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2018年3月15日 (第139号)

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事 故

事 件

 乗員・乗客31人のうち17人が死亡…ミズーリ州テーブルロック湖

 荒天の中でダックボート(水陸両用観光バス)が沈没

当日の各地の荒天報告(海洋大気庁)

 中西部アイオワ州を27本の竜巻が襲った7月19日は、南隣のミズーリ州のリゾート・テーブルロック湖周辺にも猛烈な雷雨(Severe Thunderstorm)警報が発令されていましたが、警報を無視して営業していたダックボート(水陸両用観光バス)のうちの一艘が大波に呑まれて沈没、乗員・乗客31人のうち17人が死亡する事故がありました。

 救助作業は困難を極め、中でもインディアナ州から観光に来た11人家族の場合は助かったのが2人だけ、1歳の乳児を含む9人が犠牲になりました。下の動画ニュースには、ダックボートの脇を航行中の大型観光船の乗客が撮影した沈没事故のショッキングな映像が含まれています。

 内陸の夏の天気は急変しますから、警報(Warning)でなく注意報(Watch)の段階でも野外レジャーは避けるか、少なくとも極めて慎重な対応が必要ですが、このあたりは竜巻街道(Tornado Alley)のど真ん中で、観光業者は慣れっこになっていたのかもしれません。今回の沈没事故の40分前には、国立気象局が70mph(秒速31m)の強風が吹くおそれがあると警告していました。日本なら絶対に営業を中止するケースでも、アメリカにはリスク管理が甘いリゾートもあるという実例ですから、皆さんは遊ぶ前に必ず天気予報をチェックして、気象リスクは自己責任で管理するくらいに心がけてください。

GMC DUKW Original Wisconsin Ducks

 最近、東京のお台場で運行されている水陸両用観光バスなどは、バスの車輪部分が水に沈むくらいで、水面から窓際までの高さが1~2mと余裕がありますが、世界で主流の水陸両用観光バスは、第二次大戦のノルマンディー上陸作戦で活躍した軍用の水陸両用車DUKWの改造モデル、喫水線が高く浸水しやすい弱点があります。

 D・U・Kは(D)-1942年設計・(U)-多目的・(K)-全輪駆動を表すアルファベットでしたが、文字の並びと外見からの連想でDUKWはダック(あひる)の愛称で兵士に親しまれました。戦後早々に民間に払い下げられ、1946年創業のウィスコンシンデルズのダックツアーに始まり、各地で新しい観光メニューとして復活しました。

 車齢は70歳を超えており入念な整備が欠かせません。1999年にアーカンソー州ホットスプリングスで乗員・乗客20人のうち13人が亡くなった事故は、船底の車輪部分を隔てる防水ゴムが劣化していたのを放置していたのが原因で、生存者の証言によれば船尾方面で突然水が噴出し30秒足らずで沈没したそうです。

 その後、整備不良が原因の大事故は起きていないようですが、スクリューの故障で立ち往生しているところに大型船が乗り上げて押しつぶされたり、車軸の欠陥が原因で陸上衝突事故を起こしたりして、今回を含め40人が死亡しています。

 沈没による乗客死亡率の異常な高さは、救命胴衣の着用が義務付けられていないのも一因で、実際、どの観光地でも、進んで救命胴衣を付ける観光客は多くないようです。また、たとえ救命胴衣をつけても、危急の際にダックボートの天井や窓に阻まれ脱出は容易でないとの専門家の指摘もあります。