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2016年12月15日 (第125号)

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家 事

お 料 理

 知っていますか?…名前は似ていても、

 有機食品(オーガニック)と自然食品(ナチュラル)は大違い

USDA Organic Mark

 私たちが住むケンタッキー州レキシントンのような地方都市にも、近頃は有機食品(オーガニック)や自然食品(ナチュラル)など品質の高い食品を専門に売るスーパーが増えてきました。

 日本の高級スーパーではまずあり得ないことですが、中には見るからに新鮮な野菜が、一般スーパーと比べても安い値段で売られていたりします。

===== 全米有機プログラム =====

 アメリカには全米有機プログラム(National Organic Program)という制度があり、有機食品からトイレタリー用品や衣料等まで有機製品にはUSDA(米国農務省)のオーガニック・マークがついています。

 プログラムに参加する国内の事業の数も、2014年に14,093件だったのが2015年には19,474件と1年で4割近く伸びており、今度の有機食品ブームは本物かもしれません。海外の事業も合わせると27,814件です。

 無許可でマークをつけるのはもちろん、単に"Organic"と表示するだけでも違法で、マーク掲載は有機成分を95%以上含む場合に限って認められ、70%以上なら一部有機成分を明示した上で"Made with Organic"と書くことができると厳格に定められています。

牛肉の品質を示すマーク

 USDA(米国農務省)のマークには右のような牛肉の品質を示すマークもありますが、有機食品と混同しないでください。デザインも統一されていません。プライムは霜降りが多い若牛の肉で、以下 チョイス−セレクト−標準の牛肉の順でランクが下がります。

===== 有機食品(Organic)とは =====

 ところで、有機食品(オーガニック)と自然食品(オールナチュラル)には大きな違いがあります。

 有機食品は、● 合成殺虫剤 不使用 (No Synthetic Pesticides)

● 合成肥料 不使用 (No Synthetic Fertilizers)…一部例外あり

● 放射線照射殺菌 不使用 (No Food Irradiation)

● 合成肥育ホルモン 不使用 (No Synthetic Growth Hormones in Livestock)

● 抗生物質 不使用 (No Antibiotics in Livestock)

● 遺伝子組替え有機体 不使用 (No Genetically Modified Organisms)

 で、家畜は自生の牧草を食べることができる衛生的な環境で育てられることが条件です。

===== 自然食品(All Natural/100% Natural)とは =====

All Natural/100% Natural

 ところが、自然食品の表示については、USDA(米国農務省)が単にガイドラインを示しているだけで、栄養面や健康面のメリットには一切考慮しないとわざわざ言明している程度の軽い扱いです。

 特定のマークもなく、生産者が思い思いに左図のようなマークを表示しています。

 つまり、自然食品は、● 着色料 無添加 (No Added Color)

● 人工フレーバー 無添加 (No Artificial Flavor)

● 防腐剤などその他化学合成剤 無添加 (No Synthetic Substances)

 であれば十分で、有機食品と違い、作物の栽培に化学肥料や農薬が使われようと、家畜の飼料に肥育ホルモンや抗生物質が使われようと、殺菌に放射線照射が行われようと問題になりません。例えば牛肉の場合は、どんなウシから切り取った肉であれ、生肉ならば無条件にナチュラルす。

 2010年には、オールナチュラルが売り物のアイスクリームメーカーベン&ジェリーが、虚偽表示で消費者団体から訴えられる事件が起きました。53種類の同社製品のうち48種類に、 アルカリ化したココアや合成バニリン等々化学的に処理した諸成分が含まれているというクレームでした。

 しかし、ココアのアルカリ化はチョコレート加工の基本技法で、バニリンもバニラなどに含まれ自然界に存在する有機物です。したがってアイスクリームの諸成分はナチュラル社会通念に大きく外れるものではないという主張が認められ、ベン&ジェリーは2014年に勝訴。3年余り自粛していたオールナチュラルの表示を復活しました。それほど自然食品の定義は曖昧です。

===== 非遺伝子組換え食品(Non-GMO/GMO Free)とは =====

Non GMO/GMO Free

 現在、日米で安全性が認められている遺伝子組換え作物は、ジャガイモ、大豆、トウモロコシ、テンサイ、ナタネ、綿、アルファルファ、パパイヤの8種で、そのほかアメリカだけで認めている作物に、ズッキーニ、北極リンゴ黄色首曲がりカボチャ(スカッシュ)の3種があります。

 しかし、成分に上記の遺伝子組換え作物を含まなければ、非遺伝子組換え食品と名乗れるかといえば、話はそれほど簡単ではありません。ほかに、遺伝子組換えの食品添加物も含まないこと、さらに、遺伝子組換え作物や食品添加物を含む飼料で育った家畜や養殖魚の肉や乳成分が、対象食品に含まれていないことが必要です。

 食品によっては、全ての条件を厳格にチェックするのは極めて困難です。Non-GMOマークの中にも当てにならない表示があるかもしれませんが、その中で、非遺伝子組換え食品プロジェクト(Non-GMO Project)など大手のNPO法人が授与するマークならば信用してもよいのではないでしょうか。

===== 動物愛護畜産認証(Cretified Humane)とは =====

 NPOが授与するマークならば、ほかに動物愛護農場畜産認定プログラム(Certified Humane Farm Animal Care Program)の動物愛護畜産処理認証(Certified Humane Raise & Handled)マークもあります。

 そもそもは、家畜の誕生から屠殺に至るまで、生産者が愛情を込めて育てる牧畜を推進する運動で、家畜は健全な環境で畜舎に押し込めず自由に動き回れるようでなければいけません。肥育ホルモンや抗生物質配合の飼料などはもってのほかで、屑肉など動物性成分を加えることも禁じていますから、USDA(米国農務省)のオーガニック・マークより厳しい基準なのかもしれません。肉処理業者にも長距離輸送を避け家畜に無用な苦痛を与えない配慮が求められます。 

===== 持続可能水産物認証(Certified Sustainable Seafood)とは =====

 水産物についても、養殖された魚介類には肥育ホルモンや抗生物質が与えられたり、PCBなど環境汚染物質が含まれたりしていて危険だという議論があります。

 そこで健康志向の強い人々は天然の魚介類を選びますが、そうした人々は海洋環境の保全にも関心の高く、得てして水産資源の枯渇についても懸念しています。そのために1997年に海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)が設立され、持続可能水産物認証(Certified Sustainable Seafood)ラベルができました。

 また、2010年には水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が設立され、養殖魚の食の安全を保証する養殖責任認証(Certified Farmed Responsibility)ラベルができました。個別の魚介類について細かい基準を定め抗生物質や遺伝子組換え飼料の使用もゼロではありませんが、量的に厳しく制限しています。