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2009年1月15日(第31号)

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オバマ新大統領…21世紀のニューディールがんばって!!

  ルーズベルトは「最初の100日」に勝負を賭けた

 今年の2月12日はリンカーン大統領の生誕200周年。その3週間前に、黒人初の大統領が、リンカーンが大統領就任時に使った聖書に誓って、就任演説をするのだそうですから劇的です。

 4年前まで無名だったオバマ大統領…民主党全国大会で前座演説を務めて注目を集め、「ラジオ」のルーズベルト、「テレビ」のケネディーのように、「インターネット」という時のメディアに愛されて、瞬く間にトップに上りつめてしまいました。名演説を残した3人のカリスマ大統領にあやかって、元気のない世界経済を一挙に盛り上げてもらいたいものです。

 今回は、少し難しい経済の話ですが、オバマ新大統領への期待をこめてお読みください。

=========≪大恐慌≫=========

銀行前に列を作る人々

労働者と警官隊の衝突

 さて、「大恐慌」以来の大不況を抜け出すためには「ニューディール」以来の大事業が必要ですが、今回は80年前に何が起きたのか?大恐慌とルーズベルト大統領のニューディール政策について少し勉強してみましょう。大恐慌と今回の世界同時不況が起こる前の経済状況には、かなり類似性があります。

 当時は、世界的に農鉱産物の過剰生産が生じていました。今回の世界的なバブル・マネーを供給したのがゼロ金利政策の日本だったとすれば、当時の資金スポンサーは実力以上の相場で金を解禁したイギリスだったようです。ヨーロッパから流れ込んだお金がアメリカにあふれ、怪しい相場師が市場を動かし、怪しい会社が次々に設立され、銀行は投機資金をむやみに融資するありさまでした。

 1929年10月24日(Black Thursday)の株価暴落をきっかけにデフレ経済に突入しますが、銀行がつぶれ失業者が増えても、時のフーバー大統領(共和党)は事態を甘く見て放置します。古典経済学では、資本主義経済は市場原理によって自律的に回復すると考えられていたからです。さらに、翌年には国内農業保護のために高関税をかけて保護貿易に走り、世界経済は一挙に縮小してしまいました。

ダストボウル

 たまたま時を同じく1930年代には、ダストボウル(Dust Bowl=土ぼこりの嵐)が、アメリカ大平原地帯の農民をたびたび襲っていました。農地の乱開発と干ばつがもたらした災害でしたが、250万の農民が家と農地を捨てて各地に移住して行きます。1940年にピューリッツァー賞を受賞したスタインベックの小説「怒りの葡萄」は、オクラホマから苦難の末カリフォルニアにたどり着いた青年が、大恐慌でろくな仕事に付けず日雇い仕事をするうちに、労働組合活動に巻き込まれ殺人を犯してしまう物語です。

=========≪ニューディール政策≫=========

 ニューディールは、ルーズベルトが民主党の大統領候補指名受諾演説をしたときに使った言葉…「新規まき直し」と訳されることもありますが、トランプで札を配り直すのもニューディールです。現政府に忘れられた人々にも、もっと公平に国富が分かち与えられるチャンスを作りますから、私に投票してくださいというメッセージです。

 全く新しい言葉かというとそうでもなくて、

キャッチフレーズ 大統領
スクエア・ディール セオドア・ルーズベルト(共和党)
ニュー・フリーダム ウィルソン(民主党)
ニュー・ディール フランクリン・ルーズベルト(民主党)
フェア・ディール トルーマン(民主党)
ニュー・フロンティア ケネディー(民主党)

=========≪最初の百日間 (3/9〜6/16)≫=========

 アメリカには、ハネムーン期間(100-day honeymoon period)といって、議会が新大統領に最初の100日間は好意的に対応する慣習があります。ルーズベルト大統領は、与党民主党が圧勝した上下両院で、きっちり100日の間に13の法案を通してニューディール政策を実施に移しましたが、その道が平坦だったわけではありません。法案の多くは、その後のアメリカ経済の枠組みを作る革新的な役割を果たしましたが、当時としては「社会主義」的な政策として実業界を中心に猛烈な抵抗に会い、一部の法律は後に連邦最高裁で違憲と判断されてしまったほどです。

日付 法案 目的
3月 9日

緊急銀行法

閉鎖中の銀行再開
3月20日

節減法

公務員の給与15%カット(まもなく復元)
4月19日

民間自然保護部隊

植林や砂防ダム建設による雇用創出
5月12日

金本位制離脱

デフレ対策・貿易振興
5月18日

連邦緊急救済法

農業調整法

緊急農場抵当法

州・自治体の財政支援、公共事業推進

余剰農畜産物の買い上げ・生産調整

質流れ農場の返還

5月27日

テネシー川流域開発法

テネシー川流域開発公社設立

6月13日

証券法

住宅所有者金融法

証券取引委員会(SEC)の創設

個人住宅のローン支援

6月16日

全国産業復興法

グラス・スティーガル銀行法

農場信用法

労働条件の保障、ホワイトカラーの救済

銀行と証券会社の分離、預金の政府保証

農家のローン負担軽減

=========≪第二次ニューディール≫=========

 中間選挙で民主党が勝利したのを受け、1935年以降、第二次ニューディールとして、労働組合の支援、公共事業促進局の設立、失業補償を含む社会保障制度の創設などが進められました。1933年に25%だった失業率は1937年には14%まで改善しましたが、景気が急降下して1938年には再び19%まで悪化します。労働組合のストが多発しニューディール政策を批判する声が高まりますが、ほどなく始まった第二次世界大戦の軍需景気のおかげで1943年にほぼ完全雇用(失業率2%)を達成。さしもの大恐慌も、最終的に収束したのです。

=========≪戦後の経済政策≫=========

 政府が雇用を生み出すために惜しみなくお金を使う政策は、戦後、乱用されて日本を筆頭に各国が赤字財政に苦しむことになります。アメリカでは、80年代にレーガン大統領が「小さな政府」を旗印に登場したのですが、皮肉なことに、レーガン以降の共和党政権は急速に財政を悪化させ、実際に債務の削減に貢献したのはクリントン民主党政権だけだったのです。オバマ大統領はブッシュ政権のツケを支払うことから始めなければなりませんが、聡明で実行力のある方のようですから、いずれ財政の立て直しを図ってくれるのではないかと期待しています。

アメリカ連邦政府の財政赤字(単位:兆ドル)

 

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