1964年の黒人リンチ殺人の犯人が捕まりました
アメリカの公民権運動時代の未解決事件 ちょっと固い上に古くて暗い話で恐縮ですが、我慢してお読みください。43年前の東京オリンピックがあった年ですから、この私も、まだ高校1年生でした。1964年5月、19歳の黒人の少年たちがヒッチハイク中に誘拐され、暴行を受けた上に生きたままミシシッピー川に投げ捨てられました。重りをくくられて沈んでいたふたりの腐乱死体は、2ヵ月後に、3人の公民権運動家失踪暗殺事件を捜査中のFBIにより偶然発見されることになります。
Charles
Eddie MooreとHenry Hezekiah Deeのふたりを殺したのは、白人至上主義の団体クー・クラックス・クランのメンバーで当時は保安官補をしていたJames
Ford Sealeともう一人の白人男性でした。Sealeたちは、ミシシッピー州の南部Franklin
Countyのひなびた田舎町Roxieに広まった黒人回教徒が武装蜂起を計画しているという噂を信じてリンチ殺人に及んだものと見られています。(写真は、昔のクー・クラックス・クランのマークと儀式の様子です)
Sealeたちはいったん逮捕されますが、暗殺事件に忙しいFBIが地元当局の手に事件を引き渡してしまったのが問題になりました。陪席司法官が、簡易裁判でふたりを無罪放免してしまったのです。
2000年に、司法省の公民権局は、再びこの事件に日の光を当てることを決めました。これまで、Sealeは既に死んだものと伝えられていましたが、殺されたCharlesの兄のThomas
Mooreさん(63歳)とカナダ人の映画作者の地道な捜索が実り、当初の誘拐現場から目と鼻の先に隠れていたSealeを見つけ出しました。
当時のFBIの資料によれば、当局はSealeを殺人で告訴しています。でも、病気がちで71歳のSealeは「殺ったさ。でも、認めないよ。貴様らが立証しなければならんのさ」とうそぶいているのだそうです。
(以上は、1月25日レキシントン・ヘラルド・リーダーに掲載されたAP社の記事を参考にしました)
2005年にナチス戦犯のAribert
Heimがスペインで捕らえられ、第二次大戦がまだ終わり切っていないことに驚きましたが、今回のSealeの逮捕はアメリカの公民権運動時代に起きた惨劇の決着がまだ付いていないことをまざまざと教えてくれました。アメリカに暮らすからには、人種差別の廃止に取り組んだ人々の歴史を少し勉強しておいてはいかがでしょう。
と記事を書いているうちに、「Studio Be」という素晴らしいホームページを見つけてしまいました。これさえ読めば、誰でも公民権運動の専門家になれそうです。このホームページの管理人で元NHKドキュメンタリー・カメラマンの高野英二さんが住んでおられるミシシッピー州メリディアンの町は、今回のニュースにも関連する公民権運動家失踪暗殺事件(ミシシッピ州「フリーダム・サマー」活動家三人の暗殺
)の舞台フィラデルフィアから40分。また、レキシントンでは成績のよくて有名なロザ・パークス小学校の名前は、モンガメリ(アラバマ州)のバス・ボイコット事件の発端となった黒人女性の名前を借りたものです。プロが撮った深南部(ディープ・サウス)の香り漂う写真の数々とともに、是非お読みください。
高野英二さんのホームページ
公民権運動・史跡めぐり
アメリカの黒人たちの苦闘の場を訪ね、運動の歴史を振り返る
-
イントロダクション
-
ブラウン対教育委員会・最高裁判決(1954)
-
モンガメリ(アラバマ州)のバス・ボイコット
(1955)
-
リトル・ロック(アーカンソー州)セントラル高校の人種統合
(1957)
-
ニュー・オーリンズ(ルイジアナ州)のルビィ・ブリッジス(6歳)の入学
(1960)
-
ミシシッピ大学初の黒人学生ジェイムズ・メレディスの転入にともなう暴動
(1962)
-
ミシシッピ州NAACP代表メドガー・エヴァーズの暗殺
(1963)
-
バーミングハム(アラバマ州)の教会爆破事件
(1963)
-
ミシシッピ州「フリーダム・サマー」活動家三人の暗殺
(1964)
-
セルマ→モンガメリ(アラバマ州)選挙権獲得をめざす大行進
(1965)
-
ジェイムズ・メレディスの「恐怖への行進」(ミシシッピ州)(1966)
-
メンフィス(テネシー州)のキング牧師の暗殺
(1968)
-
終章・黒人たちの抱える問題
(2006)
|