ハチとアリ・毒グモ・毒サソリ・毒ヘビ★クマンバチはミツバチの仲間 ★噛んで刺す殺人アリ ★ハチ刺されの応急措置 ★意外に身近にいる毒グモ ★致死リスクは低い毒サソリ ★ガラガラヘビはマムシの仲間 結論からいうと、数字的にはハチの被害で1年に平均58人が死亡、毒グモで7人、毒ヘビで6人といったところですから、さほど怖くないのかもしれません。しかし、病院に担ぎ込まれて助かった人も含めれば、無視できない数の被害者がいるのかもしれません。毒のない蚊やマダニによる感染症は、この記事の対象ではありません。それぞれの記事をごらんください。 クマンバチ(マルハナバチ)はミツバチの仲間 ヒアリ(殺人アリ)は尻の針で獲物を刺しますが、生物学でアリの仲間はスズメバチ上科に分類されると聞けば、それもそのはずです。日米ではハチの種類も違い、日本人もアメリカ人も世間レベルではかなり混同して呼び分けていますが、下表で現実的な日米対応を示しました。
例えば、Bumblebeeは正しくはマルハナバチで、逆にクマバチは英語でCarpenter Beeです。有名なリムスキー・コルサコフ作曲の「くまんばちの飛行」のハチも、ロシア語や英語ではマルハナバチ…体が大きく怖そうですが、ミツバチの仲間で性質が穏やかです。ヒトが驚かせなければ攻撃してきません。 でも、体質や体調により少量の毒でもアナフィラキシーショック(生死に関わるアレルギー性ショック症状)を起こすケースもありますから、1回刺されただけでも油断なりません。特にセイヨーミツバチは、スズメバチより強い毒を持っているそうですからお気を付けください。
獰猛なスズメバチと、温厚なアシナガバチは同系統のハチで、英語では、あまり区別なくWaspとかYellow Jacketとか一括して呼ばれます。 外見で見分けは困難ですが、巣の形が明らかに違いますから、家の周りにスズメバチが巣を作ったら、業者(ペスト・コントローラー)を呼び、急いで処分してもらいましょう。スズメバチは毒も強く、集団で襲ってきます。 ホーネットはスズメバチの一種で、本当は種類も多いのですが、世間一般では、全身が真っ黒で顔と胴や尻尾に白斑があるBald-faced Hornetに限り、ホーネットと呼んでいます。 噛んで刺す殺人アリ 尻尾の先に毒針を持ち、集団で狩りをして獲物の動きを止め、寄ってたかって食い尽くす残酷なアリです。 人間にとっても極めて危険で、アカヒアリの毒でアレルギー反応を起こし、アナフィラキシーショックで亡くなる方が後を絶ちません。 アカヒアリが家の中に侵入してくることは滅多になさそうですが、庭仕事中に刺される人もいるようですから気をつけてください。駆除は専門家に任せましょう。 ハチ刺されの応急措置 最初に一般論として、ハチに刺された人は、急にアナフィラクシーショックに見舞われる可能性がありますから、少なくとも数時間は誰かがついていてあげなければいけません。症状は普通15分以内に起きますが、一度収まって再発することもありますから、様子がおかしくなったら、救急車を呼ぶか急いで医療機関に連れて行ってあげてください。 1. 皮膚に残ったハチの針を、爪やバターナイフなどで、はらうように取り除きます。動画の画像は不鮮明ですが、針に逆らわない方向にはらいます(末尾の動画に1分32秒付近をごらんください)。ピンセットなどは皮膚を傷つけやすいので避けます。 2. 氷をタオルで包み、患部を10~15分冷やします。 3. ベナドリル(Benadryl)など抗ヒスタミン剤入りのかゆみ止め(Itch Relief)を塗ります。Benzocaineなど局所麻酔系成分が入ったかゆみ止めでもかまいません。 4. 経口の鎮痛剤を服用します。 5. 患部に湿らせた重曹(ベーキングソーダ)や泥を塗り、酸性のハチ毒を中和させます。 6. 患部がひどく赤くなったり腫れたりしたら、医者に診せます。 意外に身近にいる毒グモ 北米で致死性の毒を持つ怖い毒グモには、ドクイトグモ(Brown Recluse Spider)の仲間とゴケグモ(Black Widow Spider)の仲間がいます。毒グモというと、私は足が太くて見るからに怪しいタランチュラの姿を思い浮かべるのですが、北米の毒グモは細~い足を広げても最大1~2cmと小さいので、出会っても全く警戒しないかもしれません。まずは、動画でどれほど小さいかごらんください。
