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2012年4月15日(第70号)


竜巻は地下室でも油断禁物・ペットの持ち帰り花粉に注意

 各地の学校で、銃の乱射や暴発事件が多発

 アメリカ生活を存分に楽しむには、現地マスコミの報道に接してアメリカ文化を理解することも大切な要素です。日本人コミュニティの外に出ないと、時には暮らしの中で重要な情報を聞き漏らしてしまうこともあります。

 このコーナーでは、毎月、現地マスコミの動画ニュースの中から日本人の皆さんに身近な話題を選んで、日本語解説付きでごらんいただきます。


3月16日…渦中の「ピンクスライム」入りひき肉の味は?

3月17日…フロリダ黒人少年射殺事件の911番通報テープ

4月 6日…オクラホマの無差別黒人連続銃撃事件で3人死亡

4月 3日…カリフォルニアの韓国系大学で乱射、7人死亡

4月 7日…バージニアビーチで海軍戦闘機がアパートに墜落


3月16日…渦中の「ピンクスライム」入りひき肉の味は?

 昔はドッグフードやクッキングオイルに加工されていた軟骨や脂身などのくず肉が、いつの間にか市販の70%のひき肉に混ぜ込まれていた…アメリカの世論をリードするABCワールドニュースのダイアン・ソイヤーが3月に報道してからは、「ピンクスライム」入りのひき肉を店頭から引き上げるスーパーやハンバーガー・チェーンが相次ぎ、全米が騒然となっています。

 「ピンクスライム」は、2001年に、アメリカの農務省が、アンモニアでO-157を殺菌する条件で食用に供することを認めた肉材です。カナダでは認められていません。当時の農務長官が、ピンクスライムを開発した大手製肉会社に天下りして17年間に120万ドルを蓄財したとも伝えられています。「ピンクスライム」の有無は、スーパーのひき肉のシールにも表示されていませんから、皆さんも気づかずに購入しておられたはず。

 生産者側は、「ピンクスライム」には、食品安全以外にも、安くて栄養バランスのよいひき肉を供給できるメリットがあると自己弁護しています。上の動画では、100%ビーフのひき肉と「ピンクスライム」入りひき肉の食べ比べをしていますが、100%ビーフの方がジューシーでおいしいそうです。「ピンクスライム」の栄養バランスがよいというのは、脂肪分が少なく、肥満を少し抑制することができるということなのでしょう。

 日本の雑誌で、「ピンクスライム」が学校給食に出されていると誤解されそうな翻訳記事を見かけましたが、学校のカフェテリアでハンバーガーを買わなければ皆さんのお子様の口に入ることはないですよね(生活習慣をトコトン知らないと、正確な翻訳は難しいものです)。私たちの子どもの場合、補習校には日本式のお弁当、現地校にはサンドイッチを持たせてあげていましたが、皆さんは、どうなさっておられますか?


3月17日…フロリダ黒人少年射殺事件の911番通報テープ

 ディズニーワールドで有名なフロリダ州オーランドの隣町サンフォードの団地(サブディビジョン)で、2月26日に団地パトロール員が、17歳の黒人少年を怪しんで射殺してしまう事件が起きました。現地警察が正当防衛を認め容疑者を逮捕しなかったので、目撃者から抗議が殺到し、警察は容疑者と目撃者からの911番(アメリカ110番)通報を公開しました。オバマ大統領も哀悼のコメントを述べ、容疑者もあらためて逮捕され、殺人罪で起訴される見通しになってきました。

 殺されたトレイボン少年は、マイアミで母親と暮らしていましたが、この日は、離婚してサンフォードに住んでいる父親の家に遊びに来ていたそうです。テレビでNBAのオールスターゲームを観戦していましたが、ハーフタイムの間に近所のコンビニにキャンディと飲み物を買いに出かけて帰って来る途中でした。雨が降っていたので、はおっていたパーカーのフードを深くかぶっていました。

 トレイボン少年を殺したジンマーマンは、保険代理店で働く28歳のサラリーマンで、ただひとり立候補してボランティアのパトロール員を熱心に務めていました。たった260戸の団地で、昨年1年間に17件の窃盗と1件の発砲事件が起き、50人の不審者が目撃され、402件の911番通報があったそうです。非居住者の侵入を防ぐゲート付きの団地でしたが、不況でローンが払えず低所得者に賃貸される家屋が増えた結果、住民構成も白人の割合が減り、23%がヒスパニックで20%が黒人となっていました。

 ジンマーマンはトレイボン少年を不審者と疑い、車で尾行しながら警察に通報しています。警察は、尾行を止めるようアドバイスしますが、ジンマーマンは聞き入れずに尾行を続け、(何かトラブルが起きて)トレイボン少年を射殺してしまいます。事件は、日本では、黒人に対する憎悪犯罪(Hate Crime)として報道されましたが、ジンマーマンは、母親がペルー系のヒスパニックで、黒人に偏見を持っていたとしても、少なくとも白人至上主義者ではなかったはずです。

 サンフォード警察は、2005年に警官OBの息子が駐車場を警備中に黒人を背後から銃撃して殺してしまった事件などで身内をかばった過去があり、もともと評判がよくありませんでした。今回の事件でも、ロクな取調べをせずにジンマーマンを放免したため、一部マスコミは、誇張して警察ぐるみの憎悪犯罪をにおわせる筋書きを書いたふしがあります。ジンマーマンの911番通報を最後まで通して聞いてみると、ジンマーマンは実は臆病で、素手の少年に対し咄嗟に引き金を引いてしまったのかと感じられます。

