閣議の序列と大統領の継承順位


ホワイトハウスの閣議

ご存じホワイトハウス

 ホワイトハウスの閣議には、正副大統領と連邦政府15省の長官に加え、大統領首席補佐官、環境保護庁長官、行政管理予算局長官、国家薬物取締政策局長官、米国通商代表の6閣僚がが参加していましたが、オバマ政権では米国国連大使が加わります。

 テーブルの中心には正副大統領が相対して座って、各省の長官は、それぞれの所管省が設立された年代順に従って着席するのが永年のしきたり。中でも、正副大統領のすぐ隣に座る国務長官、財務長官、国防長官、司法長官の4人は、特別えらい閣僚として儀礼上も何かにつけて別格扱いされているようです。

 大統領が死亡、辞任、罷免などの理由で欠けたり、一時的に職務遂行不能に陥った場合には、大統領権限が自動的に下位に委譲されるルールがあるのはご存知ですか?この規定により、これまでに9人の副大統領が大統領に昇格し、大統領が小手術を受けた際にも、2人の副大統領が短時間の代行を務めています。

 これまで、実際に副大統領以外が大統領権限を継承した事例はないのですが、仮に正副大統領が同時に政務不能になったら、下院議長が次の継承順位、上院暫定議長(名目的な議長の副大統領に代わる実質上の上院議長)は第3位、さらに国務長官以下各省の長官が席次順で権限を継承することになっています。心配し出したらきりがありません…正副大統領と上下院議長や閣僚が、テロや核攻撃で一時に全滅してはたいへんというのか、年に一度、大統領が議会で新年の所信表明する一般教書演説にさえ、閣僚のひとりは必ず居所を秘した上で欠席するのが慣例になっているそうです。


行政機関は15省


アメリカの省 英文名 (Department of) 日本政府

国務省

State

外務省

財務省

Treasury

財務省

国防省

Defence

防衛省

司法省

Justice

法務省

内務省

the Interior

農務省

Agriculture

農林水産省

商務省

Commerce

経済産業省

労働省

Labor

厚生労働省

保健福祉省

Health & Humana Services

厚生労働省

住宅都市開発省

Housing & Urban Development

国土交通省

運輸省

Transportation

国土交通省

エネルギー省

Energy

経済産業省

教育省

Education

文部科学省

退役軍人省

Veteran Affairs

国土安全保障省

Homeland Security

 日本の各省のトップは大臣ですが、アメリカの各省(Department)のトップはセクレタリー(Secretary)…日本では長官と訳されているので勘違いしそうですが、アメリカの国務長官は日本の外務大臣に対応する役職です。旧ソ連など社会主義国では、共産党の最高位を書記長(General Secretary)とか第一書記(First Secretary)と呼ぶことがありましたが、日本語の翻訳が異なるだけで英語では長官と同じです。もっとも、司法省の長官だけは例外で、アトーニー・ジェネラル(Attorney General)と呼ばれます。ご存知のようにアトーニーといえば弁護士さんですから「一番偉い法の番人」といった意味なのでしょう。

 日米の行政組織を比べると共通点も多いので、アメリカの各省の仕事を一からお聞きいただく必要はありません。特徴的な相違点をかいつまんでご説明しましょう。日本では、大蔵省が予算と税金を扱う財務省と金融を監督する金融庁に分割されましたが、アメリカの財務省は財政と金融を所管する官庁です。予算の取りまとめはホワイトハウス(大統領府)の行政予算管理局の役目のようですね。

 内務省という言葉で連想するのは、世界中の国にあって、しばしば治安維持を担当することも多い権力の強い官庁。実際、日本の総務省も、戦前の内務省が、戦後、警察部門を内閣府に移して自治省と改まり、近年の郵政民営化の流れで郵政省を吸収した由緒正しい省で、英語名は未だに内務通信省(Ministry of Internal Affairs and Communications)です。⇔が、アメリカの内務省はというと、全米の地勢調査や国立公園を含む国有地の管理という地味なお仕事が担当。「内務省」的なCIAはホワイトハウス直轄、FBIは法務省、沿岸警備隊や国境警備隊は国土安全保障省の所管です。

 国土安全保障省は、ご存知のように、2001年の同時多発テロを契機にブッシュ政権が新設したお役所…国境の人の移動を見張る官庁を全て集めてしまったので、法務省が所管していた移民局や財務省の税関、農務省の動植物検疫局も引っ越してきて、日米を行き来する日本人の私たちにとっては極めて身近な存在になっています。