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2013年5月15日(第83号)


銃規制強化に上院が「ノー」・危険な幼児用ライフル

 監禁事件の劇的な救出劇・スキャンダラスな裁判

 アメリカ生活を存分に楽しむなら、たまには現地マスコミの報道を通じて、ナマのアメリカの日常に触れてみませんか。このコーナーでは、毎月、現地マスコミの動画ニュースの中から皆さんのご興味をひきそうな話題を選んで、日本語解説付きでごらんいただきます。


4月17日 銃購入者の犯罪歴チェック厳格化に上院が「ノー」

5月  3日 5歳児が「マイファーストライフル」で2歳の妹を誤射

5月  7日 3女性長期監禁事件とクリーブランド警察の失態

2月25日 全米注視のスキャンダラスな裁判がついに結審


4月17日 銃購入者の犯罪歴チェック厳格化に上院が「ノー」

 オバマ大統領が、2日前に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件の追悼式に出席することが決まっていた4月17日、議会上院では、銃購入者の犯罪歴チェックを厳格化する法案の採決が行われました。

 犯罪歴チェックの厳格化に関する世論調査では、米国民の91%が賛成という結果が出ています。野党共和党が多数を占める下院はともかくも、与党民主党が多数を占める上院ではギリギリ可決されるものと期待されていましたが、法案はあっけなく否決されてしまいました。

 上院議員は全米50州から2名ずつ選出されているので総議員数は100。今は民主党と民主党に近い無所属が55名で、共和党が45名で、過半数は51名ですが、フィルバスターという議事進行を妨害する戦術を封じるためには、60名の賛成票が必要です。一部共和党議員は賛成に回りましたが、民主党議員4人が反対票を投じて賛否は54対46…6票の不足でした。

 アメリカでは、日本の政治のように個々の議員の投票を党議拘束する慣習がないので、党員数だけでは皮算用ができない難しさがあります。上院議長を務めるバイデン副大統領が法案の否決を宣言した途端に、傍聴席にいた銃撃事件の被害者から「恥知らず」との叫び声が上がりました。普段は動じない副大統領が、一瞬凍りついたように見えます。

 続いて、半自動小銃の市販を禁止する法案は40対60の大差で否決され、オバマ大統領が悲願とする「銃規制強化」の先行きは予断を許さなくなってきました。大統領が追悼式に出席する前の怒りの演説には、12月にコネチカット州の小学校で起きた乱射事件で命を落とした子供たちの遺族も伴われていました。


5月3日 5歳児が「マイファーストライフル」で2歳の妹を誤射

 ケンタッキーの田舎で5歳の坊やが2歳の妹を銃で誤射して殺してしまった事件。凶器となったのは、この坊やが誕生日プレゼントにもらった「マイファーストライフル(生まれて初めての自分のライフル銃)」のキャッチフレーズで知られる子供用の本物の銃でした。

 動画の中にも、子供がプレゼントの箱を開けて目を輝かせて喜んでいるシーンが出てきますが、ネットで調べてみると、わが家の近所の銃砲店でも1丁115ドルで売られています。まさか私たちが住むケンタッキー州レキシントンで、子供に買い与える親がいるとは思えないのですが…?

 事件が起きたバークスビルの町の人口は1750人。初期の開拓者がアパラチア山脈を越えテネシー州ナッシュビルに向かったカンバーランド川ルートから少し脇道に入った場所にあります。人口1万4千人のグラスゴー市に出るにも車で小1時間。同じアメリカでも、ニューヨークやロサンゼルスの住民とは全く違う暮らしを送る人たちがいます。


5月7日 3女性長期監禁事件とクリーブランド警察の失態

 クリーブランドで2002〜04年に3人の女性が誘拐され、10年にわたり監禁されていた事件。犯人はプエルトリコ系のスクールバス運転手アリエル・カストロ(52歳)でした。奥さんが、家庭内暴力を受けて1996年に4人の子を連れ家を出てから、二人の兄弟が同居するようになりましたが、二人は見て見ぬふりを貫いていたようです。

被害者(誘拐時の年齢)

犯行年月

警察の判断・犯人と被害者の関係

Michelle Knight (21) 2002年8月 誘拐でなく親権トラブルにより失踪と判断
Amanda Berry (16) 2003年4月 犯人の息子が働く店でアルバイト
Gina DeJesus (14) 2004年4月 中学で犯人の娘と友人関係