Self-Defense Laws 

Stand-Your-GroundCastleWeak/None

 以上が事件のあらましですが、根本的な問題は、むしろフロリダ州の正当防衛に関する法律にあるようです。

 もともと英米法には自分の城を自衛する権利を認める「城の原則(Castle Doctrine)」という考え方があり、アメリカでは、自宅や(場合によっては職場や車内で)銃器を使って身を守り、結果的に相手を死亡させても罪に問わない州が多かったのですが、2005年にフロリダ州は、正当防衛をさらに広範に認める「踏み止まれ(Stand Your Ground)」法を制定したのでした。

 「踏み止まれ」は、身の安全に脅威を感じた場合、逃げずに、その場に踏み止まって抵抗してかまわないとする考え方で、当時は、家庭内暴力に対抗する手段として支持されました。その後も、条文の表現に程度の差はありますが、「踏み止まれ」法を制定する州は増え続け、今では18州に上ります。全米ライフル協会が、強く働きかけています。

 その中でも、元祖フロリダ州の「踏み止まれ」法は甘く、相手が死亡しても正当防衛が認められれば裁判にもなりません。隣人間のトラブルや売春婦やタクシー運転手が客を殺した事件で正当防衛が認められたケースもあり、今回の事件を機に、早速、議論が再燃しています。


4月6日…オクラホマの無差別黒人連続銃撃事件で3人死亡

 オクラホマ州タルサで起きた無差別銃撃事件は、フロリダの黒人少年射殺事件と2月から各地で発生している乱射事件に触発されて起きたのかもしれません。4月6日…グッドフライデー(復活祭)の早朝1時から2時にかけ、黒人ばかり5人が銃撃され、うち3人が死亡しました。

 犯人は19歳のイングランドとルームメートで33歳のワッツ。犯行直前のイングランドのフェースブックには、(注)2年前に殺された父親への思いと殺した黒人の男に対する侮蔑の言葉が書き込まれているので、フロリダの事件と違い、オクラホマの事件は黒人に対する憎悪犯罪(Hate Crime)と断言してかまわないでしょう。

 しかし、これだけ明白な事情が分かっていても、警察は憎悪犯罪と認定するのは時期尚早と、慎重な発言を繰り返しています。オクラホマは死刑を認めている州で、しかも人口当たりの死刑執行が最も多い州です。殺人罪の量刑に「憎悪犯罪」が加算されると、死刑判決が下される可能性も高まるので、警察も拙速に断定するわけにもいかないようです。

 「憎悪犯罪」は合衆国の公民権法に規定されていますが、起訴には連邦司法長官の認証が必要なので、これまで実際に適用されたことはありません。しかし、アーカンソー、ジョージア、インディアナ、サウスカロライナ、ワイオミングを除く45州で、人種・民族と宗教に関する差別のほか、州によりけりですが、同性愛や身体障害に関する「憎悪犯罪」を定めています。 

(注) MediaITEの記事によれば、事件は極めて複雑です。かいつまんでいうと、イングランドの父親を殺した男は、イングランドの姉の家に押し入ろうとして、そのボーイフレンドに返り討ちに合い、その後、銃を取りに帰ってからイングランドの父親と外で遭遇し、口論の末、射殺したようです。男は、現在、強盗未遂や銃器不法所持の罪で服役していますが、殺人については、フロリダの事件でも問題視されている「踏み止まれ」法に基づき正当防衛と認められたようです。…強盗未遂犯の殺人が正当防衛というのは、(事実なら)いくら何でもおかしいのではないでしょうか。


4月3日…カリフォルニアの韓国系大学で乱射、7人死亡

 アメリカのマスコミは、人種偏見にかかわる報道に慎重なせいか、あるいは「外人」を区別する意識が乏しいせいか、ニュースの中に「韓国」という単語が出てきませんが、4月3日にサンフランシスコの対岸オークランドで起きた乱射事件は、韓国系の神父さんが学長を務める大学で、韓国系アメリカ人の元学生が起こしたものです。

 2007年4月にバージニア工科大学で33人が死亡した史上最悪の乱射事件以来、最大の犠牲者を出す事件となった上に、いずれの事件も犯人が韓国生まれだったので、韓国社会は、一時騒然としたようです。

 事件の報道も、韓国紙(中央日報)の方が詳しいようです。

<オークランド銃乱射事件>いじめが招いた惨事

<オークランド銃乱射事件>コ容疑者、離婚後に家賃滞納 結局…

<オークランド銃乱射事件>チョ・スンヒ事件から5年…また在米同胞社会が衝撃

米大学乱射 元韓国系学生が英語からかわれ恨み?

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4月6日…バージニアビーチで海軍戦闘機がアパートに墜落


University City, 12/8/2008 

 バージニア州ノーフォークは軍港の町。隣のバージニアビーチには、海軍の航空基地があります。

 4月7日、訓練中のF/A-18ホーネット戦闘機が、離陸直後に墜落してアパートを直撃してしまいましたが、乗員2名は脱出、住民も奇跡的に無事でした。原因は調査中ですが燃料が漏れて引火した可能性があります。

 2008年12月には、海兵隊の同型機がサンディエゴ郊外で墜落し、民家に落ちて韓国系の母子3人と韓国から生まれたばかりの孫に会いに来ていた祖母の計4人が犠牲になる事故がありました。

 F/A-18ホーネットは、運用を開始して32年を経過する戦闘機で、海軍の責任者によれば、今回の事故で安全性への信頼がゆらぐことはないそうです。日本の岩国基地にも配備されています。

 ところで、アメリカ本土(48州)には440の軍事基地があります。お調べになるなら、拡大地図一覧表をご利用ください。

略語: USA(陸軍)USN(海軍)USAF(空軍)USMC(海兵隊) USDOD(国防省)

AGS (Air Guard Station) AFB (Air Force Base)