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2018年11月15日 (第144号)

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世 相

事 件

 住民投票で「加害者の巨大IT企業」にホームレス支援税を課税

 サンフランシスコでは家賃の高騰でホームレスが急増

 11月6日の中間選挙では、民主党が8年ぶりに下院の過半数を奪還しました。アメリカで2年に1回、偶数年に大統領選挙と中間選挙が交互に行われることだけでも知っていれば、知米派日本人の仲間に加えてもらえるかもしれませんが、実は選挙は毎年あります。11月の第一月曜日の翌日(火曜日)が投票日(Election Day)と決まっていて、奇数年に州知事や市町村長ほかの役職者を選出する州や自治体も珍しくありません。

===== サンフランシスコの住民投票 =====

 選挙と同時に行われるのが、州や自治体レベルの住民投票です。しばしば同性婚やマリファナ(大麻)の合法化などの議案が各地の住民投票にかけられ話題に上りますが、今年サンフランシスコの住民投票にかけられた議案の数を数えたら、州で12件と市で5件もあって驚きました。市民はほかに、上下両院の議員に州知事と州の7名の役職者や市議会の補欠選挙に投票したはずですから、全部で30件近い選択を迫られたのではないかと思われます。民主主義も、まじめに投票するとしたら重労働です。

 そんな住民投票の中で、市が提案した3番目の議案が住民の60%の賛成で可決しました。

Proposition C

Would levy a gross receipts tax of 0.5 percent on corporate revenue above $50 million. The $300 million raised would fund programs that help homeless people access permanent, supportive housing. Requires a simple majority.

 5千万ドル超の企業年収に対し0.5%の法人税を課して3億ドルを集め、ホームレスの住宅支援に充当しようという議案でした。市は既にホームレスレス対策に年間3億8500万ドルの予算を割いていますが、新税の対象は約400社で、特に巨大IT企業の負担が大きくなります。

 下の動画ニュースに登場するホームレス支援組織の代表者は、4千軒の住宅供給や4500人の麻薬中毒や心の健康の治療が必要で、毎年7000人がホームレス化している現状を食い止めなければならないと語っています。

===== シリコンバレーの光と影 =====

 たまたま私たちは昨年10月にサンフランシスコを訪れたばかり…当時も多数のホームレスらしい人々を見かけたものの、それから1年足らずの今年7月にYouTubeに掲載された下の動画を見ると、その急速な悪化ぶりに開いた口がふさがりません。

 現在のホームレスの総数は7500人で、その中には子持ちの1200組の家族が含まれるのだそうです。ユニオンスクエアやベイブリッジのたもとなど観光の中心地にも住みつくほどになりました。市が路上から回収するゴミの中には、ホームレスが麻薬用に使用し廃棄したとみられる注射針が月に8000本も入っています。

 サンフランシスコは、もともとシリコンバレー(サンフランシスコ湾南部のスタンフォード大学やサンノゼ周辺のIT企業集積地)向け金融の中心でしたが、近年は自動車配車サービスのウーバーやリフトが起業したり、世界を席巻する営業支援システムのセールスフォースが市内最高層のビルを建てたりして、シリコンバレーの新たな首都として巨大IT企業を引き付けています。

 若くて才能ある高給のIT技術者が我が物顔でスケボー通勤する一方で、古くからの住民は家賃や固定資産税の高騰により、ホームレスに落ちぶれはしないまでも遠方に転居したり、リタイアを機に帰郷したりするなど苦渋の選択を迫られています。50年前にはヒッピーの聖地として若者の文化を寛大に受け入れたサンフランシスコですが、最近の市民の心の中には若者への対立感情が高まってきているように思われます。

===== 山火事による大気汚染 =====

 今月8日には、カリフォルニア史上最悪で、東京都23区に匹敵する620平方kmを焼く山火事が北270kmのビュート郡で起き、サンフランシスコは煙や灰で、健常者にも健康被害が懸念されるほどのひどい大気汚染にさらされました。一時はPM2.5が世界最悪といわれるほどのレベルに達し、下の動画のように、市はホームレスにマスクを配り、一部の希望者は避難所に収容したようです。

 25日には鎮火したものの、死者・行方不明は334人(24日現在)と、犠牲者数では全米でも100年ぶりの大被害をもたらした山火事でした。