 事件の解決を遅らせたのは、警察のずさんな捜査です。最初に誘拐されたミシェルさんは、失踪当日に、子供の親権を州に取り上げられた件の調停のため裁判所に出頭することになっていました。警察は、成人女性が自らの意志で姿を消したものと決めつけて大がかりな捜査をせず、15ヶ月後には公開失踪者リストからも外してしまいました。

 アマンダさんとジーナさんは、バイト帰りと学校帰りに友だちの父親というので安心し、車で送ってもらうはずが、そのままカストロの家()に連れ込まれてしまいました。警察が失踪時の状況をしっかり把握していれば、カストロは早くから捜査線上に浮かびあがっていたはずです。

 3人は繰返し暴行され、妊娠すると殴ったり食事を減らしたりで流産を強いられました。ミシェルさんは、それが原因で耳が不自由になり、顔の整形手術が必要な状態だとも伝えられています。アマンダさんは2006年に女の子を出産し、カストロはこの子を女友達の子として紹介したこともあるそうです。

 3人は地下室と天井裏やガレージに鍵をかけて厳重に監禁されていましたが、10年の間には隣人が庭で裸の女性が這い回るのを見て通報するなど、警察は早期解決のチャンスを2〜3回逃しています。

 今回も、カストロが油断して外出したスキにアマンダさんが大声で助けを呼び、声を聞きつけた近所の人が玄関ドアをけ破って救出したもので、警察は残りの二人を保護してカストロと兄弟を逮捕しただけです。

 4年前にはイーストクリーブランドで「クリーブランドの絞殺屋」と呼ばれる11人の女性を誘拐し、暴行後に絞殺して死体を自宅()の裏庭に埋めていた連続殺人犯が捕まりました。

 クリーブランド市は、それを機に失踪者の捜索に真剣に取り組み始めたはずなのですが、結果的にはアマンダさんの「遺体」を探すためにバイト先の裏庭を掘り返すなど捜査は見当違いの方面で迷走していました。

 クリーブランドには鉄鋼業の衰退で町が荒れ果てた歴史があり、旧市街地には低所得者の多い犯罪多発地域があります。日本人の皆さんは、郊外の安全な地域に住んでおられることと思いますが、旧市街地を通りかかる際には十分お気を付けください。


2月25日 全米注視のスキャンダラスな裁判がついに結審

 アリゾナ州フェニックスの衛星都市メサの自宅で、セールスマンのトラビス・アレクサンダー(30歳)が殺されたのは、2008年6月のことでした。顔に銃弾を受け、のどを深く切り裂かれ、ほかに30に近い刺し傷を残して、血まみれのシャワールームに倒れていました。数々の状況証拠から、すぐに犯人はジョディ・アリアス(27歳)と分かり、ジョディは大陪審により第一級殺人罪で起訴されます。

 ジョディはカリフォルニア生まれですが、被害者のトラビスとは会社の同僚で、2006年9月にラスベガスの社員集会で出会い、11月にはトラビスの信仰するモルモン教に改宗してカップルになりました。その後、二人は別れたりくっついたりを繰り返しましたが、事件直前にトラビスは、ジョディがストーカーまがいの行動をとっていると友人にこぼしていたそうです。

 警察に拘束された日から、ジョディは奇矯な行動をして世間の注目を集めました。監視カメラに、逆立ちをしたり明るく歌を歌ったりする姿が写っていたのです。

 捜査段階からウソの限りを尽くし、最初は現場にいなかったと言い張っていましたが、洗濯機の中に捨てたカメラのメモリーカードから、事件当夜にトラビスに録られ、後で消しておいたはずのヌード写真が復元されて動かぬ証拠になりました。

 次に、二人組の暴漢が襲ってきてトラビスを殺したというストーリーを展開しますが、これにも無理があります。裁判では、ついに正当防衛でトラビスを殺したので無罪という主張に切り替わります。

 裁判は今年の1月に始まりましたが、以前の派手なブロンドの髪をダークブラウンに染め変え、地味なメガネをかけて、陪審員に対し、冤罪で捕えられた気の毒な被告の役を演じようとしました。

 2月には、正当防衛を立証するために記録破りの18日間に及ぶ証言を行い、その中でトラビスとの過激な性行為を詳述したために、事件の核心はポルノ小説じみた小道に迷い込んでしまいました。上の動画はその頃のABCニュースで、ニュース番組にもかかわらず「お子様の視聴に注意」と呼びかけています。

 5月8日、陪審は15時間の審議の末にジョディの第一級殺人罪を認め、5月15日に刑が決まることになっています。アリゾナ州の最高刑は死刑です。ジョディは、終身刑より死刑がマシと言っているようです。