アメリカの 「マネーと保険」・e-ガイド(印刷ページ

⇒元のページに戻る

自動車保険のかけ方

★平均的な契約例 ★交通違反と保険料 ★交通事故の対応


 損害保険を契約するには、日本と同じように、補償内容を細かく決める必要がありますが、保険約款の中には日本人には想定外の特約条項もあります。

 「無保険車傷害(Uninsured Motor Vehicle Bodily Injury)」は、保険がかかっていない車にぶつけられたり、逃げられたりして、加害者に損害賠償を請求できないケースでも、皆さんの治療費をを補償する条項です。

 車を売るときには、ディーラーは保険を確認して売っているはずですが、買ったらすぐ解約するとか、いろいろ法の抜け道はあるようです。


平均的な契約例


担保項目

対象となる補償

補償限度額

保険の対象にならない主な項目

Bodily Injury

(対人賠償)

車の事故で相手側に(身体、物的)損害賠償責任を負った場合の補償

1事故につき50万ドル

1名につき25万ドル

1.故意によるもの

2.使用人

3.車に取り付けされていない所有物

4.商業目的での使用

5.許可の無い人の使用

Property Damage

(対物賠償)

 

1事故につき10万ドル

 

Under/Uninsured Motorist

(無保険、低額保険者賠償責任補償)

事故の加害者(相手側)が無保険、低額保険で身体損害を受けた場合の補償

1事故につき50万ドル

1名につき25万ドル

1.被保険者の車

2.許可の無い人の使用

Medical Payment

(搭乗者損害補償)

被保険者および搭乗者への医療費補償

1名につき5000ドル

通常の目的以外での車の使用

Collision Coverage

(衝突車両補償)

衝突事故により車の損害補償

修理代または全損の場合は、お車の現価評価額

免責500ドル

1.自然消耗

2.商業目的での使用

3.法的罰則の理由による損害、没収

4.無線等による損害

Other than Collision/Comprehensive

(包括車両補償)

火災、盗難、いたずら、天災等によるお車の損害補償

免責250ドル

 

Towing

(レッカー費用)

 

1回50ドルから75ドル

 

Rental

(レンタルカー費用)

保険で認められた理由のよる修理期間中の代車レンタル補償

1日30ドル、30日間まで

保険金額を上回ったレンタル費用

 「搭乗者傷害(No Fault Medical payment)」は、皆さんの過失の有無にかかわらず、速やかに搭乗者の治療費を支払う特約です。

 「衝突車両補償(Collision Coverage)」の条項は、自損事故の場合も含み皆さんの車の修理代を補償してくれる付帯条件です。相手に過失がある場合には、皆さんの保険会社が修理代を立替払いした上で、皆さんの代わりに相手と交渉してくれます。この特約を外すこともできますが、運良く相手が保険をかけていた場合でも、相手の保険会社と自分で交渉しなければならない羽目になります。

 「包括車両補償(Comprehensive Coverage)」特約は、いたずらなど自動車事故以外の理由による物損が対象です。珍しい例ですが、ガソリンに砂糖を混ぜられて、エンジンを焼きつかせてしまった学生さんがいました。私も、高速道路で前を走る車がはねた石が当ってフロントガラスが割れるという経験をしました。

 もっとも、フロントガラスが壊れていては安全運転ができませんから、多くの州が「包括車両補償」条項なしでもフロントガラスの修理代は補償するよう州法で定めています。それも、修理代はそもそも所定の免責額を差し引いて支払われるものですが、フロントガラス損傷の場合には全額補償されますから、安心してください。

 車が動かなくなった場合の「レッカー車費用」や事故車両を修理中の「レンタカー費用」を一定額支払う特約条項もありますから、ご自分の保険契約をよく勉強しておかないと、肝心なときに忘れていて損をします。 


交通違反と保険料


 スピード違反など交通違反をすると、点数が増えるだけならともかくも、自動車保険の保険料が高くなってしまいますから注意しましょう。個人のスピード違反も、車両の事故記録も、請求に応じて開示される仕組みですから、保険会社を変えても隠すこともできません。重大事故や悪質な違反が重なると、最後は保険料の問題を通り越して、どこの保険会社も引き受けてくれない最悪の事態に陥るのです。

