英語検定のTOEFLとTOEIC ★Test of English as a Foreign Language ★Test of English for International Communication 息子の旧友(補習校仲間)と久しぶりに会う機会がありました。幼稚園から大学時代まで通算15年を北米で過ごし、今は日本でサラリーマンしているバリバリの帰国子女です。日本では、「TOEIC」テストを社員に受けさせる会社がどんどん増えていますが、息子の友だちも、勤務先の指示にしたがって受験しました。アメリカのトップクラスの大学を成績優秀で卒業した男ですから、英語も(スラングが通用する)ネーティブ並みの水準。私にはうらやましい限りですが、「TOEIC」なんて正に「釈迦に説法」です。 「何点だった?」と聞くと「990点」という返事がありました。「一つ間違えたの?」と聞くと「990点が最高点なんです」…はい、確かにその通りです。調べてみると、「TOEIC」は、個々のテスト結果にぶれが生じないよう統計的手法で採点しているのだそうです。しかし、採点方法の詳細は説明されていません。複雑で、統計学に明るい人でないと正しく理解できないからでしょう。でも、インターネット上で真偽の怪しい私説が横行している様子でしたから、私なりに統計の仕組みを推理してみました。 Test of English as a Foreign Language
その前に「TOEFL」について少し説明しておきましょう。「TOEIC」も「TOEFL」も、実は同じ非営利法人が運営しているテストです。「TOEFL」の方が先輩で、英語以外を母国語とする人々が英語圏で高等教育を受ける場合の能力を判定するために開発されました。 「TOEIC」のテスト科目は「リーディング」と「リスニング」の二つだけですが、「TOEFL」には「スピーキング」と「ライティング」が加わって4科目です。また、「TOEIC」は解答をマークシートに記入する方式ですが、「TOEFL」はインターネットを通じてパソコンで解答する仕組みですから、パソコンの操作にも習熟していないことには実力を発揮できません。 2005年から、「TOEFL」は各科目30点満点、全体で120点満点で採点されるようになっています。志望大学によって足切りの点数が異なり、足切り点を明示していない大学もあります。最低でも61点以上を要求する大学が多いようで、ハーバードなど最難関校に入学するには100点以上、ビジネススクールの中には109点以上のスコアが必要とされることもあります。 アメリカ国籍でない限り、アメリカの高校を卒業して進学する場合にも、在米期間が短ければ「TOEFL」のスコア提出を求められることがあります。当然のことながら、入学願いの条件は細部までしっかり研究しておきましょう。「TOEFL」は何回でも受けられ、仮に点数が期待通りでなければ、その場で受験した事実を取り消してしまうことも可能です。 Video: The TOEFL iBT Testing Site 最近は、日本の一流大学に帰国子女枠を利用して入れるために、わざわざ高校生のお子様を帯同して赴任して来られる駐在員も増えてきました。海外でも家族が一緒に暮らすのはよいことですが、「TOEFL」は極めて実用的なテストで、アメリカ暮らしの長い子どもなら容易に高得点を取れますが、英語を一から始めるお子様が、2〜3年の滞在で好成績をあげるには猛勉強が必要です。お子様には、あまり気楽にかまえないよう注意してあげてください。 Test of English for International Communication …というわけで繰り返していいますが、「TOEFL」は英語圏で高等教育を受ける場合の能力を判定するテストです。英語に不自由がなくても、アメリカで学校暮らしを経験していなければ、たじろいでしまうような設問もあります。そこで、あらためてビジネス英語の能力を判定するために創設されたのが「TOEIC」です。 「TOEIC」は世界90ヶ国で実施されていて年間約500万人が受験、日本では2009年度に168万人が受験したのだそうです。ですから、各国の人々の能力を公平に判定するために、各地の試験に共通問題を挿入したりしてテストの難易度を平均化したり、テストの結果を調整したりしている可能性があります。その上で、(常識的には)世界中の受験者の平均点が500点で、最高点が990点、最低点が10点になるようにしているのだと推定されます。
「TOEIC」を主催するETSの日本語ホームページには、公開テストの平均スコア・スコア分布が掲載されています。これによれば、毎回、リスニングの成績は310〜320点、リーディングの成績が250〜270点くらいですから、私の推理の前提が正しければ、日本の公開テスト受験者は、企業・団体受験者や外国の受験者を合わせた全受験者の中で比較すると、リスニングに優れ、リーディングでは平均より少し上の実力ということか、または以前に比べて受験者の能力が向上した可能性も考えられます。 ところで、日本の受験でよく使われる「偏差値」という基準は、自然界や人間社会の様々なデータを集計すると、上のグラフのように「正規分布」を描くケースが多いという法則を利用しているのですが、ご存じですか?正規分布の公式では「標準偏差」という数値が算出され、標準偏差一つに10点が配点されます。平均値は50点ですから平均値から標準偏差一つ上なら60点という具合です。 対象データが正規分布なら、平均点付近の偏差値40〜60点の範囲に7割が入り、20〜80点の範囲なら95%、10〜90点の範囲には99.7%のデータが入る計算になります。日本の大学入試偏差値ランキングを見ても、東大など最難関校でさえ70点台…偏差値は「TOEIC」の採点方式ではなさそうです。 しかし、同じ正規分布の理論を使っても、点数ごとに同じ数のデータ(受験者数)を割り振ることができます。この方式なら、偏差値72点相当で99点…「TOEIC」の採点は、おそらく偏差値方式と同数配分法の中間くらいなのでしょう。また、正規分布は、データに異質なグループが混在するとグラフに複数の山ができて成り立ちません。「TOEIC」の受験者には、全く英語を知らない人から冒頭にご紹介したネーティブ並みの語学力の人まで様々ですから、そのあたりを補正する微調整もあるかもしれません。
点数の見方
「TOEIC」を受験したことがない皆さんは、次のサンプル問題をお試しください。 テスト構成について(サンプル問題) リスニング @ A B C リーディング D E F |