アメリカの 「医療と健康」・e-ガイド(印刷ページ

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インフルエンザの予防接種

★鼻スプレー型・高齢者対象強力型 ★3価ワクチンと4価ワクチン ★感染拡大の防止


 インフルエンザの流行のピークは、北米でも日本と同様に普通は1〜3月ですが、最近は年明け前に蔓延し始めることがありますから、予防接種はできるだけ早めにしましょう。例年、遅くとも9月には接種が始まります。

 アメリカには複数のワクチンがあります。薬局で何も言わなければ、ごく普通のワクチンを接種されることでしょうが、ちょっと知っていれば、自分に向いたワクチンを選ぶことができます。 HealthMap Vaccine Finderというホームページで探せば、ご希望のワクチンを備えている薬局を特定できます。日系企業の医療保険は一般的に優れていますから、おそらく、どんなワクチンでも無料で接種してもらえることでしょう。


鼻スプレー型・高齢者対象強力型・卵アレルギー専用


 例えば2歳から49歳の人なら鼻にスプレー式のワクチン(Nasal Spray)を選ぶこともできます。鼻スプレー式は、注射より手軽で痛くもなく、しかも、ワクチン効果も高いというのですから、お勧めです。子供には指定しなくても、鼻スプレーをしてくれるほど一般的です。日本では、今年ようやく臨床試験を始め、4年後に実用化される計画だとか…。

 65歳以上なら効き目が4倍の強力ワクチン(High-Dose)を接種してもらうこともできます。ワクチンは卵で培養するので、卵アレルギーの方に普通のワクチンを接種することができません。専用のワクチンがありますから、あきらめないでください。


3価ワクチンと4価ワクチン


 また、2013~14年冬から4種類のウイルスに効く4価ワクチンが認可され、製造されるようになりました。日本も、(値上げしたので不評のようですが)2015~16年に一気に4価ワクチンに切り替わったようです(国立感染研究所)。

 これまでのワクチンは、多数のインフルエンザウイルスの中から特に流行しそうな3種類に的を絞って製造されてきましたが、まれに予想が外れる年もあるので、4種類のウイルスに効く4価ワクチンが開発されました。

2018~19年冬のワクチンが対応するウイルス

A/ミシガン/45/2015 (H1N1)pdm09

A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016 (H3N2)

B/コロラド/06/2017 (ビクトリア系)

(4価対象) B/プーケット/3073/2013( 山形系)

 いずれは4価ワクチンが主流となりそうですが、まだ多数派は3価ワクチンです。接種の際に、薬局の人に「3価と4価とどちらのワクチンがいい?」か聞かれたら、迷わず4価を選びましょう。もっとも、あちこちで4価を探し回って、接種のタイミングを逃すようでは本末転倒ですからお気をつけください。

 ワクチンの接種(フルーショット=Flu Shot)はスーパーの薬局などでも手軽にできます…医療保険のカードは忘れずに携行しましょう。普通は、4価でも鼻スプレーでも高齢者対象強力型でも、医療保険で全額カバーされていて、無料で接種を受けられます。

 英語で、3価はTrivalent(トライバラントまたはトライベーラント)、4価はQuadrivalent(クアドリバラントまたはクアドリベーラント)。

 免疫効果が有効になるには予防接種後2週間が必要ですから、流行が始まってから接種しても間に合わないおそれがあり、CDC(米国疾病予防管理センター)は、生後6ヶ月未満の乳児など特別な方を除き、例年、早めの予防接種をするよう呼びかけています。


ワクチンは万能でない


 昨シーズン(2014~15年)は、患者の約半数がワクチンの効かないA(H3N2)変異株に感染した人々でした。このように、流行の予測が外れたり変異株が流行したりする年もあるので、CDC(米国疾病予防管理センター)は、ワクチンを接種したからと言って安心せず、インフルエンザらしい症状が出たら、タミフルやリレンザなどの治療薬が効くうちに医者に診察してもらうよう勧めています。

INFLUENZA Virus Isolated


感染拡大の防止


 くしゃみでウィルスの飛沫は最高6m先に達しますから、既にインフルエンザにかかってしまった人は、ひじで口を押さえて他人への感染リスクを減らしましょう。手で口を押さえると、皆さんの手から公共の場所にウィルスが移る悪循環が止まりません。

 インフルエンザは、セキ、くしゃみ、会話などを通じて空気感染しますが、それ以上に経口感染リスクも高いので、日常生活の何気ない行為にも注意しなければなりません。ウィルスは、レストランの塩・コショウの容器、エレベーターやATMのボタン、手すりやドアの取っ手、パーキングメーターやバスのつり革など金属やプラスチックの表面に付着してから2〜8時間も生き続けます。

 そこから皆さんの手に移り、さらに鼻や口を経由して肺に侵入するのですが、人は1時間に平均18回も無意識に顔を触るそうで、これを防ぐことは実質不可能です。有効な対策としては、頻繁な手洗いなどで手を清潔に保つことだけ。

 次のニュース動画(2013年1月ABC)の中でも、エレベーターのボタンを指の甲で押したり、レストランで食事する前に携帯用のハンドサニタイザー(手指除菌剤)を使ったりすることを勧めていますが、これらは、ストマックフルー(ウィルス性胃腸炎)の感染リスクを減らす対策にもなります。