海外赴任、留学、国際結婚…北米に住む日本人の皆さんのアメリカ生活をゆたかにするメールマガジンです。四季折々のタイムリーな話題や各地のお買物や観光の情報をお届けします。検索ボタンで姉妹サイト「アメリカ生活・e-百科」のワード検索も一緒にできます。

発行者: KJBusiness Consulting, LLC  電話:(859) 223-6449 Eメール:info@jlifeus.com  HP:www.jlifeus.com

2013年11月15日(第89号)

21年前の服部君射殺事件に似た事件が続発

 事故や勘違いがもとで見知らぬ家を訪ね受難

 1992年10月、ルイジアナ州バトンルージュで、留学中の服部剛丈君がホームステイ先の息子さんにハロウィーンパーティに誘われ、間違えて立ち寄った家の玄関先で撃たれて亡くなった事件がありました。その後、服部君のご両親がアメリカ社会に、銃規制の必要性を訴え続けていらしたことはご存じの方も多いに違いありません。

 日本では、最近もフジテレビの「奇跡体験!アンビリバボー」で事件があらためて紹介されたようです。アメリカ社会の受け止め方については、約20年前に録画したディスカバリー・チャンネルの「ジャスティス・ファイル」の動画(@AB)をYouTubeに投稿されている方がおられました。

 実は、11月2日にデトロイトで状況が似た事件が起き、皆さんに詳しい事情をお伝えしようと調べてみると、今年に入って同じような事件がバージニアやジョージアでも起きていたので驚きました。

 機会あるごとにご説明していますが、アメリカでは州によって正当防衛を認める基準が違います。全米に注目された昨年の黒人少年射殺事件では、フロリダ州が家の外でも素手の相手に銃器で対抗できるほど正当防衛に寛大なことを教わりました。以下の3つの事件でも、その点に焦点を当てて説明したいと考えています。


深夜の事故…携帯使用不能で近隣の家に助けを求め、


(動画の冒頭にABCの広告が流れます)

 11月2日未明の2時半頃、破産申請中のデトロイト市と境界を接する白人住宅街ディアボーンハイツ(ストリートビュー)の家の玄関先で、19歳の黒人女性が散弾銃で顔を撃たれて即死しました。詳しい事情は分かりませんが、レニーシャさんは事故で車が動かなくなり、間が悪いことに携帯電話も使用不能…やむを得ず近隣の家に助けを求めて立ち寄ったものと考えられています。

 女性を射殺したのは54歳の男性で氏名は公表されていません。警察には、誰かが家に押し入ろうとしているものと思い銃を向けたところ暴発してしまったと説明しているようです。レニーシャさんの家族や黒人の市民団体は、人種差別による殺人として告発しようとしていますが、今のところ男性は拘束されていません。

 2006年まで、ミシガン州法では、自宅の敷地でも、屋外で襲われた場合は「相手に反撃せず逃げる」ことが優先と決まっていました。しかし、全米ライフル協会のロビー活動が実り、今では敷地内なら「逃げずに反撃する」ことが許されることになっています。


酔った少年…自宅と間違えて隣家に「帰宅」し、


(動画の冒頭にWUSAの広告が流れます)

 3月17日の事件も未明の2時半頃でした。ワシントンDC郊外(バージニア州)の高級住宅地で、16歳の少年が2軒先の隣家に侵入し、住人に射殺されてしまったのです。少年の一家は最近越してきたばかりで、周囲には外見がよく似た住宅が立ち並んでいました。

 少年は、前日の土曜の夜にこっそり家を抜け出していました。帰宅しようと友人に自宅裏(ストリートビュー)まで車で送ってもらったのですが、(未成年にもかかわらず)パーティで酒を飲んでいたので、塀を乗り越えて違う家に侵入してしまったようです。

 バージニア州は、自宅の屋内といえども安易に正当防衛を認めていない州ですが、深夜に窓を破って誰かが侵入し、叫んで制止しても聞かずに2階に上ってきたとなれば、もう過剰防衛の責任は問えないでしょう。

 少年は隣人の警告を父親に叱られている声と思い込んでいたのではないか。自宅と同じ造りの階段を上って自分の部屋で休もうとしていたのではないか。…と推測し、少年の両親は会見で「ご近所を許す」と発言しています(Foxニュース)。責めるとすれば「銃社会」を支えてきた全米ライフル協会を責めるしかないような気の毒な事件でした。


車で友人をピックアップ…GPS表示が誤っていて、


 1月29日(土)午後10時45分、場所はアトランタ北東郊外のリルバーン。林の中の一軒家のドライブウェー(ストリートビュー)で、コロンビア生まれで22歳のディアス青年が撃たれて亡くなりました。ディアスは友人をピックアップしてアイススケートに行く途中でしたが、ナビのGPS表示が誤っていたために、キューバ系で69歳の年金生活者セーラーズの家に迷い込んでしまいました。

 セーラーズは外に出ていったん車の影を確かめ、家に戻って再び22口径のリボルバーを手に出てきました。ディアスは3人の同乗者と車に乗ったままでしたが、最初の威嚇射撃に驚き逃げようとしていたのに、間に合わず側頭部を撃たれました。セーラーズの方は、ディアスが車を急発進してセーラーズを轢こうとしたので撃ったと言い訳していましたが、故意による殺人の容疑で逮捕されています。

 ジョージアは、自宅邸内といえども相手が凶悪でなければ正当防衛を認めない州でしたが、2006年に、たとえ公共の場でも逃げずに銃器で反撃してかまわないとする法が成立しました。しかし、法制定後は正当防衛による殺人事件が顕著に増えており、昨年フロリダで起きた黒人少年射殺事件を機に、法を撤廃する運動が盛り上がっています。