自然災害シリーズ
アメリカの中西部・南部は「無」地震地帯?
アメリカで地震といえば、西海岸かハワイ、アラスカの話だと思っておられませんか?さほど心配する必要はなさそうですが、ケンタッキーの周辺にも地震の巣はあるのです。1811年の12月16日には2回、続いて1812年の1月23日と2月7日に、マグニチュード7から8クラスの地震が、ミズーリ、テネシー、ケンタッキー3州の境界、ミシシッピー川の流域を震源として起きたのだそうです。右の図は、当時の地震の大きさを、1994年にロスアンゼルスで起きたマグニチュード6.7の地震と比較して表わしたものです。赤は建物の損壊があった地域、黄色は揺れが感じられた地域を示しています。
そもそも、ミシシッピー川は7億5千万年前と2億年前に超大陸が分裂しかけた跡にできました。その後、分裂活動は収まったものの、今でも流域の地殻は弱いのだそうです。1811-12年の地震を起こした震源は、この時に壊滅的被害を蒙った町の名前を取って「ニューマドリッド地溝」と呼ばれています。地震の揺れでニューヨークやボストンの教会の鐘がなったとか、震源付近の「リールフット湖(写真)」はじめ多くの湖沼が、この時の地表の陥没でミシシッピー川が10〜24時間にわたり逆流、水が満たされてできたと語り継がれています。
地溝帯(下図の赤い部分)は、ミシシッピー川とオハイオ川が分岐するイリノイ州のカイロという町のあたりからアーカンソー州のマークト・トリー付近まで150マイル(250km)続いています。人体に感じる地震は1年に1回くらいしか起きないそうですが、不感地震も入れると1974年に広域観測体制を整えてからこれまでに4千回以上の地震が起きているのだそうです(薄赤で表示)。
大地震の周期は3〜5百年と言われていますから、私たちの生きている間は大丈夫そうですが、日系企業の拠点ベースで見ると、メンフィスは断層から50マイル圏、セントルイスやエバンスビルは200マイル圏にあります。
1990年12月といえば、ケンタッッキーのトヨタ工場が創業を始めてまだ3年経ったばかりの頃ですが、ある学者が大地震発生のリスクが高まったと発表したことから周辺の州はパニックになりました。私が銀行のレキシントン事務所に赴任したのは1995年の春でしたが、前任か前々任が社宅の地下室に非常用の水と食料を蓄えたのは、当時の大騒動のせいだったようです。
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