よほどの大都市でない限り車なしでは暮らしていけないアメリカ…交通違反を重ねて免停になったりしないように万全の注意を払いましょう。


ポイント制度


 日本と同様、アメリカも交通違反にはポイント制度を採用しています。「DMV.ORG(公的機関のページではないのでご注意)」というホームページで各州のポイント制度を調べることができます。リンクしたページにはケンタッキー州のポイント制度が書かれていますが、右上隅の欄で州名を選べばお調べになりたい州のポイント制度のページが開きます。

 ちなみに、ケンタッキー州の例では、2年以内に累積12点以上の違反を重ねると免停になります(州外での違反は含まれません)。 ポイントは、違反の罪が確定した日から(捕まった日ではありません)から公式にカウントされ、2年で自動的にゼロに戻ります。スピード違反を例に取ると点数は以下の通りです。

高速道路で10マイル以下のスピード超過 

… 0点

高速道路で10〜15マイルのスピード超過 

… 3点

一般道で15マイル以下のスピード超過

… 3点

16マイル〜25マイルのスピード超過

… 6点

26マイル以上

… 公判(一発免停の可能性もあります)

  免停に関しては2年で点数はなくなりますが、違反の記録は5年間保存されます。アメリカでは、損害保険会社がこの記録を重視して保険料を決めますから、交通違反くらいは罰金さえ払えば問題ないとたかをくくっている方は、保険更新の際に新保険料がはねあがって慌てることになってしまいます。

 ただし、さすがアメリカです。軽微な違反なら、罪をまるごと取り消しにしてくれるありがたいシステムがほとんどの州にありますから、これは利用しなければ損です。例えばケンタッキー州の場合なら、トラフィックスクール(交通安全講習)に出席すれば1年に1度に限り違反は免除してもらえます。さらに、自州のトラフィックスクールに出て他州での違反を取り消す奥の手もあるそうです。

 私たちも、息子が隣のインディアナ州でスピード違反したときには、始末書を郵送するだけで許してもらえたので驚きました。図々しいようですが、罪を取り消す手立てはないか、捕まったときに、その場で警官に質問するのが一番です。

===============警官の尋問===============

 パトカーが、ライトを点滅させサイレンを鳴らして追いかけてきたら誰でも平静ではいられませんが、交通違反をしていなくても、検問などの理由で警官に呼び止められることがあります。ケンタッキー州交通局の安全講習マニュアルでは、警官とドライバー双方の安全を考慮し、次のように冷静に行動するよう呼びかけています。

@別の車にとって邪魔とならない安全な場所を見つけ次第、道路の一番右端に車を寄せます。

Aシートベルトは着用したままに しておきましょう(シートベルト不着用が罰金・罰点の対象となります)。

B非常灯を点滅させます。

Cエンジンを切り、夜ならば室内灯をつけます。

D運転席側の窓を開け、(武器を持ってないことをアピールするために)手をハンドルの上に乗せ警官を待ちます。

E警官が来たら、その指示に従います。

 全てマニュアル通りでなくても大丈夫ですが、慌ててドアを開けて車外に飛び出したりしたら、警官に犯罪者と疑われてこわい目に合いかねません。慌てずに、にこにこ愛想よい笑顔を作って、警官をじっと待っているだけでいいのです。

 まず運転免許証、自動車保険の証明、自動車登録証の提示を求められ、次に警官が皆さんに違反の事実を説明します。 警官はいったんパトカーに戻り、数分後に再びやってきて違反切符にサインを求めます。これは「かくかくしかじかの容疑で警官に呼び止められた事実」を確認するものですから、容疑に不満があってもサインしなければなりません。容疑の真偽は、後日、法廷で争うことになります。  

 まれに警官を装う強盗や誘拐などの犯罪があるそうです。マニュアルによれば、寂れた一本道で警察に追いかけられた場合には、最寄りの商店やガソリン・スタンドの駐車場など第三者に目撃されやすい場所に着いてから、車を寄せて待つようにアドバイスしています。  

===============飲酒運転===============

 飲酒運転は、アルコールだけでなく、麻薬など薬剤の影響下の運転とひとくくりのDUI(Driving Under Influence=酩酊運転)という言葉で呼ばれています。

 血中アルコール濃度が0.08%以上だとその事実のみでDUIとして逮捕されます。基準以下でも歩行試験などのテスト次第で警官にDUIと判断されたら、それだけでいけません。そのまま連行されて留置場に泊まる運命です。

 あくまでも目安ですが、ワイン1杯やビール1缶でアルコール濃度は0.02%上がり、1時間に0.02%ずつ下がっていくのだそうです。また、歩行試験など警官の指示に従わなかった場合には、重加算罰(Aggravating Circumstance)で、理論的には、初犯でも最高30日の禁固刑と30日間の社会奉仕の実刑が課される可能性があるそうです。

 言うまでもないことですが、お酒を飲むならお酒を飲まない運転役を同行するか、タクシーなどを使って、絶対に飲酒運転をしないことを心掛けてください。

運転履歴と車両履歴


 帰国就職して日本で働いている息子が、「運転履歴(Driving History Records)」を取ってほしいとEメールで頼んできました。今では、外国免許を日本の免許に切り替えるには、いちいち試験が必要になってしまいましたが、それでも新規に取得するよりは外国免許から切り替える方が手続き的に楽なのだそうです。

===運転履歴===

 「運転履歴」は、州政府のホームページに名前と運転免許証の番号を入力するだけで、その場でダウンロードできます(PDFファイル=ケンタッキー州の場合は電子申請なら手数料5ドル)…州法で、申請者が誰彼かまわず発行することになっているのだそうです。

 運転免許証の種類と有効期間、過去5年間の交通違反の記録が記載されています。自動車保険の料金は、この記録次第で大きく変わりますからお気をつけください。一定期間無違反の人が軽い違反を犯した場合に限りますが、多くの州に講習を受ければ違反の事実が取り消されるという寛大な制度がありますから、いざというときには必ず調べてみましょう。

 さて、余談ですが、運転免許証の発行日の欄には現免許証に更新された日が記載されていますが、実はこれが問題。息子は16歳で免許を取り24歳の今は堂々たるベテラン・ドライバーなのですが、書面上の日付で運転暦が証明できなければ若葉マークをつけて運転しなければならないのです。私も、昔、カナダから帰国したときに同じ目にあって憤慨したことを思い出しました。所詮、気持ちの問題ですが…。