一戸建ての間取り
★1階(フロントポーチと玄関ホール/リビング・ダイニング・ファミリールーム/キッチンと洗濯室)
★2階(寝室とバス・クローゼット/ボーナスルームとドーマー) ★地下室と屋根裏
フロアプランと不動産英語
レキシントンなら家賃1500ドルクラス |
インターネットの家探しで困るのは、第一に不動産英語が分からないことです。家探しが終わって住み始めても、家の各所の名称が分からないと大家さんと話するにも不便。辞書を引けば出ている言葉はいいのですが、家の構造が日本と違うので、間取り図なしには説明できない部屋もあります。
そこで、皆さんにアメリカの一戸建ての基本的な構造と各所の用途や英語名などをご案内しようと思うのですが、実は、アメリカでフロアプラン(間取り図)を手に入れるのは意外にたいへんなことです。ひょっとすると、設計者の著作権の問題があるからかもしれません。そこで、今回は、実在の家をもとに、素人ながら、私自身が間取り図をスケッチしてみました。
右の写真は、建坪2千平方フィート(約60坪)くらいの一戸建てです。私たち夫婦が住んでいるケンタッキー州のレキシントンでは、(地域にもよりますが)買えば20万ドル前後、借りるならお家賃は月に1500ドル前後といったところでしょう。
十分広く、窓も大きくて明るく、快適な生活が楽しめるよい住まいですが、ご説明用には、間取りの要素が全て揃っている(貸家としては標準より大きめの)家を選びました。
この家は、1階と2階を合わせて(地下は省略)約100坪です。建坪の計算には、普通、ガレージやポーチの広さを含みません。老人や身体障害者にも優しい配慮が行き届いた設計で知られた工務店が20年前に建てた住宅です。
【
1階の間取り 】
【1階平面図】

ポーチと玄関ホール
フロントポーチが大きい家では、老夫婦がスイングチェアに座って散歩する人に挨拶したり… |
玄関前のひさし屋根がカバーする場所をフロントポーチと呼びます。雨の日に郵便屋さんと立ち話をするのにも便利ですが、玄関ドアが風雨や日差しで劣化してしまうのを防いでくれます。玄関ドアには、外開きのストームドアというガラスドアを二重につける家も多くなりました。
玄関ホールは英語でフォイヤー(Foyer)…アジア人と対照的に、欧米人は暗い(=落ち着いた(室内環境を好みますが、最近は吹き抜け(Vaulted
Ceiling)で明るい玄関やリビングのある家が売れるようになってきました。
北米の家はクローゼットだらけで物の収納には困らないはずですが、玄関は別です。大半のアメリカ人は家の中でもくつをはいて生活していますから、「下駄箱」は各自のベッドルームのクローゼット…玄関の収納スペースは、お客様のコートをかけるためにあるのでしょうか?
リビング・ダイニング・ファミリールーム
リビングは二つ、食事の場所も二つあります。本物の居間(Formal
Living)に対して一回り小さめの居間はファミリールームと呼ばれています。本来は、子どもたちを遊ばせるリビングより一層くつろげる部屋という趣旨だったようですが、現在は、逆に、リビングに通すほど身内ではないお客様をお通しする玄関脇の客間として使われるケースが多そうです。雰囲気を大事にする部屋ですから、天井にも吊り下げ式の照明がついていません。スタンドを買ってきて、明かりを灯しましょう。
1階のトイレはハーフ・バス…バスルームは、トイレと風呂があって一人前(Full
Bath)というわけです。トイレを借りたいお客様を奥までお通ししなくて済むように、大半の家では1階のトイレは玄関脇にありますが、この家の場合は、お客様を階段を上って2階のバスルームにご案内するというちょっとユニークな造りです。
Screened(網張りの)
Porch |
大まかな事情はお分かりいただけましたか?フォーマル・リビングとキッチンは、身内のスペースですから、玄関からは直接見えない奥の方にあります。フォーマル・ダイニングは、お客様をご招待することもありますから、ファミリールームの反対側の玄関脇にあるのが理想的です。
もっとも、お客様を厚くおもてなしするなら、やはり、フォーマル・リビングにお通ししなければなりません。この家の場合にも、室内には暖炉やテレビやAV機器を収納する造り付けの棚があって、虫除けの網が張られたポーチに出てバーベキューを楽しむこともできる素敵な造りになっています。
ポーチの呼称は、パティオ(Patio)とか不動産屋のその場の気分で様々に変わります。例えば階下に空間があれば、ベランダ(Verandah)やデック(Deck)、バルコニー(Balcony)等々。
キッチンと洗濯室
標準的なキッチン |
さて、朝食はキッチン。台所で「軽く」というよりは、朝は日当たりがいいパティオ風コーナーで「気持ちよく」食べ、夕食はあらたまったダイニング(Formal
Dining)で(家庭によっては「お祈り」をささげ)少し「じっくり」食事をしましょうという区分です。お客様さえいなければ、日の長い夏の日には朝食コーナーで庭を見ながら夕食をするのもいいものです。
台所のスペースは、どの家もぜいたくです。大きな家ともなると、食品クローゼット(パントリー)や配膳台(キッチン・アイランド)、主婦用のデスクまで付いています。ところで、コンロは英語でストーブ(Stove)です。紛らわしい単語ですから、この際、しっかり覚えておきましょう。
洗濯室(ユティリティ・ルーム)の場所は、決まっていません。家によってバラバラで、2階の廊下のドアを開けると洗濯機と乾燥機が出現したりする家も数多くあります。どこにあると便利かは、洗濯物をどの部屋で干すかによって変わってきます。全体の間取りを、総合的に判断してください。
地下室のない家では、給湯器がこの部屋に置かれていることが多いでしょう。給湯器は大きくて、日本人の間では「ボイラー」の名で通用していますが、英語では「ウォーターヒーター」です。日本人はお風呂やシャワー好きですから、アメリカ人に比べて大量のお湯を使います。少人数の家族でも、50ガロンの容量がないと不安です。
【
2階の間取り 】
【2階平面図】

