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2013年2月15日(第80号)


「体罰」は全米のほとんどの学区で禁止されていますが、

 一部の州や私立校では気をつけましょう

 日本でスポーツ界の「体罰」問題が注目される中、先日のNHKニュースで、アメリカの学校の「体罰」に関する報道がありました(⇒アメリカでも論議 体罰を巡って)。一例として具体的に紹介されたのは、昨年の8月にテネシー州の公立校で、ピカピカの5歳の幼稚園児が、入学後わずか8日目にお仕置きされてお尻が腫れあがってしまった事件です。


テネシーの幼稚園児体罰事件


 NHKニュースにもあるように、アメリカの学校で行われる体罰は、パドルという平らな棒でお尻を叩くことに決まっていますが、パドルは、元をたどれば奴隷を従わせるために南部で使われていたお仕置き棒です。

 事件が起きたモーガン・カウンティの学区では、「体罰」は最後の手段で、ほどほどでなければならないと定められています。親に連絡もせず、立会人なしで過酷な「体罰」を下した女性校長は、児童虐待で逮捕されました。

 私たちは、テネシーの北隣のケンタッキー州レキシントンに住んでいますが、これまで身の回りで「体罰」に関する話を聞いたことがないので、少し驚きました。NHKニュースによれば、ケンタッキー州も含め全米19州で「体罰」が許されていて、体罰を受ける生徒の数は1年で20万人に上るというのです。

 そこで、公立校の体罰の実態を州別に調べてみると、州法では体罰を認めている州でも、都市部には体罰禁止学区が多いようです。ちょっと安心です。テネシー州の事件も、辺鄙な貧しい小村の出来事でした。

 しかし、全米の地域文化差は非常に大きく、簡単に一般論で片付けられないケースに出会うことが珍しくありません。体罰についても同様で、テキサス州では実に75%の学区が体罰を認めています。


フォートワースの女子高生体罰事件


 テキサス州ダラスと双子都市のフォートワース近郊にも、体罰許容学区があります。ここの公立校で昨年9月に起きた2つの女子高生体罰事件は、北米に住む日本人の皆さんにも他人事ではないと感じられることでしょう。

 スプリングタウン高校2年で最優等生のテイラーさんは、知らないうちに宿題をコピーされ、カンニングした級友にと連座して2日間の在校謹慎の処分を受けました。授業を休みたくないテイラーさんは、母親とともに謹慎処分を体罰に変えるよう願い出ましたが、パドルを持って現われたのは体罰担当の男性副校長。強く打たれて、お尻にあざと水ぶくれが残りました。「体重44キロの女の子に何てことするの」と母親は語っています。同じ高校に通うジャダさんも同じ副校長の体罰で、同じような目に合いました。

 スプリングタウンの学区では、女子生徒の体罰は女性が担当することに決まっていました。しかし、人手不足で、結果的に男性副校長が手を下すことになったようです。ルール違反について女生徒2人とご家族は直ちに抗議しましたが、教育委員会の回答は全く逆で話になりません。今後は、異性の手による体罰を認めるよう規則が変わることになってしまいました。

 過去にも、各地でパドルが折れてケガをする事件が起きたくらいで、体罰の厳しさは半端ではありません。万が一、皆さんのお子様が処罰の対象となってしまったときは、迷わず体罰は拒否して差し上げてください。


体罰を受けやすい生徒


 人権保護団体の調査によれば、気の毒なことに、障害児が体罰を受けるケースが多いそうです。体罰を受ける生徒の総数が少ない州ほど傾向が顕著に現われ、2006〜07年にたった16人しか体罰を受けていないアリゾナ州では、そのうち12人が障害児と見られています。

 黒人とヒスパニックに体罰を受ける生徒が多い点については、人種偏見の疑いも捨て切れませんが、保護者が子供への体罰を容認する傾向が高いせいでもあります。

 私立校の体罰については、ニュージャージーとアイオワの2州以外に禁止している州はありません。プロテスタント福音派の私立校に体罰を許容する学校が多いようです。

 カナダでは、州ごと地域ごとに扱いはマチマチで、公立校では体罰にムチが使用されることがありましたが、2004年に国の最高裁判所が全土で教師の体罰を禁止する判断をして、それ以降は全土で体罰がなくなりました。