多くは最愛の両親のうっかり!!
わが家の近所でも、1999年7月に、看護士の資格もあるベビー・シッターが「ちょっと買物をするつもりで」生後11ヶ月のブライアンちゃんを車に2時間置き去りにして死に至らしめました。一緒に車中に残した自分の子供だけは助かったのだそうです。これを契機に、州議会は、8歳以下の子を車に置き去りにして死亡させた場合は、無条件に過失致死罪を適用する「ブライアン法」を制定しました。
さて、ここまでご説明した3つのケース…いずれも悲惨で軽重を比べようもありませんが、愛する子供を自分の「うっかりミス」で死なせてしまった親御さんの心中はさらに察するにあまりがあります。2002年5月、バージニア州の男性が1歳9ヶ月の愛娘を死なせてしまった例もそうです。その日、母親と長女はガンに侵された外国の親族を見舞いに旅行中で、父親はひとりで12人の子の面倒を見ていたのだそうです。娘を学校に迎えに行ったり、息子をサッカーに連れて行ったり、エアコンの修理屋さんと話したり、昼食を作ったり、洗濯したり、庭のフェンスを直したり、次から次へ仕事が尽きず、いつの間にかお嬢さんを後部座席のチャイルドシートに座らせておいたことを忘れてしまったそうです。 裁判で、陪審員の一同は1年の懲役刑が妥当と主張しましたが、判事は、7年にわたり、毎年1日の服役と、愛娘の命日の頃に献血キャンペーンを催す義務を課すという温情こもった粋な判決を下しました。以来、献血キャンペーンは、この大家族の一家総出のイベントとして続いています。 「チャイルドシートは後部座席」で増加 1995年をピークに助手席のエアバッグによる死傷事故が相次ぎ、幼児は後部座席に座らせるよう法制化されましたが、皮肉なことに、子供が視界から消えたために親の注意が散漫になり、置き去り事故が増える結果を招いたようです。実際、それまでは年平均11件だった置き去り死亡事故が、98年から2006年には年平均36件と3倍以上にはね上がりました。 つまり、「うっかりミス」が事故原因の多くを占めているのです。私の場合、「自動運転モード」と呼んでいるのですが、市内の道路を運転しながら考えごとをしていて、「その日の目的地」ではなく「いつもの目的地」に何気なくハンドルを切ってしまうことがあります。 カリフォルニア州の男性は、生後10ヶ月の息子を、週に2〜3回、出勤途上で保育園にドロップしていました。その朝は定例の日課に横槍が入って少しいらいらしていたのかもしれません。交差点を保育園とは逆方向に曲がり、寝入った息子さんを車に残してそのまま出勤してしまったそうです。失業中のテキサスの男性は、お嬢さん二人を保育園に届けてから臨時の日雇い仕事に行くつもりで家を出ました。上の娘をドロップして生後6ヶ月の下の娘を別の保育園に連れて行く途中、就職希望中の会社から待ちに待っていた電話が入りました。たまたま道路が工事中で、男性は電話で話を続けたまま迂回したのですが、次に郵便局に立ち寄ったときには赤ちゃんのことをすっかり忘れてしまっていたのだそうです。 アメリカの共稼ぎの家庭では、上手に仕事と子供の世話を両立させているつもりでも隙が生じる瞬間があるのかもしれません。日本人駐在員の皆さんの家庭で同じように心配なさることはないかもしれませんが、奥様が病気になった場合など異例の事態に際しては、職場の同僚などにお願いして、できるだけ無理のない子守りをなさってください。 |