大雑把に言えば、アメリカ人の約25%がカトリック、プロテスタントの主流派と福音主義派もそれぞれ25%前後、5%の諸宗派を合わせて80%がキリスト教徒、5%がユダヤ教など他宗教の信者、15%は無宗教です。これまでは、プロテスタントやカトリックについて勉強してきましたが、最後にモルモン教と比較的身近に存在するキリスト教の諸宗派について調べてみたいと思います。
モルモン教(末日聖徒イエスキリスト教会)は、1827年、当時18歳のヴァージニア州の少年ジョセフ・スミス・ジュニアが、旧約、新約に続く、アメリカを舞台にした第3の聖書「モルモン書」を近所の丘で掘り出した事件から始まります。信者はキリスト教信者の迫害を避け、ソルトレーク冬季五輪で有名なユタに集団移住しますが、1890年に神のお告げで一夫多妻制を廃止するまでユタ州は合衆国に編入を認められませんでした。今でも70%の州民はモルモン教徒です。優秀なビジネスマンも多く私も一緒に仕事をしましたが、モルモン教徒は、飲酒、喫煙ばかりかコーヒーやお茶などカフェイン飲料を禁じているので、お付き合いしているうちにすぐ分かります。信者の若者には世界各地への布教活動を勧めているので、日本語を覚えて日本でタレントになった人も大勢います。
布教に熱心な点は「エホバの証人」も同じ…「ものみの塔(Watch
Tower)」という雑誌を持って二人一組で戸別訪問します。有名な「輸血拒否」は、旧約聖書でノアが箱舟で洪水を生き延びた場面で神様に「生き物を食べるのはよいが、血(=魂)が残っている肉を食べてはならない」と言われたことが根拠となっているのだそうです。偏見を助長するのは本稿の趣旨ではありませんが、ほかにも兵役や葬儀の一部儀礼を拒んだりすることから、世間から異端視される傾向があります。
アーミッシュは、中世風の地味な衣服を着て外出も馬車でお出かけという時代錯誤の生活をしています。スイスで生まれた元祖バプティスト(=形だけの幼児洗礼を否定し自分の意思で再洗礼を受ける)の流れを汲むドイツ系の子孫で、ペンシルバニアやオハイオに多く住んでいます。謙虚と平穏が美徳で、家でお祈りをするので教会はありません。電気など文明の利器を使わないのは、楽をして、村人が勤労により支え合う理想郷が失われないよう警戒してのことだとか...。ひっそりと暮らしているのですが、好奇心旺盛な観光客の餌食にされている村落もあるようです。
クエーカーはイギリス生まれのプロテスタント。アーミッシュほどではなくても質素な生活を尊ぶ人々で、シェーカーはキリストの再臨を信じる分派です。クエーカーもシェーカーも、身体を「振るわせる人」という意味で名付けられました。集団礼拝に神秘主義的な傾向が見られるそうです。シェーカー・タウンは、レキシントン近郊にもあります。質素、勤勉に加え、男女平等と独身主義がモットーの共同体です。家具はシェーカー教徒の伝統的なビジネスで、日本でも珍重されています。村は観光客に開放されていますから、お休みの日にでもお出かけください。ハロッズバーグ通(US65)を南下、山道を右に左にハンドルを切りながらケンタッキー川を渡り切ったあたり…博物館見学、お食事、家具作りショー、シェーカー音楽、ケンタッキー川の遊覧船がフルコースです。