アメリカの 「住まいと庭仕事」・e-ガイド(印刷ページ

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ガレージドアの故障

★センサーの向き ★モーターの出力 ★ねじりバネの破断


 私たち夫婦がカナダのトロントに住んでいたのは「アラフォー」時代。どちらかといえば、赴任者の中では若い方で、地下鉄の駅に近い市内の小さな家を借りていました。車1台がようやく入るかわいらしいガレージ。もちろん、ドアの開閉は手動です。

 1995年に、二度目の北米赴任でケンタッキー州に来たときには、(会社の地位が上がったせいもありますが)とにかく田舎のことですから、車を2台停めても余裕のガレージがある大きな家に住むことができました。

 朝の出勤時には、サンバイザーにつけたリモコンのスイッチを押すと、背後で大きなガレージドアが閉まっていきます。ちょっとVIPな気分で、それだけでハッピーになりました。

 渡米してきたばかりは、アメリカ人には「当たり前のこと」でも知らないことだらけですから、他愛ないことが大事件になってしまいますガレージドアが閉まらなくなってしまう「故障」も、日本人の多くの皆さんが経験する有名な事件の一つです。


センサーの向き


 ガレージドアには、人や車を挟んで傷つけないように安全装置が付いています。後で説明するように、ガレージドアには専門業者に修理を頼まなければならない故障も起きますが、ドアが上に上がったまま全く下りようとしない場合は、大家さんに助けを求める前に、ガレージ両脇の赤外線センサーをチェックしてください。

 ゴミ出しのときにゴミ箱がセンサーに触れて向きがずれてしまったり、何か障害物が間に入って邪魔をしているだけのことが多いのです。センサーの向きは手で変えられます。正しい向きになったら、緑のランプが点灯するので確認できます。アメリカのガレージには連邦法でセンサーの取付けが義務付けられていますが、1992年以前に建てられた家にはないかもしれません。


モーターの出力


手動モードに切換え

 さて、次は、モーターが壊れたり、モーターが動いてもドアの車とレールのすべり具合が悪くなって途中で引っかかって戻ってきてしまうケースです。この場合は、ガレージドアのレールからぶら下がっている赤いひもを引いて、いったん手動に切り替えましょう。ガレージドアは、男性なら(軽い力でも)容易に開け閉めできます。

 モーターには、ダイヤルが2つついています。一つはモーターの出力を調整をするダイヤルで、もう一つはガレージドアが人や車など障害物に触れた場合、いつモーターを逆回転させてドアを巻き上げるか、抵抗力の限度を設定するダイヤルです。

 一般に、モーターの出力を上げて、抵抗力の限度を下げれば、素人でも故障は直せますが、その分、ガレージドアの安全性を損なう調整ですから、大家さんに相談したり、業者を呼んで修理してもらうようお勧めします。

 時によっては、レールに油を塗るだけですべりがよくなり解決するケースもあります。また、時によっては、ゆがんだレールをまっすぐに戻さないと、故障が再発して状態を悪化させてしまうこともあります。

 ガレージドアを手動にしているときは、(ドアによっては留め金がついているので)内側からロックするか、(なければ)ガレージに通じるドアを忘れずにロックして出かけるよう、防犯を心がけてください。


ねじりバネの破断


ねじりバネの軸とワイヤ

金属疲労と寒さで巨大ねじりバネが破断

 さて、恐ろしいのは三つめです。詳しいことは忘れても、ガレージドアの故障をなめてはいけないことだけでも、頭の片隅に覚えておいてください。

 冬の寒い朝に起きやすい事故です。前の二つのケースと大きく違うのは、ガレージドアが閉まらない故障ではなく、開けられない故障という点です。

 故障の原因を確かめずに、力まかせにドアを手動で引き上げると、左右のレールが折れ曲がって重いドアが頭上に落下してくるおそれがあります。

 これは、ガレージに駐車中の車があれば一瞬でポンコツ、人身事故なら、おどすつもりはありませんが、命に関わるほど危険な事態です。

 ガレージの入口上部をごらんください。滑車でワイヤを引き上げる長い心棒に、黒っぽい円筒形の物体が巻きついていますが、いったい何でしょう?手動モードなら片手で動かせるからガレージドアは軽いと思うのも無理ありませんが、実は大間違い。円筒形の物体は、本当はとてつもなく重たいガレージドアを、弱い力でも開閉することができるように取り付けられた「巨大ねじりバネ」なのです。

ねじりバネ式ネズミ捕り

 バネは、長い年月の間に金属疲労を起こし破断することがあります。破断が起きるのは、多くの場合、(ドアの加重がバネにフルにかかる)閉まる直前の瞬間です。「ドーンッ」と大きな地響きが鳴るはずですが、すぐに振り返っても、ドアは無事に閉まっているように見えますから気が付きません。

 ねじりバネは左右2本でワンセットですが、一方が破断しただけでも、ドアが重過ぎてモーターで動かせなくなります。手動でも並の力では持ち上げられないのですが、それを馬鹿力で開けようとすると、破断した側のサイドレールに想定外の加重がかかり、冒頭でご説明の通り、レールがひしゃげてドアが頭上に落下してくるわけです。

 YouTubeにガレージドア修理の動画が数々投稿されていますので、その一つをご紹介します。動画の中には素人でも修理できるように言っているものもありますが、万一、失敗すると重傷を負ったり、最悪の場合には死亡事故も起きるそうです。修理は、できるだけ専門家に任せましょう。

 車が中に閉じ込められ外出ができなくなってしまったら、業者に事情を説明して応急処置に駆けつけてもらいましょう。逆に、ご家族全員で外出なさる際に事故が起きると、ドアが開けられずガレージから家に入れなくなります。転ばぬ先の杖…(普段は使わなくても)玄関ドアの鍵は所持して外出するようにしてはいかがでしょう。