日本と北米では、数々の分野でルールが違います。アメリカでもカナダでも、州によって法律が微妙に違います。たいがいのことは知らなくて済むのですが、交通ルールの重要な違いだけは、最初に覚えておかないと大事故を惹き起こすことになりかねません。


一時停止後の発進順序


 一時停止標識のある交差点で車がお互いに一時停止した後の発進順序は、日本と違いますから気をつけてください。日本では左優先ですが、アメリカとカナダ(ほかに南アフリカ)では先着順です。先着順が微妙な場合は、手で合図したりして危なくないように順番を譲ることもあります。

 たいていの場合は、「4 Way Stop(四方一時停止)」などの表示で他の道路にも優先権がないことが分かりますが、中には、ショッピング・モールに入る道路は優先(ノン・ストップ)で、残りの三方は一時停止などの変則的な交差点もありますから、ご注意ください。

 私の場合は、25年も昔の話ですが、カナダに赴任してしばらくの間、「一時停止後の発進順序」を日本と同じように「左(右)優先」と思い込んでいました。後から思えば、同時に交差点に入った車に迷惑をかけていたに違いありません。事故を起こさずに済んだのは、幸運なことでした。


車の右側通行


 右側通行と左側通行の由来については異説もあるようですが、中世のヨーロッパでは、騎乗者は左手で手綱を取り、挨拶(握手も含む?)や防御(剣?)に使う右手の側で対向者と向き合うため左側通行だったのだそうです。イギリスでは、1756年にロンドン橋の通行について初めて法制化され、以来左側通行が続いています。アメリカでは、18世紀末に多頭立ての荷馬車が登場し御者が左側最後尾の馬に乗り右手で鞭をふるうようになる間に、御者が乗る左側ですれ違うのが自然に定着したのだそうです。

 日本とアメリカではウインカーとワイパーのレバーも逆ですから、渡米後しばらくは、雨でもないのに、右折のたびにワイパーを動かしてしまいますね。日本の左側通行の条件反射が皆さんの脳のどこかに残っている証拠ですから、ウインカーとワイパーを頻繁に取り違えるうちは、スピードは控えめに安全運転してください。

 実は、車が頻繁に通る場所で緊張して運転している時に、左右を錯覚することはまずありません。ある出張者の場合は、車線がない田舎道路の真ん中を油断して運転していたときに、久しぶりの対向車に道を譲るつもりで逆にハンドルを切ってしまい、あわやという怖い目にあいました。


赤信号の右折


 「No Turn On Red」という標識がない交差点であれば、赤信号でも他の車が来ないことを確認した上で右折できます。ただし、交差点手前で一旦停止することと、車は、左からだけでなく、左折して前方からも来ることに十分注意してください。カナダでも、モントリオール市内を除いて同様のようです。

 全米42州とカナダのブリティッシュ・コロンビア州では、赤信号で、一方通行の道路から、同じく一方通行の道路に左折することが認められています。禁じているのは、サウス・ダコタ、コネチカット、メイン、ミズーリ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ノースカロライナ、ロードアイランドの8州とワシントンDCおよびニューヨーク市。逆に、対面交通の道路からでも一方通行の道路に左折を認めているのは、アラスカ、アイダホ、ミシガン、オレゴン、ワシントンの5州です。


カナダの左折信号


 カナダのブリティッシュ・コロンビアとマニトバを除く州では、青信号の点滅は「Advanced Green When Flashing(=上級青信号) 」と呼ばれ、直進も右左折も自由にできます。この間、他方向の信号は赤になっています。旅行にお出かけの際には、覚えておいてください。


スクールバス


 スクールバスが止まると、追い越し車線側に必ず折りたたみ式の「STOP」標識を出ますから、必ず十分な距離を置いて停車しましょう。バスの陰から子供が駆け出してくることもありますから、形式的に法に従うつもりではなく、実際に子供の動きに注意を払って見守ってあげてください。滅多にありませんが、スクールバスの運転手の不注意で、子供の死傷事故が起きることもあるのです。


お葬式の葬列


 事故でもなさそうなのに、パトカーが交差点を唐突にふさぎ、後から車が何十台もつらなってのろのろと通り過ぎていくことがありますが、これは葬列ですから邪魔をしたり、ついて行ってはいけません。お通夜(Visitation)の会場や教会から、パトカーを前後に2台付けて墓地に向かう場合が多いようです。パトカーも、サイレンを鳴らしたりしないことが多く、警告灯を点滅させないこともありますから、雰囲気で察して葬列の最後の車が通り過ぎるのをじっと待ちましょう。