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百日ぜきの流行

★ワクチン接種前の乳児が危険 ★3〜5年周期で流行 ★周囲の大人の予防接種が肝心


ワクチン接種前の乳児が危険


2010年の流行 大流行 かなり流行 

(数字は2010年の12月18日までの患者数)

 百日ぜきは、英語ではパタシス(Pertussis)ですが、普通、通称でウーピング(フーピング)・コフ(Whooping Cough)と呼ばれています。せきが続いて肺に空気がわずかになり、苦しくて口から息を吸い込む時に鳴るノドの音がウープ。せきの音の合間に割り込んで、コッ、コッ、ウ〜プ、コッ、コッ、ウ〜プと聞こえるのです。

 せきは嘔吐を伴います。乳児が感染すると、息だけでなく、食べることも母乳やミルクを飲むこともできず、CDC(米国疾病予防管理センター)によれば、半数以上のケースで入院が必要となります。幼児の10人に1人は肺炎を併発し、50人に1人が痙攣の発作を起こすそうです。全米の死亡者は、例年10〜20人ですが、せきで眼底や脳内に出血することもあり、幼児250人に1人の割合で脳障害の後遺症が残ります。


3〜5年周期で流行


 百日ぜきは3〜5年に一度の割で流行しますが、一部マスコミの報道によれば、今回の流行(2010年)は、アメリカで1940年代にワクチンが接種されるようになってから最大の流行だということです。そこで、私も心配になってCDCのホームページを読んでみました。

 (私が読み取るところでは)CDCは、控えめながら「今回の流行を特別視してヒステリックに騒ぎ立てるな」と言っています。しかし、これは百日ぜきは怖くないと言っているのではありません。逆に、流行が下火の時期に油断して百日ぜき対策を怠ってはいけないと警告しているのです。地域的な流行…特にワクチン効果が薄れた子どもたちが通う中学や高校で感染が広がるのは、毎年、全米どこでも珍しくないそうです


周囲の大人の予防接種が肝心


 そこで、流行の議論はいったん後回し。この記事の最重要ポイントを書きますから、パパやママ、グランパやグランマになられる方はしっかり覚えてください。

 とにかく、ワクチンの接種が完了する前=生後6ヶ月未満の乳児に、大人から病気が感染するのを防ぎましょう。乳児には母親の免疫抗体が引き継がれ、長ければ1歳のお誕生日頃まで病気をしないと言われていますが、百日ぜきは例外です。

 風邪を引いていたり、せきをしていたり、百日ぜきの疑いがある人を赤ちゃんに近づけるのはもってのほかですが、そんな消極的対策では不十分です。赤ちゃんに接する可能性がある家族やベビーシッターなど全員が、あらかじめTdap(乳幼児用はDTaP)と呼ばれる大人用三種混合ワクチンの接種を受けておくべきです。

 百日ぜきは、「百日」の言葉通り、発症から完治まで普通12週間以上かかります。風疹のように、妊婦が百日ぜきにかかっても、胎児に奇形が生ずる心配はありません。

 冒頭の地図は、CDCの資料を加工して(私の基準で)百日ぜきが流行している州を色分けしてみたものです。今回の流行は、平年は比較的患者が少ないカリフォルニア州で流行してマスコミの目を引き付けたようですが、前回2005年の大流行の時に比べると全米平均では若干少ないくらいです。