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2017年3月15日 (第127号)

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気 候

自 然

 豪雪と豪雨で2012年来の大干ばつも一服…カリフォルニア

 北ではダム決壊の危機、南でも相次ぐ道路陥没

 今年の冬は、大干ばつに悩んでいたカリフォルニアに干天の慈雨」を恵むどころか、各地で大災害を引き起こしました。昨年12月から2月にかけて豪雪と豪雨をもたらしたのはパイナップル急行(Pineapple Express)…ハワイ周辺で発生し西海岸に達する暖かく湿った大気の流れ(Atmospheric River)が、山脈に衝突して雪や雨を降らせる気象現象です。

===== パイナップル急行という名の大気流 =====

 このところ北東大西洋に高気圧が居座り続ける冬が続いていたのですが、今冬は7~10日ごとに低気圧と入れ替わり、その都度ジェット気流が南を迂回して、下の画像や動画のようにカリフォルニアを直撃しました。

Animation of an AR event in January 2017 (Credit: NOAA/ESRL/PSD)
2017年1月2~9日 2017年2月1~20日

===== シエラネバダ山脈に積雪 =====

 おかげで1月にはシエラネバダ山脈に6mを超える積雪があり、2015年には平年比でたったの6%と危機的レベルに達していた雪の深さも、積もりに積もって一気に平年比177%と劇的に回復しました。2月1日現在で積雪の記録を比較すると、実に1995年以来22年ぶりの深さです。下の航空写真をごらんください。

===== 地下水の回復には時間 =====

 豪雨による各地の貯水池の水量回復と今後期待される雪解けで、カリフォルニアの大干ばつ(2015年4月のe-ニュース第106号)もようやく一服です。農業用に過剰消費してきた地下水の回復には何年も時が必要ですが、2年続いた全州レベルの取水制限はまもなく緩和されることでしょう。

カリフォルニア大干ばつ 
2011年3月 2012年3月 2013年3月 2014年3月 (2014年8月) 2015年3月
(2015年12月) 2016年3月 (2016年5月) (2017年1月) (2017年2月) 2016年3月

D0 異常乾燥

干ばつが始まるおそれ…作物の成長鈍化、山火事のリスク増大

D1 干ばつ

一部の作物に被害、山火事のリスクが高く、水源のレベルが低下

D2 深刻な干ばつ

多くの作物に被害、山火事のリスクが非常に高く、水不足が拡がる

D3 極めて深刻な干ばつ

普遍的に作物に大被害、山火事のリスクが極めて高く、節水規制が必要

D4 滅多にない干ばつ

全域で滅多にない作物の被害と山火事のリスク、水不足は非常事態

 2011年3月に全州で干ばつがなかったのは、前年末に大きなパイナップル急行が南カリフォルニアを中心に襲っていたからです。

 今回の干ばつは2014年8月に最悪でしたが、その年12月にパイナップル急行が来た北カリフォルニアだけは多少改善しました。

 2015~16年の冬はシエラネバダ山脈に少し雪が積もりましたが、本格的な回復には程遠い状況。今年1~2月の豪雪と豪雨で435mmの降水量を得て深刻な干ばつの地域が解消しました。カリフォルニアの干ばつとパイナップル急行には、特別に深い関係があるのですね。

===== 豪雨・洪水と豪雪の動画 =====

 その間、サンノゼやサクラメント、ロサンゼルスやサンディエゴなど大都市の周辺も含め、カリフォルニア州の全域で大水害が起きました。以下の動画はほんの一部に過ぎませんが、地図で場所を特定しながら各地の水害の様子をごらんください。日付は、動画がYouTubeに投稿された日付です。


 今年最初のパイナップル急行はシエラネバダ山脈に120cmの雪を残して東進し、南東部に珍しい10cmもの積雪をもたらしましたが、この動画は第二波です。サンフランシスコ湾の北(ノースベイ)ではロシア川の氾濫など各地で洪水が発生しました。高速道路 I-80もタホ湖付近の激しい降雪で通行止め。サンフランシスコの南のサンタクルーズ・カウンティではがけ崩れ


 州都サクラメントは、北カリフォルニアの河川が合流してサンフランシスコ湾に注ぐ位置にあります。カリフォルニア・オレゴン・ネバダ3州で起きた1862年大洪水(Great Floods of 1862)の際には、45日も雨が降り続きダウンタウンが水没しました。しかし、1930年代に放水路と氾濫原が整備され、今回もダウンタウンは無事守られたようです。


 オロビルダムは堤高が230mと全米で最も背の高いダムです。雨や融雪で水量が増し、ダムは2月初めに主放水路で放水を開始していましたが、周辺では2月6~10日に330mmの雨が降り、7日にコンクリート製の放水路が中途で大きく損壊し、激流が隣接地を削って流れ下る事態になりました。

豪雨前のダム

主放水路(2月11日)

緊急放水路(2月12日)

豪雨後の放水路

 やむを得ずダムの放水量を減らしましたが、水量は増す一方…11日には水が堰を超え、普段は駐車場として使われている緊急放水路の斜面を流れ下るようになります。しかし、表面を舗装していない緊急放水路の浸食は激しく、上部がえぐられてダム全体が決壊する懸念から12日に下流の住民18万8千人に緊急避難しました。


 ベリエッサ湖は無事でしたが、漏斗状の排水口から大量の水が吸い込まれる珍しい光景が見られました。


 アンダーソン湖自体の放水は問題ありませんでしたが、放水先の河川が下流のサンノゼ市内で氾濫しました。


 ロサンゼルスからサンディエゴ方面まで、広い範囲で水害が発生しました。


 ロサンゼルス周辺では豪雨で道路が相次いで陥没し、消防車やSUVがシンクホール(陥没穴)に落ちました。