アメリカは仮の住まいだから、保険も適当でいいと考えている方はおられませんか?でも、保険は災難にあって初めて役立つもの…甘く見ていると痛い目に合います。わかりやすい解説図を書いてみましたから、基本をしっかり理解してください。 一目で分かるアメリカの損害保険の仕組み
テナント保険は身を守る「防具」 火災保険は大家さんがかけていますが、皆さんの家財が焼けたり盗難にあっても大家さんの保険では補償されません。たいていの賃貸契約書には皆さんが必要な保険をかけるよう書かれていますが、かけなくても済んでしまいます。 それでは、火事や盗難の損害さえあきらめれば、テナント保険はかけなくてもよいのでしょうか?実は、テナント保険には、皆さんがゴルフボールを当てて怪我をさせてしまった場合など他人から損害賠償を求められた場合に賠償額を補償してくれる重要な役割があります。 私たちにも、スーパーでお年寄りにカートを軽く当てただけで訴えられてお困りのカリフォルニア州にお住まいの方からご相談がありました。中西部や南部の小都市に暮らしていると気が付きませんが、カリフォルニア州などでは性質の悪い訴訟も多く、陪審員制度の下、弁護士次第で白が黒になってしまうおそれも大いにあるのです。ご出張のときは会社のビジネス保険で守られていますが、ご家族旅行のときに何かトラブルがあったら一大事です。 日本で個人賠償付きの総合保険をかけておられる方も、海外事故は免責扱いになっているかもしれませんから、特約条項をしっかり読み直してください。海外旅行者保険をかけておられる方も、補償限度額が十分かもう一度確かめておきましょう。昔、ゴルフ・プレー中に、私の同伴者の打った球がそれて道路を運転中の車のフロント・ガラスが割れるという珍しい事故がありました。小さなトラブルの種はそこら中に転がっているものです。テナント保険はアメリカ生活に欠かせない皆さんの「防具」です。 アンブレラ保険は土砂降り対策 さて、これで(自動車保険とテナント保険があれば)、交通事故に遭ってもその他の事故に遭っても、本人の被害ばかりでなく他人への損害賠償を補償してもらうことができます。それでは、この2種類の保険で、もう心配はないのでしょうか? 答えは「いいえ」…保険会社によって違いますが、自動車保険の対人賠償補償額は、最高でも、1名当り25万ドルまたは1事故50万ドル程度で、テナント保険も1事故30万ドル程度です。死亡事故などの大トラブルに対処するには、金額的に心許ないのでしょう?つまり、自動車保険とテナント保険の傘をさしていれば、小雨は濡れずにしのげますが、土砂降りになると役に立たなくなってしまうのです。 「アンブレラ保険」は、自動車保険やテナント保険でカバーしきれない高額賠償を補填する自動車保険やテナント保険と一体になった保険…丈夫な「重ね傘」のようなものです。*自動車保険とテナント保険を両方とも同じ保険会社で契約していないと掛けられません。 保険料には、地域差、個人属性の差が大きく反映するので、絶対額でいくらとはご説明できませんが、3つの保険を全て契約しても、お支払の大半は自動車保険部分です。(私の保険会社の場合)自動車保険とテナント保険の契約にはセット割引があって、自動車保険しか契約しない場合と支払保険料はほぼ変わりませんでした(テナント保険はただ同然でした)。アンブレラ保険も、高額賠償が頻繁に起きるわけではないせいか、多額の保険をかけても保険料はさほどかさみません。 日系企業は豊かだと思われているので、「訴訟屋」の絶好の標的になります。大都市では、駐在員に3百万ドルのアンブレラ保険をかけるように勧めていた会社もありましたが、最低でも百万ドル、できれば2百万ドルのアンブレラ保険を検討なさってはいかがでしょう。 (*単身赴任で公用車がある方は、普通は個人の自動車保険に加入しておられませんが、それでも希望すれば「ノン-オーナーズ」というレンタカー専用の保険をかけてアンブレラ保険に加入する道はあるそうです。) 保険代理店 保険は皆さんと保険会社の間の契約ですが、契約を仲介するのが保険代理店です。代理店の中には「A社」専門の代理店と、「B社」や「C社」など複数の保険会社とお付き合いのある代理店があります。日本にも代理店制度があるのですが、専任代理店が多くて保険会社と一体視されてしまうのかもしれませんね。 渡米されて間もない方が、ディーラーに勧められるままに地元の保険代理店で自動車保険を契約すると、とんでもなく高い保険料になります。アメリカでクレジット・ヒストリーや運転暦がなければ、@ローンの延滞を繰り返す人やA事故や違反の常習者と同じ扱いを受けるということです。このような方には、三井住友海上と提携しているトラベラーズ社や、日本にも進出しているAIG社などの日本人に配慮したプログラムが有利ですが、細部の条件を合わせて見積もりを比較するのは至難の業です。最初の契約時には、日本語で信頼して相談できる保険代理店を選ぶのが安全です。 |