中学と高校の学園生活 ★クラス意識は希薄 ★教科(英語/外国語/数学/理科/社会) ★成績評価(GPA) 失礼なことをいうつもりはありませんが、平均的アメリカ人の計算能力はあまり高くありません。日本から来たばかりで言葉も分からず途方にくれている子供たちも、現地校の算数や数学ではよい成績が取れるので自信を取り戻すことができます。 でも、その数学でも、中学以降の教科書の内容は、日本の教科書で教える範囲をほとんど全てカバーしています。むしろ、丁寧に書いてあるので、全ての例題を解いたりしていたら、時間がいくらあっても足りないくらいです。中学といえば子供の能力が急速に伸びて学問的関心も強くなる時期ですが、この時期のご両親のサポートの有無が、お子様が海外で学ぶことを活かしも殺しもするのではないかと思います。 駐在員の家庭の場合、家族の絆は日本で暮らしているときよりも強くなります。そのほかに、お子様には、現地校のアメリカ人仲間との交友関係と補習校の日本人仲間との交友関係ができます。子供には思春期をエンジョイする機会が3倍になるわけですが、悩みも3倍になるおそれがあります。強い子は何でも積極的に後押ししてあげればよいのですが、弱い子には周りに引きずられて全てを中途半端にしないよう上手にリードしてあげなければいけません。(兄弟でさえ)子供の能力や性格は千差万別ですから、気をつけてあげてください。 ご自分で教えたくても現地校の勉強は教えられないから家庭教師を雇うという方が多いようです。確かに、家庭教師が宿題を手伝ってくれると、子供たちの負担が軽くなるのでよいことだと思います。ただし、家庭教師にまかせきりにはせずに、お子様の勉強のついては内容をよく聞いてあげてください。 クラス意識は希薄 小学校は、日本と同じように、クラスがあって音楽や図工、体育など一部の教科以外は担任の先生が全て教えてくれます。登校から下校まで同じ級友と過ごしますから、友だちもできやすい環境です。 ところが、高校になると、むしろ日本の大学と似たシステムです。大学生と同じように、1年はフレッシュマン(Freshman)、2年はソフモア(Sophomore)、3年はジュニア(Junior)、4年はシニア(Senior)と呼ばれ、少し大人に近付いてきた気分になってくる頃です。あらかじめ卒業に必要な単位数が決められていて、その条件の下で、各生徒は、各学期の初めに、必須教科と選択教科、それぞれ好きな先生の好きなクラスを選んで登録します。その後は、決められた毎日のスケジュールに基づいて、生徒が各教室を渡り歩きます。 それぞれの授業で、それぞれ生徒の顔ぶれが違うわけです。「クラス」のホームルームも毎日あるわけではなく、あっても、私たちの子供の高校ではたった10分の短いホームルームでした。廊下のロッカーに私物を入れておいて、休み時間5分の間に広い校舎の中を次の教室に移動するという極めて忙しい生活…中途編入する日本人の高校生には、なかなか友人を作りにくい環境です。 中学からの仲間がいるか、クラブ活動に入っているかなら別ですが、アメリカ人の友だちができずに、お子様が孤立していないか、そっと心配してあげる必要があります。 中学は、小学校と高校の、ちょうど中間的な存在です。ミドル・スクールと呼ばれる中学の場合は、担任が一人ではなく、数人の先生方がグループで、よく相談しながら、一群の生徒の面倒を見るようなシステムになっているようです。ジュニア・ハイスクールと呼ばれる中学の場合は、もう少し高校の形態に近く、一部、選択科目を設けているケースが多いそうです。 教科(英語/外国語/数学/理科/社会) お子様の宿題や勉強を見てあげるといっても、仮に時間の余裕があっても、そもそも英語の世界ですから、そう簡単には教えられません。一言コメントでは役に立たないかもしれませんが、子供たちを教えながら、当時、主要教科について私が感じたことを述べてみます。 英語(Language Art) 基本的には、日本の「国語」と同じです。英語の意味を正確に理解することも必要ですが、それぞれの文章の内容を理解するには、子供の一般教養の厚みがものを言います。日本語にしろ、たくさんの本を読んでいる「文学少女」は、英語でも、飲み込みが早いようです。日本の教育との最大の違いをいえば、アメリカは個人主義の国ですから、授業中にしっかり自己主張することが期待されています。 外国語(Foreign Language) アメリカにスペイン語を話す人々が増えているせいもあり、外国語にスペイン語を選択する生徒が一層多くなっているようです。スペイン語はローマ字方式で読みやすく、日本人には発音も明確に聞き取れます。