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アメリカ生活・e-ニュース

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2010年6月15日(第48号)

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日本では口蹄疫、アメリカではメキシコ湾の原油汚染

 事故はなぜ起きた?対策は?…動画アニメで解説

半潜水式可動石油掘削リグ

 日本で、宮崎県が和牛3頭の口蹄疫感染を公表し農水省に「口蹄疫防疫対策本部」が設置された4月20日、アメリカでは、ルイジアナ沖 66qで海底1500mを試掘していたBP(英国系石油企業)の石油掘削リグのディープウォーター・ホライズン号が爆発、126名の乗員のうち11名が行方不明になる事故が起きました。高圧のメタンガスが噴出して引火したものと見られています。火災は36時間続いて22日の朝にようやく鎮火しましたが、ディープウォーター・ホライズン号は沈没してしまったのです。

Deepwater Horizon

 BPは、当初、原油汚染のおそれはないと発表しましたが、24日に大量の原油が井戸から流出している事実を認め、その後も不誠実な対応が続いて、批判されています。

 オバマ大統領は5月2日に最初の現地入りをしましたが、時は遅すぎマスコミに非難されています。ハリケーン・カトリーナが去って1週間後にニューオリンズを訪れた2005年のブッシュ大統領の悪事例に学ぶところがなかったようです。5月10日に宮崎入りした赤松前農水相や6月1日に訪れて翌日退陣表明した鳩山前首相の対応に比べたら、はるかに迅速ですが…。


 以上、ここまではよくご存じの方も多いと思うのですが、事故の原因や対策となると、極めて専門的で、日本のマスコミはあまり詳しく報道していないようです。そこで、今回は、ユーチューブに投稿された動画を使って一目で理解できるように解説しました。環境や政治経済に関する情報は、今回は、敢えて割愛しています。

524日にNASAが撮影した航空写真

汚染被害による612日現在の禁漁区(⇒最新情報)


大きな地図で見る

 ディープウォーター・ホライズン号は、2001年に韓国の現代造船が建造した深海底油田掘削用の半潜水式可動石油掘削リグ(プラットフォーム)。爆発事故は、ミシシッピー・キャニオン(海底渓谷)の水深1500mの海底から調査抗を4000m掘り下げる作業の最終段階で起きました。

 今回のプロジェクトは、最初からトラブル続きでした。昨年10月に現地の掘削を始めた別のリグが、ハリケーンで損傷…ディープウォーター・ホライズン号は、今年の1月に、やむを得ず後を引き継いだのだそうです。BPは、採算の悪化を恐れて現場に無理な工期を押し付けましたが、坑内へのガスや泥の噴出などが相次ぎ工期は30日も遅れていたとも言われています。


防噴装置の故障

 重大な事故を起こすおそれのある機器には、必ず「フェイルセーフ」と呼ばれる最後の砦の安全装置が付いています。石油掘削の場合にも、海底の井戸とパイプを結ぶ部分に防噴装置(Blowout Preventer)が付いていて、今回のケースでも泥やガスの暴噴を防ぐことができるはずでした。今回の事故で防噴装置が働かなかった原因は解明されていませんが、アニメでは、パイプの軸が傾いていて、せん断ピストン(Shear Ram)がパイプを切断できなかったものと推定しています。


コンテナドーム(Container Dome)作戦

 中東の英語放送アルジャジーラのニュースをごらんください。アニメの前半では、石油掘削施設が沈没するとともにライザー(Riser)と呼ばれるパイプが折れて3ヶ所から原油が噴出する様子、後半では、現場一帯を巨大なドーム型コンテナ(容器)で覆いパイプ経由で原油を回収する作戦が紹介されています。漏斗(ジョウゴ)を逆さにひっくり返して使うイメージですね。

 一番小さな漏出現場に開いた穴は、5月5日までに海中ロボットを使って塞ぐことができました。

 コンテナドーム作戦は、7日から8日にかけて実施されましたが、メタンハイドレートの結晶がドーム頂点の開口部に詰まって、失敗に終わります。メタンハイドレートは、原油の含むメタンガスが冷たい水の分子と結合してできたものですが、原油より軽いために漏斗の首に付着して詰まってしまったのです。


シルクハット(Top Hat)作戦

 5月11日、失敗したコンテナドームに比べてはるかに小さいコンテナを、個別の破損箇所にかぶせる作戦を実施しましたが上手くいかず、代わりに、パイプを漏出箇所に、直接、挿管して若干の原油を回収しましたが、流出原油の総量に比べたら焼け石に水でした。


トップキル(Top Kill)作戦

 5月26日には、2本の細いパイプから防噴装置に泥を注入し、勢いが弱まったら、セメントで固めてしまう作戦を実施しましたが、失敗しました。


LMRPシルクハット作戦

 防噴装置上部(Lower Marine Riser Package)でパイプをきれいに切断し、断面にコンテナをかぶせて新たなパイプで原油を回収する作戦です。5月29日に開始しましたが、ダイヤモンドののこぎりがスタックし(動かなくなり)、やむを得ず、代わりにはさみロボット(Super Shears)を使って切断しましたが、断面がボロボロになってしまいました。6月3日には何とかコンテナをかぶせることに成功して原油回収が始まりましたが、結果的には、以前より原油の流出が増加したと疑う声も上がっています。


長期戦(リリーフ井戸=Relief Wells)

 結局、ただちに原油の流出を食い止める方策は尽きてしまったようです。原油が噴出し続けている井戸の付近で、救援用の井戸を掘り進め、救援用の井戸が問題の井戸に達したら、セメントや泥を流し込んで問題の井戸を塞ぐ作戦が進んでいます。1本目の井戸は5月2日、2本目は16日に掘り始めましたが、費用は1本に1億ドル、期間も3ヶ月かかると言われていますから、原油の流出は、このまま8月まで続くのでしょうか?


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