===== ドクイトグモ ===== ドクイトグモの体長は6~20mm。住宅の屋内にも住みつきますから、左図に示す生息地域では、無視できない身近なリスクです。 ヒトが近づくと逃げ、普段は夜間にシミやゴキブリなどを捕食して暮らす生き物ですが、昼は床に置いた衣服やクツの中で休んでいたり、壁際のベッドに紛れ込んだりしていてヒトと接触し、驚いて噛むことがあります。 衣服の上から噛まれることはありませんが、日本人は屋内を素足で歩くこともあるので、注意してください。ガレージや地下室に長くしまっていた物を動かす時も気をつけましょう。手袋をしていれば心配ありません。 大半が大事に至らないせいか、被害の実態はあまり知られていないようです。そもそも噛まれても痛くなくて、普通は3~8時間後に患部が赤く腫れ上がって初めて気づきます。運が良ければ、医者にかからずほっておいてたところで、3週間もすれば治るでしょう。 しかし、運が悪いと、ドクイトグモの毒は数週間にわたりジワジワと皮膚組織を壊死させます。噛み痕の周囲には、最大で直径10cm超にも及ぶ青黒く深くくぼんだ傷が残るでしょう。まれに子供や高齢者など体力が低い人たちを中心に、高熱や悪寒、発疹、嘔吐などの全身症状が現れ、死に至る例もあります。 ===== ゴケグモ ===== ゴケグモは、1995年に日本で発見されたオーストラリア原産のセアカゴケグモの仲間です。北米全土に生息し、セアカ(背赤)ではなく腹に赤いマークがあるのが特徴です。体長はメスが10mm前後でオスが3mm前後。交尾後にメスがオスを食べてしまう習性から、ゴケ(後家)と名づけられました。毒液を注入する毒グモも、メスの方だけです。 屋内よりも、軒先やトイ、物置など家周りでヒトに邪魔されない場所を好んでクモの巣を張ります。このクモも臆病で、気づかずに巣を壊したりして驚かせなければ滅多に噛まれることはありません。また、噛んでも必ず毒液を注入するわけではなく、たとえ毒液を注入されても4人に3人は患部の痛みだけで済みます。 しかし、ゴケグモの毒は神経毒で、毒が一定量を超えるとたいへんです。噛まれた瞬間に焼けるような痛みを覚えますが、その痛みが次第に増し数時間のうちに患部が発汗し鳥肌が立つようになると危険な兆候です。高熱に頻脈と血圧の上昇、全身の激痛と筋肉や胃の痙攣などの症状が3~7日続き、場合によっては呼吸器のマヒにより死亡することもあります。 致死リスクは低い毒サソリ 最初にご安心のため、北米のサソリの毒は比較的弱く、子供と高齢者や免疫力の低い人以外は刺されても、最悪でも死ぬことだけはないと申し上げておきましょう。でも、小さなペットには極めて危険です。
サソリは全米で70種を数えますが、危険な毒サソリは上の写真の二種のみ。名前の由来のバークは「樹皮」なのに、実際は地表や岩の下で見つかることが多いようです。体長は7~8cmまで。被害に遭うのは自宅で裸足で過ごしている時が多いそうですから、サソリを見つけたら種類にかまわず業者に駆除してもらうに限ります。 刺されると、電気ショックのような激痛としびれや嘔吐が1~3日続き、その間、刺された手足が痙攣したり動かなくなったりします。ひどい場合は神経毒が全身に回り、アナフィラキシーショックで血管性浮腫(まぶたや唇、舌などが腫れあがる症状)や胃痙攣が起きたり、呼吸困難に陥るケースもあります。 ガラガラヘビはマムシの仲間 アメリカで危険な毒ヘビは、下の写真に示す4種。うちガラガラヘビ・コパーヘッド・ヌママムシの3種はマムシの仲間で、胴短のコパーヘッドやヌママムシは50cm~1m、最も胴長のヒガシダイヤモンドガラガラヘビ(Eastern Diamondback Rattlesnake)でも普通は110~170cmと、いずれも体長が短いので見かけ太めです。 ガラガラヘビには砂漠の生き物というイメージが定着していますが、実は西海岸や山岳地帯を除き南部カナダまで、南北アメリカ大陸の森や湿地も含む雑多な環境で生息しています。サンゴヘビの体長は90~150cmですが、アリゾナサンゴヘビだけは30~70cmともっと短めです。気味の悪い表現を許していただけば、一見、巨大ミミズ。見かけは似ていませんが、コブラの仲間です。 子供たちが4種の毒ヘビを見学している動画がありますから、こちらをごらんください。
ヘビも、ヒトを積極的に襲う動物ではありません。被害者の多くは若い男性で、ヘビがいるのに気づいた上で余計な手出しをして、噛まれるケースが少なくないそうです。ヘビはヒトの気配を感じると逃げますから、急に至近距離に近づかなければ被害に遭いません。ゴルフ場でボールを探しに藪の中に分け入る際には、ドライバーの先でガサガサ音を立ててから足を踏み入れましょう。ハイキングの際には、登山靴か、くるぶし丈の深い靴に、ゆったりした丈夫な布地の長ズボンを履いていれば安心です。 有毒生物の被害に遭った場合、救急車が到着するまでに時間があれば、上の動画にある"RICE"という手順の応急手当てを試みましょう。ケガを負って出血した場合と共通で、血流を抑えるのが目的です。 R. (Rest) 安静にする。 I. (Ice) 患部を氷で冷やす。 C. (Compression) 包帯を巻き、患部を圧迫する。 E. (Elevation) 患部を何かの上に置いて支持し、心臓より高く保持する。 |