広いアメリカ…ヘビやクマ、ワニ、サメなどの野生動物に襲われるこわ〜い場所もありますが、ことによると、皆さんのお住まいの庭や身近に立ち寄る場所にも風土病のワナが潜んでいるかもしれません。こわがりすぎてはいけませんが、まず予防方法や救急手段を一通り勉強⇒その上で、庭仕事や野外レジャーを思う存分楽しんでください。


ポイズン・アイビーとウルシの仲間


 「ポイズン・アイビー」といえば、映画キル・ビルで有名な女優ユマ・サーマンが1997年の「バットマン&ロビン」で演じたセクシーな悪役キャラクターですが、その名の由来のポイズン・アイビーは、北米で有名な危ない植物です。バットマンの敵役にされるほどですから、触れると強烈にかぶれます。同じウルシ科ウルシ属で仲間のポイズン・オークやポイズン・スマックも、強烈にかぶれるので気をつけてください。

 ハワイとアラスカやカナダ北部を除き、北米全土に生息しています。ハワイでは、マンゴーの木に触れるとかぶれるのでご注意ください。


応急手当と早めの受診


ポイズンアイビーによるかぶれ

 滅多にないとはいえ、かぶれでアナフィラキシーショック(アレルギーによるショック症状)を起こすこともあります。ぐったりしたり、声がかれたり、息切れしたり、被害者の様子が少しでもおかしくなったら、迷わず救急車を呼びましょう。

 外務省の在外公館医務官情報(ワシントン)も以下のように注意しています。

最初はこの草に触った手足や顔にうすくブツブツが出来ますが、しだいに広がり、水疱を作ります。普通の家庭用の軟膏などでは治りにくく、水泡がつぶれて痕(あと)になったりしますので、はやめに医師を受診することをお勧めします。自宅の庭や道路に生えていれば専用のスプレーを使って除草します。このスプレーは劇薬の一種ですので、ご使用にあたっては指示をお守りください。また枯葉でも皮膚炎を起こしますので、手袋をするなど処分には注意が必要です。

 応急措置

1. 患部を、できれば消毒用アルコールや植物かぶれ専用クリーナー、なければディッシュウォッシャー用洗剤など油落としの石鹸と、大量の水で洗い流す。

2. 爪の間をブラシでこすって洗う。

3. 濡れタオルを当てたり、カーマインローションやハイドロコーチゾン軟膏を塗ったりして、痛みやかゆみを抑える。

4. Benadryl(眠気を誘うので注意)など、抗ヒスタミン剤が効く。


3枚葉か7~13枚の奇数葉が1セット


 ゴルフ場でボールを林に打ち込んで探すうちに、茂みの中のポイズン・アイビーに触れ、手足や顔にひどいかゆみを伴うかぶれができるというのが典型的な被害です。似たような草木が多いので茂みには近づかないのが一番ですが、いさぎよくボールをあきらめきれない人は、下の写真を見てしっかり覚えておきましょう。地域ごとの種の違いや季節による色の違いだけではなく、動画でも言っているように、生えている場所次第で、蔓(つる)状に木に巻き付いたり、藪になったり灌木になったりしているので、簡単には判別できません。

Poison Ivy (ウルシ科ウルシ属)

Poison Oak (ウルシ科ウルシ属)

Poison Sumac (ウルシ科ウルシ属)

本物のアイビー (ウコギ科ヘデラ属)

本物のオーク (ブナ科コナラ属)

本物のスマック (ウルシ科ヌルデ属)

 ポイズン・アイビーもポイズン・オークも、本物のアイビーやオークとは全く似ていません。北米にはLeaves of three, Let it be!(葉が3枚なら、ほっとけ!)ということわざがありますが、葉っぱ3枚がセットで1本の葉柄についているのが特徴です。

 スマックは、日本人には馴染みがありませんが、実が香辛料や染料に使われる植物です。ポイズン・スマックの葉は7~13枚の奇数セットで1本の葉柄についています。本物のスマックも、同じウルシ科だけに葉の枚数だけでは区別がつかないかもしれません。