お子様ご本人やご両親にこだわりの外国語がなければ、多数派のスペイン語が無難な選択でしょう。私自身は大学時代にフランス語を学びましたが、私の子供たちは二人ともスペイン語を選びました。 数学(Mathematics) 高校までの数学は、日本の数学Vまでの全ての内容をカバーしていますが、日本と同じように、数学Vまでは卒業の必須科目には指定されていないだろうと思います。英語が苦手でも、日本人の子供に対等の競争ができる分野ですが、日本の「数学用語」には、英語の元の言葉にお構いなしに作られた言葉があるので、お子様が混乱しないように指導してあげてください。英語の数学の教科書と日本語の数学の教科書の同じ単元を、2冊並行して勉強したらよく分かるはずです。一般的に、英語の「数学用語」の方が本来の数学らしい生き生きとした言葉ですから、積極的に捉えれば、お子様の数学への興味が増す機会にもなります。 理科(Science) 理科は、数学と同じように、日本の理科と並行して勉強すれば、問題の少ない教科です。ただ、他の教科も同じですが、教科書が分厚くて読む分量が多いので、まだ英語を速読できないお子様には、誰かが補助の手を差し伸べてあげないと気の毒です。物理や化学、地学などは、ほとんど日本の内容通りですが、生物については、単純に動物と植物に分類せず、5つに分類されているので戸惑うかもしれません。特に一部細菌が属する生物界「monera」は日本語でも特別な訳語がなくモネラとカタカナ読みしていますので、ご注意ください。 社会(Social Science) 世界史はともかく、アメリカ史、地理、公民(政治経済)ともなると、お子様と一緒に勉強しない限り、とても教えることなどできません。子供の自衛手段としては、せいぜい社会の単位数を最小限に留めてなるべく日本人的に馴染みやすい科目を選ぶくらいのことでしょう。「アメリカ生活・e-百科」は、「自然と歴史」や「社会と文化」のページと各地のe-ガイドのページで、アメリカの地理や歴史、公民(政治経済)に役立つ情報をたくさんご紹介して、ご両親にも、お子様の質問に答えられるほどの基礎知識をお持ちいただければ幸いと願っています。 成績評価(GPA) 日本社会が学歴主義であるということに異論はありませんが、アメリカはもっともっと学歴主義かもしれません。転職が多い社会で、そのたびに学歴をベースに給与交渉が始まる感があります。その流れで、子供たちも、小学校のうちから、競争意識を植えつけられます。ひとりひとりの成績を比べる基準がGPA(Grade Point Average)…4.0点満点で、3.0点以上の優等生や、3.5点以上の超優等生は、学校の優等生名簿(Honor Roll)に記録され、卒業式はもちろん、終業式の都度、表彰されるのです。
成績評価やGPA算出の方法は地域や学校によって違いますが、全ての制度が所によりバラバラの社会で、GPAだけは4.0点満点で全米統一されているところが逆にすごいところです。 高校時代のGPAは、もちろん大学進学の際の合否判定の大きな要素ですが、奨学金(Scholarship)の額にも大きく影響してきますから、お子様をアメリカの大学に進学させるのであれば、(ご家族の考え方次第ですが)自己責任である程度よい成績を取るようお子様に頑張ってもらわなければいけません。 GPAや成績は、テストの点だけで決まるわけではありません。授業中の様子や宿題の提出状況などの総合判断で決まるのですが、日本の先生と違い情緒的な判断を極力排除しています。野球選手が、打率やホームランの数など客観的な数字で年俸を契約するようなものです。「テストさえできればいいさ」と思っていたら大間違いですから、お子様には文化の違いをきちんと教えてあげてください。 学年の初めにオープン・ハウスという催し物があります。これは、授業参観ではなく、保護者がお子様が授業を受けるそれぞれの教室を回って先生方の教育方針を聞いたり質問をしたりする会で、先生がどのように成績を評価するか(授業中のテスト○割、宿題○割、期末試験○割・・・)説明してくれます。なかなか忙しいスケジュールで、英語に強い人でないと肝心な部分を聞き漏らしてしまいますが、何事も経験のつもりで積極的に参加してください。 無断欠席をしたら、成績にたいへんな傷が付きます。欠席が認められているのは、病気のとき、近親者が死亡または危篤のとき、あらかじめ許可を得た宗教行事のとき、医者や歯医者の予約があるときなどで、もちろん学校に届けを出さなければなりません。緊急のときは電話連絡で大丈夫…通常は、お子様が文書で事後届けを提出することになっているはずです。 |