海外赴任、留学、国際結婚…北米に住む日本人の皆さんのアメリカ生活をゆたかにするメールマガジンです。四季折々のタイムリーな話題や各地のお買物や観光の情報をお届けします。検索ボタンで姉妹サイト「アメリカ生活・e-百科」のワード検索もできます。

発行: KJBusiness Consulting, LLC 代表 山田  電話: (859)224-0087 Eメール: info@jlifeus.com  HP: www.jlifeus.com

LINEで送る

2018年9月15日 (第143号)

サイト内ワード検索


家事とお料理

e-百科

食中毒 果菜

 有名ブランドのカット野菜や果実、サラダで広域集団感染が発生

 汚染食品が回収されるまでは、現地ニュースに敏感に!!

 アメリカでは、交通事故で年間に3万7千人が死亡し(2016年)、銃関連でも3万3千人が亡くなります(2013年)。それに比べれば広域集団感染(Outbreaks)による食中毒の患者は多くても年間2千人足らずで、死者の数は一桁ですから、目くじらを立てて騒ぐほどの問題ではないかもしれません。

 食中毒に限っても、別の記事でご案内したCDC(米国疾病予防管理局)の推計が正しくて、本当にアメリカでは1年に4800万人が食中毒を起こし3千人が死亡していたり、31種の病原体による食中毒に絞っても、年間939万人がを発症し、うち1千4百人が死亡したりしているなら、広域集団感染など氷山の一角。

 そのせいかCDCは野菜は健康に良いので(広域集団感染のニュースに惑わされず)食べ続けましょう。ただし、5歳以下の幼児や65歳以上の高齢者など免疫力の低い人々は注意!などと、少しのんきなことを言っています

===== ロメインレタスのO157汚染 =====

 確かに、食中毒の原因食品はすぐに回収されるので、汚染食品に当たる確率は、さほど高くありません。しかし、たまに原因食品が複数あり、その中の真犯人の食材が特定できない場合には、汚染ルートが判明し関連食品が市場から一掃されるまで、消費者は疑わしい食品の購入を躊躇します。

 今年3月に始まったロメインレタス(写真)によるO157の広域集団感染事件もそのケースで、最終的に汚染源が判明したのは8月。消費者はロメインレタスを買い控え、私たちの近所では、食中毒騒ぎがが収まった今も敬遠され、スーパーの棚に大量に売れ残っています。

 ロメインレタスによるO157集団感染の直接の汚染源は、アリゾナ州のユマ川から引いた灌漑用水と突き止められました。そのまた汚染源として、近隣のウシのCAFO(Concentrated Animal Feeding Operation=集中家畜飼養場)の関与が疑われています。CAFOは多数の家畜を狭い畜舎に押し込めて飼育する通称動物工場で、近年は動物愛護の観点から非難する人々が増えてきていますが、加えて大量の家畜の糞尿や畜舎の排水が周辺の環境を破壊しかねない懸念もあり、厳しい管理が義務付けられています。

鶏の集中家畜飼養場

豚の集中家畜飼養場

牛の集中家畜飼養場

===== CDCの最新食中毒情報 =====

 広域集団食中毒の情報は、テレビほかの現地メディアに絶えず接している皆さんの耳には入ってきますが、アメリカ人並みのヒアリングがなければ、詳細は理解できません。でも、下の空欄に皆さんのEメールアドレスを入力すると、CDCが最新の食中毒情報を送ってくれます。

 また、CDCのサイトで最新情報を見るならこちらのページ。下のコラムは当該ページの一部の切り抜きですが、最近の食中毒の原因食品の写真がスライドショー形式で掲載されています。具体的な内容をお知りになりたい方は、それぞれの写真をクリックしてください。

===== 最近の広域集団感染と対策 =====

 今年(2018年)は広域の集団感染による食中毒の当たり年で、ロメインレタスのO157事件のほかにも、食中毒のニュースが伝えられない月はありませんでした。

 5月から夏にかけてデルモンテの野菜パックとフレッシュエクスプレスの野菜パックを使ったマクドナルドのサラダが原因で、サイクロスポラという微生物による食中毒が起きました。2つの集団感染に関連があるかどうかは不明です。

 アイオワ本社で中西部8州に店舗を展開するスーパーハイビーの野菜パスタサラダ、ケロッグのシリアル、インディアナ本社で中西部・南部8州の多くのスーパーに卸しているケイトフーズのカットメロン、ウォルマートやフードライオンでも売られているローズエイカー・ファームの生卵(詳細は別の記事をご参照)など、日常的に私たちが安心して購入していたブランドの食品がサルモネラ菌に汚染されたのも、ショッキングな出来事でした。

 食中毒が増えている一つの大きな原因は、カット野菜やカットフルーツと、サラダなどカット果菜類の二次加工食品の増加です。カット果菜類はカット前にいったん洗浄されますが、工場で切断・包装される際に再び汚染されるリスクが高く、特に切断面から漏れ出す微量の細胞液が果菜類の表面に付着すると、病原体の温床となります。