 ただし、講習を受ければ、大半の州では、軽い違反に限り違反行為を記録から抹消してもらえます。「くるまとドライブ」のページには、最近スピード違反で捕まり講習を受けた方のレポートが寄せられています。交通違反で捕まった場合の注意、ケンタッキー州の減点システム、飲酒運転の要件などもお読みください。

⇒クリックで「くるまとドライブ」のページ ★交通違反

 次に、お友だちの車を借りて事故を起こしてしまった場合、お友だちの保険と自分の保険とどちらの保険が適用されるでしょう?答はお友だちの保険…仕事の訪問先で自分の車が動かなくなり、借りた車で帰る途中、高速道路でスリップして横転、大破させてしまったという事例がありました。結果的に、好意で車を貸してくれた人の保険料が上がり、差額の支払いをめぐってギクシャクした関係がしばらく続いたのだそうです。安易な気持ちで車を借りてはいけません。

 「郷に入れば郷に従え」で、お子様が16歳になり次第、運転免許を取らせているご家庭が多いようです。若年者ドライバーが保険に加入すると保険料は目が飛び出るほど上がりますから、あらかじめ見積もりを保険会社に聞いて覚悟しておきましょう。でも、この車社会のアメリカでは、お子様がいつどこでどんな車を運転することになるか分かりません。常に、免許をお持ちのご家族全員の名前が保険証券に記載されるように手配しておくことが肝心です。自動車学校で教習を受けたり現地校の成績証明を出したりで割引がありますが、条件が変わることもあるので、その都度確認してください。

 アメリカ国内やカナダの旅行なら、あらためてレンタカーに保険をかける必要はないはずです。レンタカーで事故を起こした場合も、普通は自家用車に準じた補償が得られるはずですが、バケーションにお出かけの前に、ご自分の自動車保険の付帯条件をきちんと確認なさってはいかがしょう。


交通事故の対応


 事故が起きてしまったら、現場保存も大事ですが、二次災害が起きないように事故車を安全な場所に移動しけが人を救護しましょう。 911(日本の110番兼119番)に電話すると、パトカーと救急車と消防車がセットで来ます。緊急の手当てや火災の心配がなくても、必ず警察だけには来てもらって、事故の大小にかかわらず、ご自分の証言をはっきり主張しなければなりません。

 日本とは、事故の責任に対する考え方がだいぶ違います。日本では、高速道路から飛び降りた人をはねても「前方不注意」にされかねませんが、アメリカでは赤信号で横断した人をはねて起訴されないケースもしばしばあります。相手が怪我をしたら気の毒でつい謝ってしまうのが日本人の人情ですが、アメリカでは、その場で相手の非を指摘する冷静さが必要です。

 ある日系保険代理店では、現場での対応について次のように勧めています。

 車を停止してください。警察官がくるまで、一切事故の状況を変えてはいけません。自分が明らかに被害者があっても、状況を変えることによって、加害者は逃げ口上をつくるからです。また、事故のために交通渋滞になって長い車の列が出来ても、警察官が来るまでは、周りの声は一切無視してください。

 どんな事情があっても自分の責任を認めないで下さい。(被害者・加害者にかかわらず、絶対に“Sorry”と言ってはいけません。自分の非を全面的に認めることになり、示談になったときに不利になります)。また、その場で賠償金のお支払い等の約束はいけません。

 相手方の名前、住所、車の登録番号、保険会社の名前、保険証券番号をご確認ください。確実に、身元を確認するために名刺等でなく、必ず免許証番号を見せてもらってください。

 相手方にあなたの(借用車の場合は所有者の)名前、住所、車の登録番号、保険会社の名前、保険証券番号をお伝え下さい。

 警察官及び相手方に自動車保険付保証明書(Certificate of Insurance)を提示して下さい。

 (注)もしも事故の直後に上記が実行できない場合は、出来るだけ早く警察に通報してください。

 

次の事を必ず記録しておいてください。

・相手方運転手と車の所有者の名前、住所、車の登録番号

・相手方の保険会社

・自動車の主な損害場所

・目撃者の名前と住所

・事故発生地点の道路名、信号、目標物等

・現場の立会いをした警察官のナンバー(The number of police officer) 

 事故の現場、その周辺、自車と相手車の損傷個所等の状況を写真撮影してください。そのために常時、使い捨てカメラ等を車に備え付けると便利です。

 警察の検証が終わりその場が一段落したら、修理の見積もりを取り、保険会社の指示を待つことになります。