現地医療保険や海外医療保険


 当たり前ですが、アメリカの医療機関では日本の国民健康保険は使えません。アメリカで就職する方は、勤務先が団体契約している医療保険のプログラムに加入することになりますが、最初に給与や勤務条件を交渉する際に、医療保険の自己負担額を確認しておくことが重要です。日本のように、医療保険が専業主婦の配偶者や家族を自動的にカバーするとは限りませんから注意してください。

 留学生の場合は、大学の付属病院限りで使えるお徳用の保険もありますが、それも決して安くはないので、損害賠償保険などの機能もついた日系保険会社の「海外旅行保険」を選んだ方がよいかもしれません。ただし海外旅行保険は定期健診などの予防医療や歯科などの治療費はカバーしないのが普通ですから、詳細を読んで慎重に比較してください。

 また、保険会社の提携病院やクリニックがある大都市なら問題はありませんが、地方都市の現地医療機関で海外旅行保険を受け入れてくれるかというと保証はありません。診療を断られるリスクが大いにあります。契約する前に、保険会社に対して、留学先の土地で本当に保険が使えるのかどうかしっかり確認しておくようお勧めします。

 日系企業の駐在員やご家族の方の保険は、海外旅行保険だったり、アメリカ人の従業員と同じ現地の医療保険だったり、医療保険でカバーしない部分は一定額まで本社の健康保険組合に請求できる制度があったり、会社の事情によりマチマチです。保険会社やクリニックが計算を間違えて途方もない金額が請求されるケースもありますから、会社に迷惑をかけないように現地の医療保険についても少し勉強しておいた方がよろしいでしょう。カイロプラクティックの治療を安く受けられるなど、知っていれば使えるメリットもあります。


現地医療保険(PPO)の例…診療費


 現地医療保険の種類については事項をご参照ください…下の表は、PPOと呼ばれるアメリカで最も典型的な医療保険の例ですから、仕組みを大雑把に理解してください。PPOは、不必要な医療が施されるのを防ぐために、あらかじめ保険会社が各地の医師と契約を結んでおくものです。契約医以外の医療を受ける場合には、自己負担額が割り増しになります。

≪前提条件≫

料金

契約医 非契約医

コーペイ=診察料(Copayment)

*日本の初診料、再診料に相当

一次診療

$20

なし
専門科医 $35

年間免責額(Deductible)

*一部の医療については毎年一定額(コーペイ不算入)に達するまで自己負担

1個人 $250 $500
1家族 $500 $1,000

年間患者負担限度(Out-of-Pocket Maximum)

*コーペイ、免責額は不算入

1個人 $2,000 $4,000
1家族 $4,000 $8,000
生涯保険給付限度額 $5,000,000

≪診療費 (保険カバー率)≫

医療の種類

契約医

非契約医

予防医療

健康診断

全額(コーペイ後)

50% (免責額後)

血液や尿の検査X線写真子宮頸ガン検査マモグラム(乳ガン検査)前立腺検査インフルエンザ・肺炎予防接種

全額

50%(免責額後)

内視鏡検査

80%(免責額後)

50%(免責額後)

医院診療

一般診療

全額(コーペイ後)

50%(免責額後)

アレルギー注射と血清

全額($5のコーペイ後)

50%(免責額後)

手術

80%(免責額後)

50%(免責額後)

高度診療(PET/MRI/MRA/CAT/SPECT) 全額($100のコーペイ及び免責額後) 50%(免責額後)
ER(緊急医療)

全額(免責額後)

全額(加盟医免責額後)

病院診療

入院/外来

80%(免責額後)

50%(免責額後)

高度診療(PET/MRI/MRA/CAT/SPECT)

全額($150のコーペイ及び免責額後)

50%(免責額後)

ER(緊急医療)

全額($150のコーペイ及び免責額後)

全額($150のコーペイと加盟医免責額後)

その他

介護(年50日以内)ホスピス訪問介護(年100回以内)外来リハビリ(年25回以内)

80%(免責額後)

50%(免責額後)

応急医療

全額(専門医コーペイ後)

50%(免責額後)

カイロプラクティック(年20回以内)

全額(コーペイ後)

50%(免責額後)

医療器具(耐久財)の購入

50%(コーペイ後)

50%(加盟医免責額後)

救急車

80%(コーペイ後)

80%(加盟医免責額後)

妊娠・出産 一般の疾病と同じ 一般の疾病と同じ
臓器移植

一般の疾病と同じ

一般の疾病と同じ

(ただし年間患者負担限度$35000)

精神障害・依存症…入院(年20日以内)

80%(免責額後)

50%(免責額後)

精神障害・依存症…外来(年30回以内)

全額(専門医コーペイ後)

50%(免責額後)


現地歯科保険の仕組み


 歯科保険(Dental Insurance)の仕組みは、一般の医療保険とは少し違います。本来、保険というものはラスト・リゾート(最後にすがるもの)…医療保険はその通りで、自己負担が一定額に達したら残りはいくらでも保険が面倒見るから安心しなさいというシステムですが、歯科保険は逆で、ある程度までは保険が面倒見てあげるけれど使いすぎたら自己負担というお助け保険です。

 したがって、どうしても必要な医療は保険にまかせなさい/ぜいたくな医療は自分でも相応の負担をしなさいという規定になっています。たとえばポーセレン(歯の色に近い樹脂)製のクラウンが欠けて修理をしてもらった私のケースでは(治療費$650-免責額$50)X60%=保険給付額$360…自己負担額$290という計算でした。治療が終わってから請求書を見てびっくりということがないように気をつけましょう。差額はお勤め先の健康保険組合が払ってくれるだろうなどとタカをくくっていると、規定に「ポーセレンは除く」などと書いてあることもしばしば。

 ケガによる歯の損傷については、歯科保険ではなく医療保険がカバーします。


現地歯科保険(PPO)の例


≪前提条件≫

免責額 (Deductible)

例:(治療費$650-免責$50)X60%=保険給付額$360…自己負担$290

予防医療を除き1回 $50

(1家族につき年3回、4回目以降なし)

年間保険給付限度 (Maximum Benefit)

$1,500

≪診療費用 (保険カバー率)≫

医療の種類

契約医 非契約医
予防歯科

定期健診および歯垢、歯石の掃除(半年毎)

痛みを和らげる応急処置X線写真(年1回、詳細写真は5年毎)

14歳未満…フッ素塗付療法(6ヶ月毎)

16歳未満…永久歯の生えかわりのため乳歯の痕を保全する保隙装置

16歳未満…虫歯でない奥歯に樹脂をコーティングする措置(3年毎)

全額 全額
一般歯科

アマルガム(銀と水銀の合金)またはシリコン/アクリル樹脂製のつめもの

抜歯 (他の治療を伴わないケース)、ステンレス製クラウン

歯周治療手術、根管治療手術、口腔外科手術

全額(免責額後) 80%(免責額後)
高額歯科

金またはポーセレン製のつめもの、ブリッジまたは義歯

アクリル/プラスチック樹脂製のクラウン

60%(免責額後) 50% (免責額後)
矯正歯科 19歳未満…ただし一人当たりの生涯給付金は$1,500まで 50%(免責額後) 50% (免責額後)