アメリカ厚生省作業部会の新指針…過剰診療の弊害に警告?
マモグラム(乳房X線検診)開始年齢が40歳
⇒ 50歳
(遺伝的に特に心配がない)女性は50歳になったら1年おきにマモグラム(乳房X線検診)を受けましょう(74歳まで
2年に1回)というのが、アメリカの厚生省予防医学作業部会(U.S,
Preventive Services Task
Force)が決めた新しいガイドラインです。
マモグラム(イラスト) |
でも、この話…医療関係者はじめ多くの人々から抗議の声が上がっています。これまでのガイドラインは40歳以降(上限年齢なし)
1~2年に1回。たった7年前の2002年に、同じ作業部会が当時のマモグラム対象年齢50~69歳を大幅に拡張したばかりなのに、今回はほぼ昔の基準に戻すというのですから???
しかも、自分の胸の周りを指で押してしこりの有無を確認する自己検診も勧めない方がよいというから驚きです。
医療費を抑制する必要があるとしても、結果的に重症者が増えてしまったら本末転倒です。理由を調べてみると、背景には過剰診療の問題がありました。 そもそも乳がんには、進行が早いこわい乳がんと、進行が遅くて、場合によっては、一生ほっておいて差し支えない良性の乳がんがあるそうです。進行が早いがんの場合には1年に一度の検査でも救命できません…ところが、マモグラムや自己検診で何かが見つかると、がんでない何かでも進行の遅いがんでも何でもかんでも、すぐに精密検診=生体検査をしなさいと言われます。それが、予防医学作業部会のいう弊害(Harm)のようです。 実際、私の家内も、カルシウムの塊があるから念のために…と言われるままに生体検査を受けたのですが、局部麻酔で乳房に太い針のようなものを刺して切り取るのですから小手術。今でも、本当に必要だったのか首を傾げています。 同じように、男性の場合には、前立腺がんの疑いで生体検査を勧められるケースがあります。全く夫婦揃って素直すぎるのかもしれませんが、私の場合は尿に少量の出血が見られるというので前立腺の生体検査を受けました。全身麻酔ですから検査中は痛くありませんでしたが、尿道に検査用具をねじ込まれたのですから術後数日は違和感が残りました。
各年齢の女性が○年以内に乳がんになる確率
年齢 |
10年 |
20年 |
30年 |
30歳 |
0.44% |
1.86% |
4.15% |
40歳 |
1.44% |
3.75% |
6.83% |
50歳 |
2.39% |
5.57% |
8.62% |
60歳 |
3.40% |
6.65% |
8.59% |
予防医学作業部会は、マモグラムを10年続けることによって救える40歳代の乳がん死亡者は1904人に1人、50歳代では1339人に1人、60歳代では377人に1人…マモグラムは、全体で15%の乳がん死亡者を減らすことはできるが、40歳代のマモグラムについては弊害が大だから必要ないと結論付けたのです。 しかし、弊害の中味が何かしっかり説明されていません。「統計」上の結論にしては、弊害についての統計が添付されていません。私が患者なら「お金」と「時間」がかかっても「健康被害」さえないのなら、安心のために生体検査を受診するでしょう。
どこからが過剰診療なのかは、私たち患者に簡単に判断できません。安易な生体検査には害があるのかもしれませんし、お医者さんがビジネスでやっていることかもしれませんが、できることといえば、良心的な主治医を見つけて主治医に何でも相談に乗ってもらうことくらいです。 予防医学作業部会と同じアメリカ厚生省傘下の疾病予防管理センター(CDC)のホームページの方には、これまで通り40歳代でもマモグラムを受診するよう書かれています。保険会社も、予防医学作業部会の指針の変更で、マモグラムの保険適用条件を変更することはないそうです。 様々な記事を読んだ上で、結局、私の意見は変わりませんでした。私の周りにも、若くして乳がんになった方もおられますし、自己検診で乳がんを見つけた方もおられます。今後、予防医学作業部会の追加の研究発表がなければ、これまで通り女性は40歳代でも定期的にマモグラムを受診すべきで自己検診も続けるべきでしょう。
ただし、アメリカにも「過剰診療」の問題があるようですから、やたらに検査を勧めるお医者さんがいたら、念のため、別のお医者さんのセカンド・オピニオンを聞いてみてはいかがでしょう。
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