー。1978年にアップジョン社(現モンサント社)がモルヒネの代替薬として開発したデザイナードラッグで、強さはヘロインの8倍といわれています。

 長い間忘れられた存在で、動物実験さえ行われていないにもかかわらず国際的にも危険薬物に指定されていなかったのが盲点でした…中国で生産され、業者がネットでオーダーを受け直接出荷していたようです。規制が後手に回り、未だに合法的に購入できる州が大半です(今のところ、少なくともオハイオ、ワイオミング、ジョージアの3州で違法)が、先月(2016年9月)連邦政府も動き出し、麻薬取締局が暫定的に規制物質法の第1表指定薬物に登録したところです。

 動画では、NMS研究所(旧National Medical Services)の主席研究員が、これまでに120人のU-47700関連死を確認したと語っています。

 先月(2016年9月)、スキーリゾートとして有名なユタ州のパークシティで、13歳の男子中学生2人が相次いで死亡し、U-47700の存在が全米で広く知られるきっかけとなりましたが、死後にパソコンを調べたところ、2人がソーシャルメディアを通じて情報交換し、ほかの15人の生徒が服用していたことが判明。生徒たちの自宅や学校のロッカーからは、U-47700のみならずメタンフェタミン(日本では1949年までヒロポンの名で売られていた覚醒剤)も発見されました。

 パークシティの警察は、中高生の両親に対して子供たちの所持品検査を徹底するよう呼び掛けています。U-47700には、錠剤のほかに粉末や、鼻スプレー風の容器に入った液体まで多様な形態があるので、怪しいものは疑ってかからなければなりません。