就寝中に床が抜けて落下、リゾートマンションが崩壊
シンクホール(隠れ鍾乳洞)はフロリダの脅威
8月5日未明
にフロリダのオーランド近郊で地面が陥没し、リゾートマンションが崩壊する事件が起きました。2月28日には、タンパ近郊で就寝中の男性が家ごと地中に飲み込まれて行方不明となる事故があったばかりです。
いずれも、シンクホール(Sinkhole)という地下の空洞が、突然、崩れて起きた自然災害。この記事では、2つの事故の経緯とシンクホールができやすい地域や成因について説明します。
宿泊客20名は避難して全員無事
ディズニーワールドからわずか10マイル(16q)の場所にあるサマーベイ・リゾート(航空写真)。プールやテニスコート、レストランやバーなど施設の外に出なくても、休暇をくつろいで過ごせる素敵なリゾートですね。分譲制ですが、短期レンタルの一般観光客も泊まっていたかもしれません。
事故の兆候があったのは、4日(日曜日)の午後10時頃。宿泊客から、部屋の窓がポンッと音を立てて外れたという報告が立て続けにあり、警備員は宿泊客に避難指示を出します。しかし、まもなく建物には車でもぶつかってきたような衝撃が走り、停電。寝入りばなの宿泊客もあわてて逃げ出しましたが、中にはドアが壊れて部屋に閉じ込められ、窓を割って脱出する子供連れの夫婦もいたそうです。
午前3時には、幅15mのシンクホールに24部屋の建物1棟がすっかり飲み込まれ、3階建てが2階建ての高さになっていました。隣接の建物の宿泊客も避難し、リゾートのガスの元栓も閉じられました。リゾートが建設された15年前の検査で、シンクホールは見つからなかったのだそうです。
寝室ごと地中に飲み込まれ行方不明
半年前には、今回の事故が起きたリゾートから直線距離で50マイル(80q)南西のタンパ近郊で、36歳の男性が真夜中に寝室ごと落下、家具とともにシンクホールに飲み込まれてしまう事故がありました。
シンクホールが寝室の真下にあり一部屋だけ床が抜けて落下したようで、家の外見には全く変化がなく悲惨な事故が起きた現場とは信じられません。隣室で寝ていた兄弟が男性の悲鳴を聞き、助けようとしましたがなすすべがなく、レスキュー隊も男性の行方を探知できず、二次災害のおそれから捜索は早々に打ち切られました。
シンクホールの直径は7〜10mで、深さはおそらく10m。生き埋めになったら、長くは生きていられません。その後も拡大し続けているようなので、隣家の住民も緊急避難を強いられました。危険な状況なので、身の回りの物を持ち出す時間も20分に制限されるものものしさです。
炭酸が石灰質の岩盤を浸食
シンクホールは、石灰質の岩盤が浸食されて、中に鍾乳洞ができるのがそもそもの原因です。
岩盤の隙間には、表土が崩れ落ちていきますが、その分、表土層には空洞ができてしまいます。
表土層が薄いか、厚くても砂質土なら、表土が徐々に凹むだけで済みますが、表土層が10m以上で粘土質の場合は空洞が拡大して一気に崩れ、今回のような大事故が起きることがあります。
全米本土の大半の地域には過去に海底に沈んだ歴史があり、サンゴ礁がもとでできた石灰岩層や海水が蒸発してできた岩塩層など浸食されやすい岩盤はいたるところにありますが、セントラルフロリダほどシンクホールが多い場所はほかにありません。フロリダ半島は、アフリカと南米が北米から離れていくときに残した大陸の切れ端で、全米でも最後に陸地になった場所です。
人災で起きるシンクホール事故
フロリダに次いでシンクホールが多いのは、ペンシルバニア、ケンタッキー、テネシー、アラバマなどアパラチア山脈西麓の諸州とミズーリ州やテキサス州です。近所に鍾乳洞があれば、シンクホールもあるはずです。
それでは、その他の州は大丈夫かというと決して油断できません。都市のインフラの関連で、人災によるシンクホール事故も起きています。7月3日には、オハイオ州トレドで車を運転していた女性が直径10mの穴に落ちました。水道管からの水漏れで、地下に空洞ができたと見られています。
シカゴでも、4月15日に豪雨が原因で水道管が破裂し、車3台が落ちる事故がありました。サンフランシスコから100マイル(160q)北のレイク・カウンティでは、原因不明の湧水でシンクホールができ次々に家が壊れ、住民は避難しています。
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