 カット後に再洗浄や消毒をするケースもあるようですが、殺菌により雑菌が極度に減ると生き残った病原体が繁殖しやすくなるなどの問題もあるようで、マルのままの果菜類に比べると、衛生面で一回り劣る食品だと認識しておく必要があります。しかし、同じ食品を食べても、食中毒を発症するのは一部の人々です。カット果菜類でも、

❶ できるだけ賞味期限に余裕のあり見かけも新鮮な製品を選ぶ

❷ お買い物の後に寄り道せず帰宅して速やかに冷蔵庫の野菜室に貯蔵する

❸ 特に封を開けてからはなるべく早く使い切り、日が経ってしまったら加熱調理用に使う

❹その都度見た目や臭いで腐敗していないか確かめる

など、日常の当り前の注意を欠かさなければ、高い確率で食中毒を回避することができるでしょう。

過去5年間(2014〜18年)の食中毒の広域(原則複数州)集団感染事件

 

サルモネラ

 

病原性大腸菌

 

リステリア

 

腸炎ビブリオ

 

A型肝炎ウイルス

 

カンピロバクター

 

サイクロスポラ

期間

原因食品

原因菌

地域

発症

入院

死亡

’17/11~

エンパイア・コーシャ(ユダヤ人向け)の鶏肉

サルモネラ I 4,[5],12:i

4州

17人

8人

1人

’17/11~

複数の七面鳥生肉製品やペットフード

多剤耐性サルモネラ

26州

90人

40人

0

’18/6~

HyVee(スーパー)の野菜パスタサラダ

サルモネラ・サンディエゴ

9州

79人

18人

0

’18/5~’18/7

McDonald's(Fresh Express)の野菜サラダ

サイクロスポラ

16州

507人

24人

0

’18/5~’18/6

DelMonteの野菜パック(複数スーパー)

サイクロスポラ

4州

237人

7人

0

’18/3~’18/7

ベネズエラ産の輸入カニ肉

腸炎ビブリオ

4州

12人

4人

0

’18/3~

Kelloggのシリアル

サルモネラ・ムバンダカ

33州

100人

30人

0

’18/4~’18/7

Caito Foodsのカット・フルーツ(メロン系)

サルモネラ・アデレイド

9州

77人

36人

0

’17/11~’18/5

Rose Acre Farmの生卵

サルモネラ・ブレンダラップ

10州

45人

11人

0

’18/3~’18/6

ユマ川の灌漑用水で汚染されたロメインレタス

病原性大腸菌O157(H7)

36州

210人

96人

5人

’17/9~’18/3

International Harvestの乾燥ココナツ

ネズミチフス菌(サルモネラ)

8州

14人

3人

0

’18/1~’18/3

Triple T Specialty Meatsのチキンサラダ

ネズミチフス菌(サルモネラ)

8州

265人

94人

1人

’17/1~’18/5

複数汚染源のクラトム(日本で指定薬物)

複数種のサルモネラ

41州

199人

50人

0

’17/12~’18/1

生モヤシ(汚染源不明)

サルモネラ・モンテビデオ

3州

10人

0

0

’17/1~’17/11

Coconut Tree Brandの冷凍刻みココナツ

サルモネラ・アデレイド

9州

27人

6人

0

’17/11~’17/12

葉野菜類(原因特定できず)

病原性大腸菌O157(H7)

15州

25人

9人

1人

’17/5~’17/9

原因不明

サイクロスポラ

40州

1065人

-

-

’16/12~’17/10

メキシコ産輸入パパイヤ(複数農場)

複数種のサルモネラ

23州

251人

79人

2人

’16/8~’17/3

Vulto Creameryのミルクチーズ

リステリア・モノサイトゲネス

4州

8人

8人

2人

’17/1~’17/4

I.M.Healthyのソイナッツバター

病原性大腸菌O157(H7)

12州

32人

12人

0

’16/4~’16/8

Good Earth Egg Companyの生卵

サルモネラ・オラニエンバーグ

3州

8人

2人

0

~’16/9

原因不明

サイクロスポラ

25州

384人

-

-

’16/6~’16/9

Adam's Farmの牛肉ほか肉製品

病原性大腸菌O157(H7)

5州

11人

7人

0

’16/8~’16/10

エジプト産冷凍イチゴを使ったスムージー

A型肝炎ウイルス

9州

143人

56人

0

’16/6~’16/10

フィリッピン産ホタテを使った寿司(ハワイ)

A型肝炎ウイルス

1州

292人

74人

0

’16/5~’16/9

Sprouts Extraordinaireのアルファルファ

2種のサルモネラ

9州

36人

7人

0

’15/12~’16/9

General Mills(Kansas City)の小麦粉

病原性大腸菌O121/O26

24州

63人

17人

0

’13/9~’16/5

CRF Frozen Foodsの冷凍野菜

リステリア・モノサイトゲネス

4州

9人

9人

3人

’14年(’16特定)

