大半が日曜休業


 北米自動車ディーラーの多くは、日曜日を定休にしていますからお気をつけください。日系中古車ディーラーのガリバーの場合も、カリフォルニア州とニューヨーク州では日曜営業しています(木曜日閉店)が、イリノイ州では車の日曜販売が禁じられているので、シカゴ店だけはやむを得ず日曜日に閉店です。ほか13州に、ディーラーの日曜営業を禁じる法律があります。 

 私たちが住むケンタッキー州では法律上は自由なのに、ほぼ全てのディーラーが日曜を定休日にしていて、売行きが悪い時だけ「日曜特別セール」の新聞チラシを配ります。昔は、各地に、日曜日はキリスト教の安息日なのでお店は全てお休みという法律(Blue Laws)があって、自動車ディーラーが休むのも当たり前でしたが、今は365日24時間営業のお店が増え、日曜日でもお酒が買える時代…「なぜ自動車ディーラーだけ休みなの?」と文句を言いたくもなります。

 車は必需品ですから、自動車ディーラーとしては、日曜日に休んでも、みんなで休むなら売上は変わらないとでも考えているのでしょう。むしろ、客の方に時間のゆとりがあって、じっくり値切られる日曜日は敬遠したいのが本音かもしれません。

 いずれにせよ、平日に忙しい日本人駐在員の皆さんには、土曜日が週末の唯一のチャンスです。車選びには時間がかかりますから、自動車ディーラーには朝早くからお出かけたください。


値切るなら月末がチャンス


 さて、皆さんに自動車販売の仕組み(裏話)をお教えしましょう。セールスマンのお給料は、ほぼ全額が歩合です。実際に売れた値段から、車の原価とディーラー管理コストを引いた差額の一定歩合が支給されます。お客様が採算ライン以下でないと買わないという場合には、上司の許可を得ないと売ることができません。そのような場合には1台売っても百ドルほどしかもらえませんが、月々の販売台数に応じてボーナスが出ますから、特に月末には、お客様を何とかその場で契約させようと必死で引き止めるのです。

 要するに、全てのお客様がメーカー希望小売価格で買ってくれれば、楽に高収入が望めるうまい商売です。ただ、アメリカ人のお客様も事情はある程度知っていますから、複数のディーラーに値段を聞いたり、時間をかけて値切ったり、売る方も買う方もたいへんな労力を費やすことになります。

 とかく、アメリカに来て間もない日本人はいいカモにされがちですから気をつけましょう。延々と早口でまくしたてられたら、英語が得意な人でもくたびれて、セールスマンの術中にはまり、売りたい車を、売りたい値段で売りつけられる破目に陥るのがパターンです。

 お客様が車を下りると、ショールーム前にたむろするセールスマンの中から(暗黙の順番や序列のようなものがあって)誰かが近づいて声をかけてきますが、実はその瞬間がキーポイント。担当セールスマンは、後日出直して来ても変えてもらえませんから、その人の能力次第で、ほしい車が安く手に入るかどうか運命が決まってしまいます。ただし、能力の高いセールスマンに限って口達者で、上手に高く売りつけられてしまうところが、もう一つ難しいところです。

 企業の場合は、あらかじめディーラー側に企業専任のセールスマンを選ばせておいて、駐在員の皆さんの私用車購入も同じセールスマンに担当させるのがベストの方法と思われます。セールスマンは、できれば口先だけでお客様を言いくるめようとしたがるもの。私用車の購入時にも必ず個々の車のデータ・シートを印刷し、皆さんに見せて説明するよう釘を刺しておけば少なくともあくどい売り方はできなくなります。


いいディーラー 悪いディーラー


 さて、ディーラーにも、それぞれ個性があります。アメリカのディーラーは独立性が高く、メーカーのコントロールも及ばないので、日本車のディーラーといっても油断はできません。中にはセールスマンに怪しい売り方を指導しているディーラーもあります。私たちが皆さんに気を付けていただきたいのは、

