開花期に生魚が腐ったような臭いを発するのがタマにキズ
ハナミズキとともに北米に春を告げるマメナシの花
マメナシの街路樹 |
ここ数年前からの習慣ですが、お天気が悪くない日には、健康維持のために毎朝30分の散歩を欠かさないようになりました。すると面白いもので、車で遠目に眺めていた頃にはあまり気に留めていなかった街路樹や咲き誇る花の種類にも詳しくなってきます。
マメナシの花(遠景) |
昨年の春も散歩中に植物観察をしていて、私たちが長年ハナミズキ(Dogwood)と思い込んでいた街路樹が、実はマメナシ(Callery
Pear/Bradford Pear)と呼ばれる全く別の種類の木だったことに初めて気がつきました。
そのつもりで確かめてみると、ご近所のドッグウッド・トレース(ハナミズキの小道)という名のサブディビジョンを一面に飾る並木もマメナシでした。言い訳するつもりはありませんが、私たちが勘違いしてしまったのも無理はありません。
マメナシは、初春にハナミズキより少し早く咲き始めます。サクラやウメやモモと同じバラ科の植物ですから花も美しく、すぐに散らずに長く咲いているので理想的な街路樹のようですが、開花期に生魚が腐ったような臭いを発するのがタマにキズです。
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侵略的外来種? =====
また専門家によれば、マメナシの原産地は東アジア(日本でも東海地方に自生)ですが、環境適応力が強い特徴が逆に災いし、北米の生態系を乱す侵略的外来種として懸念される側面があります。下の動画をごらんください。マメナシが街路樹でいる限りは問題ないのですが、火事が飛び火するように自然林に転移すると、オーク(ナラやカシ)やヒッコリーなどの北米自生種を押しのけて繁殖し、次第に木々の果実を餌に食べる野鳥の種類も変えてしまうのだそうです。
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ハナミズキの花 =====
本物のハナミズキはマメナシよりずっと小ぶりで、枝も縦より横に伸び街路樹としては少し不向きかもしれません。マメナシの花も、サクラやモモやウメの花も花びらは5枚で枝先に群がって咲きますが、ハナミズキの花は一輪ごとに枝分かれしていて、花びらも4枚ですから区別は簡単につきます…ただし正確にはハナミズキの花びらに見えるのはつぼみを覆う葉が進化したもので、小さくておしべやめしべにしか見えない塊が本当の花々なのだそうです。
ハナミズキ |
ハナミズキの花 |
ハナミズキの花の中心部 |
下の動画をごらんください。日差しの強い場所では、根元をマルチなどで保湿しないと枯れてしまいます。
北はメイン州やカナダのオンタリオ州からカンザス東部まで、南は北部フロリダからテキサスやさらにメキシコの北東部まで分布。各地の人々に愛され、ノースカロライナでは州花、ミズーリでは州木、バージニアでは州花+州木に指定されています。
ワシントンDCのポトマック河畔のサクラ(ソメイヨシノ)は、皆さんもご存じの通り1912年に当時の東京市から寄贈されたのが始まりですが、ハナミズキはその「お返し」に選ばれて日本に渡ったくらいですから、正にアメリカ東部の春を象徴する花といえましょう。
ヤマボウシ |
英語でドッグウッドというのは、昔、皮膚病のイヌをハナミズキの樹皮を煎じた汁で洗ってあげたからだそうです。木質が固く、その昔はハナミズキの枝でダガー(Dagger=短剣)を作ったことから「ダッグウッド」と呼ばれていたのが変化したとの異説もあります。串や矢、家具の取っ手、織機の杼(ひ)、テニスラケットなどにも使われてきたそうです。
東アジア原産で日本ではヤマボウシと呼ばれる種類のミズキは、ハナミズキより病害に強いので北米でも植えられるようになりました。花は、ハナミズキよりも少し遅れて初夏にかけて開花します。
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キリストの十字架 =====
最後にハナミズキについて、アメリカに伝わるかわいらしい伝説をご紹介しましょう。
Legend
of Dogwood
In
Jesus' time, the dogwood grew
To a stately size and a lovely hue.
'Twas strong & firm it's branches interwoven
For the cross of Christ its timbers
were chosen.
Seeing the distress at this use of their wood
Christ made a promise which still holds good:
"Never again shall the dogwood grow
Large enough to be used so
Slender & twisted, it shall be
With blossoms like the cross for all to see.
As blood stains the petals marked in brown
The blossom's center wears a thorny crown.
All who see it will remember me
Crucified on a cross from the dogwood tree.
Cherished and protected this tree shall be
A reminder to all of my agony."
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ハナミズキの伝説
キリストが生きておられた時代、
ハナミズキは堂々とした大木でした。
枝も固くて丈夫でしたから、
キリストの十字架材に選ばれてしまいました。
そこで人々が嘆き悲しむのを見たキリストは、
今日まで変わらない約束をしてくれたのです。
「これからは皆さんの木が、
十字架に使われるほど大きく育たないよう…
幹はかぼそくよじれ、
花は十字架をかたどって咲くことでしょう。
花びらには茶色の血痕、
花芯にはいばらの冠、
ハナミズキを見るたびに、
十字架にかけられた私を思い出してください。
ハナミズキをいつくしんで、
私の受難の苦しみを分かち合ってください」
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詩の作者は不詳…翻訳は私です。ちなみに実のところは、キリストの十字架の材質については聖書に記述されていないそうです。
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