Miller's Organic Farmの牛乳

リステリア・モノサイトゲネス

2州

2人

2人

1人

’16/1~’16/3

Wonderfull Pistachiosのピスタチオ

2種のサルモネラ

9州

11人

2人

0

’16/1~’16/2

Jack & The Green Sproutsのアルファルファ

病原性大腸菌O157

2州

2人

11人

0

’15/11~’16/4

Sweetwater Farmsのアルファルファ

2種のサルモネラ

12州

26人

8人

0

’15/12~’16/3

Garden of Lifeの有機ダイエット食品

サルモネラ・ウィルヒョウ

23州

33人

6人

0

’15/7~’16/1

Dole(Springfield, OH)のパックサラダ

リステリア・モノサイトゲネス

9州

19人

9人

1人

’15/7~’15/11

JEM Rawの発芽ナッツバター

サルモネラ・パラチフスB

10州

13人

0

0

’15/10~’15/11

Costocoの丸焼きチキンサラダ

病原性大腸菌O157(H7)

7州

19人

5人

0

’15/10~’15/12

Chipotle Mexican Grillの料理

病原性大腸菌O26

11州

60人

22人

0

’10/6~’15/8

Karoun Dairiesのソフトチーズ

リステリア・モノサイトゲネス

10州

30人

28人

3人

’15/7~’16/3

メキシコ産輸入きゅうり

サルモネラ・プネー

40州

907人

204人

6人

’15/4~’15/10

Kapowsin Meatsの豚肉

多剤耐性サルモネラ

5州

192人

30人

0

’15/5~’15/8

原因不明

サイクロスポラ

31州

546人

21人

0

’15/5~’15/7

Aspen Foodsの詰物入り冷凍生チキン

サルモネラ・エンテリティディス

1州

5人

2人

0

’15/4~’15/7

Barber Foodsの詰物入り冷凍生チキン

サルモネラ・エンテリティディス

7州

15人

4人

0

’15/3~’15/7

インドネシア産の輸入冷凍生ツナ(まぐろ)

2種のサルモネラ

11州

65人

11人

0

’10/1~’15/1

Blue Bell Creameriesのアイスクリーム

リステリア・モノサイトゲネス

4州

10人

10人

3人

’14/5~’14/9

メリーランド州デルマーバ半島産きゅうり

サルモネラ・ニューポート

29州

275人

-

-

’14/10~’15/1

Bidart Bros. Appleのキャラメルアップル

リステリア・モノサイトゲネス

12州

35人

34人

7人

’14/9~’14/12

Wanton Foodsの豆もやし

サルモネラ・エンテリティディス

12州

115人

25%

0

’14/6~’14/8

Whole Soy Productsの豆もやし

リステリア・モノサイトゲネス

2州

5人

5人

2人

’13/9~’14/10

Oasis Brandsのチーズ

リステリア・モノサイトゲネス

4州

5人

4人

1人

’14/5~’14/9

ユタ州の酪農家の生乳(非殺菌)

カンピロバクター・ジェジュニ

1州

99人

4人

1人

’14/5~’14/8

コリアンダー(テキサスのケースはメキシコ産)

サイクロスポラ

19州

304人

17人

0

’14/1~’14/5

nSpired Natural Foodsのナッツバター

サルモネラ・ブレンダラップ

5州

6人

1人

0

’14/1~’14/5

複数社の有機発芽チアパウダー

3種のサルモネラ

16州

31人

5人

0

’14/4~’14/5

Evergreen Fresh Sproutsクローバーもやし

病原性大腸菌O121

6州

19人

44%

0

’14/4~’14/5

Wolverine Packing Co.の牛挽き肉

病原性大腸菌O157(H7)

4州

12人

58%

0

’13/8~’13/12

Roos Foodsの乳製品

リステリア・モノサイトゲネス

2州

8人

7人

1人

’13/10~’14/1

Tysonのカット鶏肉

サルモネラ・ハイデルベルク

1州

9人

22%

0

’13/11~’14/1

Cultured Kitchenのカシュ―ナッツチーズ

サルモネラ・スタンリー

3州

17人

3人

0

 有機食品は安心かというと、自然な生産工程にこだわる分、逆に病原体への警戒は甘いかもしれません。食中毒を発症する条件は、病原体の濃さと免疫力の弱さですから、ご家族に5歳以下の幼児と65歳以上の高齢者や免疫不全の方がおられたら、特にお気をつけください。

 妊娠中の方がリステリアやトキソプラズマを発症すると、ご自身ばかりでなく、流産や生まれてくるお子様に障害が生じるおそれも高いので、それぞれソフトチーズや生ハム、スモークサーモンを避けたり、ユッケなど肉の生食を避けるなど特別な心構えが必要です。

 本題からはそれますが、トキソプラズマは普通は感染しても発症しないか軽症で済み、世界中の3人に1人が感染していると言われるほどです。ただし、女性が妊娠中に初めて感染するとたいへんなことになります。特にネコから感染しやすい病気ですから、妊活中の方は、トキソプラズマ陰性か陽性かお調べになっておいてはいかがでしょう。