@ディーラーが、ディーラー自身のオプションで特別なアクセサリーをつけるのはショールーム展示用のマニアックなスポーツ車くらいです。ですから、皆さんがお買いになる普通の車に、メーカーの値札以外の値札がついていたらおかしいと思わなければなりません。しかし、一部のデイーラーは、原価$20のビニールのピンストライプやドア・ガードがつけた上で、メーカーの値札と別に「名ばかりディーラー・オプション」の$800〜900もする値札を貼って売ります。この「名ばかりディーラー・オプション」は、さすがにお客様からお金を余計にだまし取る目的ではなさそうですが、セールスマンとお客様の値引き交渉のスタート・ラインを「上げ底」する効果があります。ディーラーが車をメーカー希望小売価格で売っても、お客様は$800〜900も値引きしてもらったと勘違いする単純な仕掛けです。

A値引き交渉も済み実売価格が決まったら、ほかにディーラー宛に支払うのは、税金と車両登録料以外にないはずです。例えばケンタッキー州の税金なら、新車はメーカー希望小売価格の5.4%、中古車は実売価格の6%と定められていますが、車両登録料はディーラーによってマチマチです。実は、車両登録料(License Fee)と呼んでいても、州やカウンティーの役所に支払う手数料はわずか数十ドルで、大半はディーラー自身の登録事務手数料です。大都会ならともかくも、地方都市で$500近く取るようなディーラーは要注意…一般的に、良心的なディーラーほど、登録料も安く設定しているように見かけられます。セールスマンは、登録料が高いことがばれないように、なるべく税金と登録料を合算で説明しようとします。

B悪徳ディーラーに限らず、契約書に署名する段階で、保障期間の延長特約やシートの汚れを防止する薬品の塗布などを勧められることがありますが、雰囲気に呑まれてOKすると、総額で結局高い買物になってしまいますから気をつけてください。家電製品を買うときなどは、実際にこわれることも多いので保障期間の延長も必要かもしれませんが、駐在期間が終われば車を売って帰国なさる皆さんの場合は、所定の保障期間(トヨタの場合、3年または36千マイル、駆動部に限り5年または6万マイル)で十分ではありませんか?

Cリースやローンの契約をするときに、ディーラーが仲介金利を上乗せするケースもあります。自動車メーカーのファイナンス・カンパニーで借りる場合には安心ですが、ディーラー経由で一般金融機関から借りる場合にはお客様には原価(銀行の金利)が分かりませんから、ディーラーを無条件に信じてファイナンスするのは避けましょう。お取引のある金融機関に直接相談した方が安上がりになるかもしれません。


適正価格のチェック


 最近は、インターネットで客観的な適正価格をチェックできるようになってきましたから、こちらが事前勉強してきたことをアピールして、セールスマンに足元を見られるリスクを減らしましょう。

 新車の場合は、インターネットで、皆さんがお住まいのZIPコードと、買いたい車のモデルや仕様を入力すると、それぞれの地域のディーラー仕入れ価格(Dealer Invoice)とメーカー希望小売価格(MSRP=Manufacturer's Suggested Retail Price)、それに呼び方は様々ですが、各ディーラーで売買されている現実の価格が表示されます(「cars.com」ならSmart Target Price、kbb.com」ならFair Purchase Price、edmunds.com」ならTrue Market Value)。

 つまり、事前に購入希望車のメーカー希望小売価格と現実の売買価格の比率さえ調べておけば、実際に購入する車のメーカー希望小売価格が多少違っても、ここまではまけさせたいという目標価格が算出できます。

ネットで調べた現実の売買価格   値切る目標価格


ネットで調べたメーカー希望小売価格   実際に購入する車のメーカー希望小売価格

 中古車の場合は複雑な要素がからんでネットの情報をそのまま使うことはできませんが、それでも事前勉強は強い武器です。セールスマンも売りたくて必死ですから、お客様が家に帰って価格をじっくりチェックする素振りを見せれば、それだけでも駆け引きとして有効です。