学期編成と夏休み


 北米では、大半の教育機関が、1学年(アカデミック・イヤー)を2学期(セメスター)に分けています。1セメスターは通常18週。試験が2度あって、成績が2度付くということです。

 伝統的な日程は、次の通りです。

  第1セメスター…9月第1月曜日のレイバーデー〜クリスマス

  第2セメスター…ニューイヤーズデー〜5月最終月曜日のメモリアルデー

 これで一律に決まっていれば分かりやすいのですが、これも地域や教育施設によりマチマチです。試験の時期をクリスマス前にしようとすると、日数調整で、授業を8月の中旬に始めなければなりません。

 雪が降る地域では降雪による休校日の日数調整があるので、第2セメスターの修了日は春になるまで決まりません。終業式や卒業式の日取りが直前まで通知されないことがあっても、慌ててはいけません。

 夏休みは、早ければ5月の終りから遅ければ8月の終りまで3ヶ月近くあります。といっても、アメリカ人の生徒が、その間ずっと遊んでいるかというと、決してそうではありません。高校生には、サマークラスに登校して追加の単位を取るチャンスでもあります。

 日本人子女の中にも、「飛び級」で1年早く卒業して帰国進学するため、夏休み返上で勉強に打ち込む生徒がいます。また、アメリカの大学に進学するなら、夏休みは、内申で有利なクラブ活動やボランティア活動、アルバイトの実績作りをする絶好の機会です。

 小学生や中学生の夏休みは、もっと気楽ですが、文科系から体育系まで、日帰りや合宿形式の様々なサマーキャンプが催されますから、お子様と相談して楽しい企画に参加させてあげましょう。きっと、いい思い出になります。

 私たちの場合は、カナダ時代に、小学校低学年の娘をアルゴンキン州立公園のお泊りキャンプに参加させたり、ケンタッキーに来てからは、中学生の息子を、全米最強のケンタッキー大学バスケットボール部の1週間のキャンプに通わせたりしたことを覚えています。


学齢と編入学年


各州の学齢を決める基準日(cut-off date)2005年現在

〜8/14 8/15〜9/15 9/16〜10/31 11/1〜 □その他 

資料: Education Commission of the States  インディアナは1998年まで61でしたが徐々に遅らせて2007年現在は81、ノースカロライナは2009年から831になります。LEAは地元自治体(Local Education Agency)の裁量の意味です。

 ややこしいことに、学齢を分ける基準日が州によって異なります。ということは、お子様が編入する学年も、赴任先の州によって変わる可能性があるということです。

 最も早いインディアナ州が8月1日(2007年現在)、一番遅いコネチカット州は翌年の1月1日ですから、4ヶ月違います。

 ただし、このところは精神的に未熟なうちに急いで集団教育をすべきでないという世論が押し気味で、全般的に基準日が各州で繰り上がり、プレスクールの入園年齢が遅れる傾向にあります。

 テネシーでも、現行9月30日を9月1日に繰り上げようという法案が出されましたが、まだ成立していないようです。

 アメリカ人の場合も、州を越えて転勤すると、引越先で、子供の学年がそれまでより1学年ずれてしまうことがあります。

 ただし、「繰上げ入学(Early Enrollment)」や「飛び級(Grade-Skipping)」など柔軟な「英才教育(Gifted Education)」制度がある国ですから、例外扱いで、編入学年を繰り上げたり遅らせたりするのも一般に臨機応変です。

 私たち家族の例で説明しましょう。娘は9月生まれ、息子は10月生まれ…カナダのトロントでは1月1日が学齢の基準日だったので、二人とも日本の学年より約半年早い学年に編入しました。ところが、2回目の北米勤務で赴任したレキシントン(ケンタッキー州)では10月1日が基準日でした。

 息子は、カナダ時代と逆に半年遅れの学年に属すはずでしたが、学校に無理を言って早い方の学年に編入させてもらいました。日本に帰国入学した場合に同年齢の子供たちと同学年になれることを願ってのことです。

 ところが、息子は、その後アメリカの大学に進学することになり、結果的には1歳上のアメリカ人と成績を競うことになって苦労しました。人生の先はなかなか見通せないものです。ですから、お子様の能力ばかりでなく、性格もよく考えて、編入学年を選んであげてください。

 一般に、アメリカの先生は、学齢の境に近い7〜8月以降に生まれた日本人のお子様には、言葉のハンディも考えて、遅生まれ扱いで次の学年に編入するよう勧める傾向があります。


健康診断と予防接種


 編入手続きにも各地で多少の違いはありますが、典型的な例についてご説明します。

 一般のアメリカ人の子供が入学するときに必要な書類は@出生証明(Birth Certificate)、A学区内に住んでいることを証明する2つ以上の書類、B予防接種記録と健康診断書(及び視力検査)の3種類です。外国人の場合について特に別書きの説明があるわけではありませんが、実際の運用は以下の通りです。

 @の出生証明については、日本人の場合は、代わりにパスポートのコピーを提出します。私たちは、日本の学校で英文の卒業証明や前学年の修了証明を書いてもらって持ってきたものの、使いませんでした。

 Aの学区内に住んでいることを証明する2つ以上の書類については、少し「ビミョー」な事態が発生するかもしれません。貸家に住んでいる場合には、賃貸契約書のコピーと公共料金の請求書などが証明になります。つまり、具体的な住所を決めるまでは、学校が編入の受付をしてくれないということです。運が悪いと、学区優先で家を決めても、編入手続きをしてみたら定員オーバーで、別の学校に行きなさいというケースが起こり得るのです。

 さて、Bの予防接種や健康診断については、まず現地事情をよく知る日本人の知り合いを頼って、信頼できる地元のお医者さんを探すことです。

 私たちの子供の場合は、日本生まれで幼児期を一時カナダで暮らし、帰国して再び北米と各地を転々としたので、予防接種の記録もバラバラでした。

 そこで、ケンタッキーに赴任する前には、「日本国際医療団」に英文証明書の発行を依頼して、不要な接種の数を減らそうと努力しました。ただし、北米の医療機関や教育機関の対応は日本式の形式主義ではありませんから、予防接種の記録が記載された母子手帳さえ持っていれば、一般人の翻訳で受け入れられるケースが多いと思います。

 いずれにせよ、予防接種は北米の方が多いので、お子様たちは追加の予防接種を受けなければなりません。日本でできる予防接種は済ませてから渡米させたいという親御さんもおられますが、それでは、お子様に二度手間をさせてしまうことになります。一度の来院で、同時にできる接種は、何種類でもいっぺんに済ませてしまうのがアメリカ流です。手間はかからなくて結構ですが、お子様には前もって覚悟しておくよう言ってあげてください。

 健康診断の中にはツベルクリン反応検査(TBテスト)があるのですが、これが難関です。日本とアメリカでは、ツベルクリンの結果に関する考え方が全く逆で、陽性(ポジティブ)だと結核感染を疑われ、胸部X線検査をさせられた上に、結核治療薬を飲まされる羽目に陥るかもしれません。お子様が陰性で、わざわざ渡米前にお子様を人工陽転させて来られた方がぼやいておられました。

 その上、日本の事情に理解のないお医者さんにかかると、お子様は結核治療薬を強制的に飲まされる破目になります。副作用もありますから、十分気をつけてください。詳しくは、

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