寝室とバス・クローゼット
運がよければこんな貸家も?! |
2階: 寝室は2階に集中している家が主流です。幼児の面倒を見るために1階に寝室がある貸家を探すご家族が少なくありませんが、例外なく苦労なさっています。
夫婦の主寝室(マスター・ベッドルーム)と子どもたちの寝室の間には、厳然たる格差があります。そもそも部屋の広さも違いますが、天井の高さや天井扇(Ceiling
Fan)の有無など豪華さの程度も異なるのです。
最大の格差はバスルームに表れています。主寝室には専用の浴室が付いていますが、他の寝室はもう一つの浴室を共用するのが一般ルールです。
この家の共用浴室は、大きな出窓があって、明るく開放的な素敵な浴室ですが、それでも、浴槽サイズは(特に小さいわけではありませんが)一般ホテル並み。カーテンで仕切って浴槽内でシャワーするのも一般ホテルと同様で、シンクは二つありますが鏡と洗面台は一続きと、かなり「普通」の扱いです。
これに対して、夫婦の浴室の設備は、お湯をたっぷり入れて身体をゆったり伸ばせる深いジャグジー風呂(Jacuzzi
Bath=英語ではジャクージーバス)にガラスドアの独立シャワールーム、左右に分かれた鏡と洗面台といった「VIP」の待遇…違いがお分かりですか?
ボーナスルームとドーマー
この家の主寝室周りのクローゼットが比較的狭いのは、隣のボーナス・ルームが付いているからです。ボーナス・ルームと寝室の区別は必ずしも明確ではありませんが、ボーナス・ルームは寝室よりもオープンで、隣室とドアで隔てられていない場合が多いようです。この家は2階に上る階段を二つ持つちょっと面白い造りですが、階段を上ると部屋なのか、部屋の中に階段があるのか、どちらとも言えそうなところがボ ーナス・ルームの所以です。
この家のボーナス・ルームには、ドーマー(Domer)と呼ばれる屋根に突き出した小部屋があります。最大の目的は採光ですが、工夫次第で書斎など多様に使える楽しい空間です。
ドーマーより大きくてドアで仕切られ小部屋になればアティック(Attic=屋根裏部屋)です。いずれ改装して完成させる前提で木の柱や壁をむき出しにしたままのアンフィニッシュト・アティック(Unfinished
Attic)は物置として便利ですが、エアコンを効かせておかないと夏は高温でしまったものが痛んでしまいますから気をつけましょう。
地下室と屋根裏

Attic |
表から見ると二階家ですが、裏に回って見ると実質三階建ての一戸建ての地下室をウォークアウト・ベースメント(Walkout
Basement)といいます。昔の地下室は、竜巻の避難場所と考えられていて、窓が小さく数も少なかったのですが、最近の新築の家には裏庭に向けて大きな窓を設けた明るい地下室が増えています。地下室は、ピンポン台やビリヤードを設けたり、バーを設けたりする遊びのスペースです。
アンフィニッシュト・ベースメント(Unfinished
Basement)は、いずれ改装して完成させる前提で、新築時にはコンクリートむき出しにしておく地下室で、物置にも、遊びのスペースにも使えます。
二階屋で地下室がある家では、空調機(HVAC=Heating,
Ventilation, and Air Conditioning)が地下室と屋根裏の2ヶ所にあり、1階フロアのダクト経由で1階と地下室の空調を保ち、2階天井のダクトで2階の空調を調整しています。地下室のない2階屋では、屋根裏の空調機が1階と2階の間のダクトにつながっていて、1階の天井と2階の床に開口した通風孔(Ventilator)を経て空調します。
家によっては、空調機はのフィルター交換のために屋根裏に上る階段を天井から引き下ろせる仕組みになっています。通風孔でフィルター交換する仕組みの家は、誰も滅多に屋根裏には上らない想定で建てられていますから、屋根裏の床も、人が歩き回れる強度で作られていません。梁に足をかけて移動したりしないと、体重で天井をぶち破ってしまうこともありますから、無理をしないでください。
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