アメリカの青春映画には必ずといっていいほど登場するのが「*プロム」…4月から5月にかけて、卒業を間近に控える高校4年生(シニア)のために開かれるダンス・パーティーです。特に、秋に進学して全米各地に散り々々に別れていく運命の仲間うちでは「思い出作り」をする最後で最大のイベントなのです。 *プロム(Prom)はフランス語のプロムナード(promenade=散歩、連れ歩くこと等)に由来するそうです。男子が女子をパーティーにエスコートすることから使われたのではないかと(私は)想像しています。 パートナー探しと衣装選び ダンスといえば、もちろん異性の相手が必要です。子供たちの成熟度にもよりますが、またとない「告白」のチャンスです。アメリカの大学入学は、学校の成績やSAT等の統一テストの点数、願書とともに送る小論文などで審査され入試なしに決まりますから、最終学年は「遊べる学年」…年が明けると、気の早い子供たちはプロム・デート(prom date=ダンスのパートナー)探しに躍起になっていくのです。
ちょっと日本の「成人式」のような要素もあります。男子の蝶ネクタイとタキシードは、普通、貸衣装屋さんで借りて済ませますが、女子は(しばしばお母さん同伴で)「晴れ着」ならぬ「勝負ドレス」を買うために専門店を駆け巡ります。私が住むレキシントンでは一時スパンコール(spangle)のピカピカしたドレスが流行っていましたが、最近は少し都会化したせいかダサいと敬遠されているようです。洋の東西を問わず、仲間うちでひとり浮いてしまっては一大事…お嬢さんのドレス選びに当たっては、事前に、周囲のアメリカ人の庶民感覚を入念にご調査ください。
プロム当日の夕方には(時にはリムジンで)男子が女子を家まで迎えに行きます。レストランやホテルで、親しい仲間が集まりプロム前のお食事会をしてからプロム本番に臨みます。プロムの中身は地方や学校によってだいぶ違うようですが、よくあるのがプロム・クイーンとプロム・キングの選出で、小さな田舎町なら新聞にも載ってしまうセレブな名誉です。 とはいえ、実は「ダンスを踊るだけ…あまり覚えていない」というのが7年前にプロムを経験した私たちの娘の率直な感想。慣れないヒールの高いサンダルをはいていたので足が痛かったそうです。娘は日本人補習授業校のクラスメートに誘われてプロムに出たのですが、もし本気で愛の言葉をささやいてくれるアメリカ人の男子が相手だったら、プロムの思い出も華やかになっていたのかもしれません。 ガウンに角帽 日本の卒業式というと、幼稚園の卒園式や小学校の卒業式の方が、高校や大学の卒業式よりもの両親の参加率は高いように思いますが、アメリカの高校や大学の卒業式は、子供の人生の門出を祝う両親がこぞって参加して、大ホールを借りて行われます。私たちの子供の卒業式には、長い間、勉強を教えてくれた家庭教師も出席してくれました。 日本のように学生服が存在しないせいか、高校の卒業式も、服装は大学並みにガウンと角帽です。角帽には房(Tassel)と卒業年度の数字をかたどったペンダントがついていて、お子様には生涯の記念となるはずですが、卒業式のお開きの瞬間に帽子を一斉に投げ上げる慣習がありますから、特に男の子には持ち帰るよう頼んでも無駄かもしれません。 卒業式に限りませんが、アメリカでは、学校の節目の行事のたびにプロの写真屋さんに写真を撮ってもらう機会があり、後々のいい思い出になります。 |