2010年国勢調査 下院定数は1910年から不変
アメリカの国勢調査(Census)は建国直後の1790年に始まり、以来10年に一度、西暦の最後の数字がゼロの年に実施されて来ました。2010年4月1日付けの国勢調査は12月21日に州別人口が発表され、それに伴って下院議員の州別選出枠が見直されました。 下院議員435名の総枠は1910年から不変で、州別選出枠を決める計算方式も1940年に制定されてから変わってません。算術的なブレでモンタナ州では99万人に1名、ロードアイランド州では105万人に2名と1.88倍の「1票の格差」が生じてしまいますが、全米平均では人口71万人に対して下院議員1名の割合で、公平に見直されます。増減のある州では選挙区の地域割りも変わりますから、アメリカの政治家はたいへんです。 それに比べて、日本の「1票の格差(2010年9月現在)」は、衆院小選挙区で2.35倍、参院選挙区は5.03倍。最初に違憲訴訟が持ち上がったのは1962年の参院選挙で、「1票の格差」は当時でも4.09倍…小手先の手直しばかりして、50年近く経っても未だにグズグズしているのですから、日本の民主主義も困ったものです。 ミシガンの人口減少 アメリカの人口は100年間で3.3倍に増え、過去10年でも1割増えて3億人の大台に乗りました。 本題からはそれてしまいますが、左のアメリカの人口推移のグラフに日本の統計を重ねてみて唖然としました…1980年代末のバブル期までは、日本の人口増ペースもアメリカとほぼ変わらなかったのですね。不況が先か人口の低迷が先かは別にしても、これを見るだけで「失われた20年」の重さをズシリと感じます。 話をアメリカに戻しましょう。2000年の国勢調査では全ての州で人口が増加したのですが、今回はデトロイトを抱え自動車不況に苦しむミシガン州で人口が減ってしまいました。 国勢調査のたびに北東部や中西部諸州の下院議席が南部や西部の諸州にシフトするのは常態化していますが、今回も例外ではありません。増えたのは、(+4)テキサス(+2)フロリダ(+1)ネバダ、アリゾナ、ユタ、ジョージア、サウスカロライナ、ワシントンの8州で、減ったのは(-2)ニューヨーク、オハイオ(-1)マサチューセッツ、ニュージャージー、ペンシルバニア、ミシガン、イリノイ、アイオワ、ミズーリ、ルイジアナの10州。全米の人口増加率が10年で9.7%もあるので、ミズーリ州のように7.0%増でも1議席失ってしまった気の毒な例もあります。南部のルイジアナ州が議席を減らしたのには産業基盤が弱いせいもありましょうが、2005年のハリケーン・カトリーナでニューオリンズを中心に他州に移住した被災者が多かったためでしょう。人口増は1.4%に止まりました。
選挙人の数 共和党支持者が多い南部で下院議席が増えれば、下院の選挙で共和党が有利になります。大統領選挙の選挙人の数も各州の下院議席数と一律2名の上院議席数の和で決められていますから、大統領選挙でも共和党が有利になります。 確かに、フロリダやアリゾナで人口が増えるのは年金生活者の移住が一つの要因で、この層の人々には年金制度を守るために連邦政府の過剰福祉に反対の立場から共和党支持者が多いはずです。しかし、南西部やフロリダは全米でも特にヒスパニック(中南米系)人口の増加が多い地域で、よく見ると、ヒスパニックが過半数を占めるカウンティでは民主党が強いことがお分かりになるでしょう。このままヒスパニックの流入が続けば、南部は共和党という法則自体が崩れないとも限りません。 ヒスパニックと失業率 不況が続く中、南部や西部の諸州でも失業率が上がり、メキシコ国境付近で凶悪犯罪が増えたことなど悪いことは全てヒスパニックの不法移民のせいにされがちです。こうした白人のヒスパニックに対する反感が右翼草の根運動「ティーパーティー」の活動を支え、世論の左右二極化がアメリカの政治を難しくしています。
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