私たちがアメリカに来た1995年は円高の1ドル80円時代…当時、ガソリンはガロン1ドル前後でしたから換算すると、リッター約20円という驚異的な安さでした。GMが、ガソリン多消費の大型SUVの拡販で安易に延命を図ろうとしたのも無理からぬことです。 ガソリン価格の推移 レギュラーガソリンの小売価格は、2003年に始まったイラク戦争が長引くうちにガロン2ドルを越え、2005年のハリケーンカトリーナで3ドル越え、2008年の夏には4ドル越えと7年で4倍に跳ね上がったあげくに、9月のリーマン・ショックで急落したのです。いったん上がったガソリン価格が元の水準に戻ったからといって、消費者はもう大型SUVには帰ってきません。 プレミアム(ハイオク)・ガソリンの効果 そんな時代ですから、少しでも節約したいガソリン代。「プレミアム・ガソリンに替えて燃費が向上したら少し得?」と考えている方はおられませんか?ガソリンについて詳しくない皆さんに説明しますと、(ディーゼル車が使うディーゼル油を除き)一般のガソリン・スタンド(ガス・ステーション)では@レギュラーAミッド・グレード(プラス)Bプレミアムと3種類の油種を売っていて、それぞれの選択ボタンのそばに数字が表示されていますが、これがオクタン価(そもそもは2種類のオクタン成分の比率を表していましたが、現在は安定して燃える性能を示す指標として使われています)です。 (注)石油からは精製方法によって様々な炭水化合物(炭素と水素が結合した分子)が生まれます。オクタンは8本足のオクトパス(=たこ)から連想されるように、8個の炭素と12個の水素が結合した分子です。プレミアム・ガソリンは、高オクタン価ガソリンを略して日本ではしばしば「ハイオク」と呼ばれています。
オクタン価の数値は、地域やガソリン・スタンドの系列によって微妙に違うようですが、ケンタッキーの周辺ではレギュラー87/ミッド・グレード(プラス)89/プレミアム91〜93が一般的かと思います(日本ではレギュラー90〜92、プレミアム98〜100が普通)。ガロン当りのお値段は、プラスがレギュラーより10セント、プレミアムは20セント高いだけですから、3ドル時代ともなると価格差はあまりないような気にもなってきます。そこで「燃費がよくなるなら、プレミアムを入れた方が安上がりかも?」、あるいは「プレミアムなら、給油回数を減らすことができるかも?」と考えがちですが、ちょっと待ってください。 オクタン価は、前述の通り、ガソリンの安定燃焼の指標=言い換えれば「ノッキング」を防ぐ性能なのです。「ノッキング」などという言葉は、物心ついた頃にはオートマ車だらけという世代の皆さんには死語になっているのではありませんか?昔の車は意地悪で、初心者がクラッチを操作すると「カクン、カクン、プスン」、いとも簡単にエンスト(Engine Stall)したものでした。 ですから、オクタン価が高くても燃費は向上しません。一般車は、その土地のレギュラー・ガソリンで最適走行するように設計されているはずですから、プレミアム・ガソリンに替えるメリットはありません。ただ、大型SUVや輸入車の中にはプレミアム・ガソリン専用車がありますから、購入時に仕様をしっかり確認してください。ノッキング防止機能が装備されている最近の車には、もちろんノッキング対策も無意味です。 逆に、プレミアム・ガソリンに替えるとデメリットがあるかもしれないと言われています。人間なら、カロリーの取り過ぎでコレステロールがたまってしまうようなものでしょうか、燃え残りのカーボンがエンジンを汚してしまう副作用があるようです。清浄効果を強調して宣伝するプレミアム・ガソリンもありますが、コレステロールを下げる薬のようなもので、そもそも食べ過ぎないのが一番です。
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