駐在員の借家


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 日本人駐在員は、一般的に大家さんから大歓迎される借家人です。アメリカ人のように土足で家に上がらないので家が汚れないことと、家賃を滞らせる心配がなく任期が終わって帰任するまで何年も長く住んでくれることが多いからです。

 そこで、日本人駐在員が多数住む地方都市には、日本人駐在員に狙いを定めた貸家があり、日本人駐在員向けの特殊な賃貸契約が存在します。長期契約を前提にするかわりに、駐在員家族にはありがたい設備をつけたり特別なサービスを提供してくれるのが、一般の賃貸契約との違いです。

 仮に、家のトラブルに関して契約書に全く同じ文言が記載されていたとしても、一般アメリカ人向けの貸家であれば文言通りに自己責任で対応しなければならず、日本人駐在員向け貸家であれば大家さんが飛んできて解決してくれるかもしれません。

 契約書の内容で解釈不明な点があれば、具体的な事例で大家さんの意思を確認し、e-メールなどで記録に残しておくといいと思います。英語が達者でない方も、人事や総務の方に助けてもらって、しっかり中身を理解しておきましょう。英語の賃貸契約をチェックするくらいは、見慣れた人には朝飯前の仕事ですから、誰にも遠慮することはありません。


チャックポイント


(1) 敷金・礼金と期限前解約

 契約書で、最大のチェックポイントは、お家賃の金額と敷金(デポジット)、契約期間、期限前解約の条件です。日本人駐在員が多い地方都市でも地域によって差がありますが、私たちが住むケンタッキー州レキシントンで日本人向け貸家を借りる場合、敷金はお家賃1ヶ月分で、よほど汚したり傷つけたりしない限り退去時に全額返してもらえます。

 契約期間が短ければ契約期間満了時に自由に転居することもできるメリットがありますが、新家賃でもめないよう、あらかじめ、更新時には家賃を据え置くと明記してもらうといいでしょう。契約は3年、期限前解約は@会社の都合で遠方に転勤する場合に限りA1〜2ヶ月前までに大家さんに通知しBお家賃2ヶ月分の違約金を払うのが、平均的な契約です。

 日本人駐在員の場合には、勤務先にそれぞれ家賃補助の規定があって解約時の条件も決まっているはずですから、大家さんに言われるままに契約すると、思わぬ個人負担が発生して困ることになります。アメリカは、日本と違って、細部に至るまで全て交渉次第ですから、多少の無理難題は大家さんに相談してみましょう。

 ケースバイケースで違約金なしの1年契約に応じてくれることもありますが、わざわざ大家さんに新築物件を買い上げて貸してもらう場合などは「1年間解約不可」等さらに厳しい条件を覚悟してください。(勤務先が許してくれる範囲で)契約条件を大家さんに甘くしてあげれば、お家賃を値切ったり「プラスα」のお願いをしたりする交渉がスムーズに運びます。

(2) 家電製品と付帯サービス

 ディッシュウォッシャー(皿洗い機)やオーブンなどシステムキッチンに組み込まれている家電製品の貸与は家賃に含まれていますが、冷蔵庫や洗濯機、乾燥機は、家賃に込みでついているいないか、最初に確認しておかなければなりません。滞在年数にもよりますが、洗濯機や乾燥機は、家賃を上げて買ってもらわなずとも、自分で購入したら済むことです。

 シカゴ周辺では芝刈りや雪かきなどのサービスを込みにする賃貸契約が多いと聞いていますが、ほかでも一般的かというと、そうでもありません。大家さんに依頼する場合は、芝刈りだけを頼むのか、肥料の散布や潅木の手入れまで頼むのかはっきりさせないといけません。勤務先によっては、芝刈り込みの契約を認めていない場合がありますから、会社の規定はよく読んでおきましょう。

(3) ペットや画ビョウ

 ペットなどの禁止条項もよく確認しておきましょう。ペット禁止と書いてあっても「小さな犬なら飼ってもいい」と譲歩してくれるケースもあります。「禁煙」を定めた契約書もあります。ヘビースモーカーの場合には、壁にヤニがべっとり付いて退去時に敷金の一部を没収されるリスクもありますから、禁煙条項がなくても屋内の喫煙はほどほどになさってください。

 壁に絵をかけたりする場合は、画ビョウや小さなクギを使いましょう。ワンポイントのキズは、ピンポイントでペンキを塗ったら目立たなくなるので問題ありません。ところが、接着テープを貼ると、はがした跡が醜く残るので厄介です。テープをはがした跡がわずか10cm四方でも、最悪の場合、ペンキの色を合わせるために続きの全ての部屋の壁を塗り直すことになります。注意してください。