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花粉アレルギー薬・e-百科

★くしゃみ・鼻水・目のかゆみに抗ヒスタミン薬 ★鼻づまりや目の充血に血管収縮薬 ★一部鼻スプレーは連続3日まで 

★ステロイド系の鼻スプレーは毎日使用 ★一部目薬は目のかゆみに無効 ★お勧めは各種アレルギー薬の併用


 この記事では、花粉症対策の内服薬や目薬・鼻スプレーの種類についてご案内しましょう。日本で買える薬も多数ありますが、買えない薬もあるようです。

 一部の薬(抗ヒスタミン薬系やステロイド系など)は、うつ病など精神障害を引き起こしたり悪化させることがありますから、お心当たりの方は市販薬でも主治医に相談した上でご利用ください。高血圧や心臓疾患、ぜんそくや気管支系の病気、緑内障や前立腺肥大などの疾患をお持ちの方も同様です。


くしゃみ・鼻水・目のかゆみに抗ヒスタミン薬


 まず、内服薬についてご案内します。

 花粉症は、一言でいえば、鼻腔や目の粘膜が花粉に過剰反応し、アレルギー症状をもたらす原因の化学物質を分泌するために起きるトラブルですね。でも、その原因物質には2種類あり、それぞれ別々の症状を引き起こしているのはご存知でしたか?それを知らないと、日本でもアメリカでもよい薬は見つけられません。

原因物質

作用

症状

ヒスタミン(Histamine)

鼻粘膜や目の結膜の知覚神経を刺激する

くしゃみ、鼻水、目のかゆみ

ロイコトリエン(Leukotriene)

血管を拡張させて鼻粘膜や結膜を腫らす

鼻づまり、目の腫れ・充血

 ここでいう鼻づまりは、鼻水が詰まったり鼻水が固化して詰まって起きる鼻づまりではなく、鼻腔の奥の粘膜が腫れて鼻孔が狭まって起きる鼻づまり…私の症状にも当てはまりますが、酸素不足で眠くなったり集中力が落ちたりして気がつく程度ですから、人に比べれば軽い方なのでしょう。

 また、目に現れる諸症状も、患部は同じ結膜(まぶたの裏と白目の表面を覆う粘膜)で、当然のことながら目の腫れにより目のかゆみも増します。

 このように症状を単純に区分することはできませんが、くしゃみ、鼻水、目のかゆみを治すには抗ヒスタミン薬を飲み、鼻づまりや目の腫れ・充血を治すには血管収縮薬を飲むというように、症状によって薬を選ばなければなりません。

 現在よく売れている内服用の抗ヒスタミン薬は次表の通りで、カッコ内はそれぞれの成分です。第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気をもよおすと言われています。クラリチンとアラバートの主成分は共通ですが他の薬の主成分は互いに違うので、ご自分に合う薬が見つかるまで第二世代以降の4種の抗ヒスタミン薬を飲み比べてみてはいかがでしょう。

アメリカで市販の抗ヒスタミン薬系の売れ筋内服薬(カッコ内は成分*印は処方薬)

第二世代以降の抗ヒスタミン薬

第一世代の抗ヒスタミン薬

Allegra

Zyrtec

Claritin/Alavert

Clarinex

Benadryl

Tavist

Chlor-Trimeton

(Fexofenadine)

(Cetirizine)

(Loratadine)

(Desloratadine)

(Diphenhydramine)

(Clemastine)

(Chlorpheniramine)


鼻づまりや目の腫れ・充血に血管収縮薬


 血管収縮薬…鼻づまりや目の腫れ・充血を治す薬は、単独では花粉症(Hay Fever)やアレルギーの薬としてではなく、風邪やアレルギーなどによる鼻腔の腫れと鼻づまりを楽にする薬として売られています。主成分はスードエフェリン(日本ではプソイドエフェリン)かフェニレフリンですが、副作用もありますからそれぞれの特性を理解して気を付けて使う必要があります。

アメリカで市販の血管収縮薬系の売れ筋内服薬(*印は処方薬)

血管収縮成分 スードエフェドリン(Pseudoefedorine)

フェニレフリン(Phenylephrine)

持続時間 12時間/24時間 一般的に4時間
鼻づまり専用薬 Sudafed Sudafed PE
兼用薬

アレルギー薬 Allegra-D/Zrtec-D/Claritin-D

鎮痛剤・風邪薬 Tylenol/Advilほか

鎮痛剤・風邪薬 Tylenol/Advilほか

===== スードエフェドリンは覚醒剤原料 =====

 スードエフェドリンは漢方でいう麻黄(マオウ)ですが、覚醒剤の原料にもなる成分で、含有量10%以上を超えると日本では覚醒剤取締法の対象になります。そのため、スードエフェドリン系製剤は処方薬ではないものの、薬局の棚にはなく薬局の窓口で運転免許証などのID(身分証明)を見せないと売ってはもらえません。

 抗ヒスタミン薬とスードエフェドリンを組み合わせた総合アレルギー内服薬は、元の抗ヒスタミン薬の商品名×××の末尾に-Dを付けた×××-Dの名で売られています。×××-Dは元の抗ヒスタミン薬に比べ極めて高価ですが、くしゃみ・鼻水・目のかゆみの症状に限っていえば、薬効は全く変わりません。鼻づまりや目の腫れ・充血の症状がなければ、-Dのないアレルギー薬(商品名×××)で十分でしょう。

===== フェニルフリンは1回の用量に注意 =====

 ところで、血管収縮剤は交感神経を刺激し末梢血管を収縮させますが、フェニレフリンの場合は特に1回の用量を増やしては血圧が上がって危険ですからご注意ください。そのために持続時間が短いのが難点で、抗ヒスタミン薬と組み合わせ総合アレルギー内服薬として売られている製剤はわずかしかありません。

 しかし、スードエフェドリン系製剤が薬局の窓口販売になってからはフェニレフリン系の製剤が増え、最近は、ウォルグリーンやウォルマートなど薬局チェーンや大手スーパーのPBブランドで安い鼻づまり専用薬が出回るようになってきました。薬名の末尾にPEとあればフェニレフリンを含む鼻づまりやアレルギーの薬で、薬局の棚に並んでいます。

 私レベルの軽い鼻づまりのケースでは、花粉の多い日にはまず抗ヒスタミン薬系のアレグラ、ジルテック、クラリチンなどを服用しておいて、ひどい鼻づまりを感じたら、その都度フェニレフリン系の鼻づまり薬ス—ダフェドPEを飲む程度で収まっています。

===== その他の内服薬 =====

 内服薬には、ほかに気管支拡張薬、脂肪細胞安定薬、ロイコトリエン調整薬がありますが、全て処方箋なしには買えないお薬です。


血管収縮薬入り鼻スプレーは連続3日まで


 次は、鼻スプレーのご案内です。鼻スプレーを成分別に分類すると、内服薬でご案内した抗ヒスタミン薬系や血管収縮薬系のほかに、ステロイド系と脂肪細胞安定薬(ケミカルメディエーター遊離抑制薬)や副交感神経遮断薬、さらに生理食塩水などオーガニック系があります。

アメリカで市販の主要なアレルギー用鼻スプレー(カッコ内は成分*印は処方薬)

血管収縮薬 抗ヒスタミン薬

ステロイド薬

脂肪細胞安定薬

Afrin (Oxymetazoline)

Dristan (Oxymetazoline)

Neo-Synephrine (Phenylephrine)

Sinex (Oxymetazoline)

*Astelin (Azelastine)

*Astepro (Azelastine)

*Potanase (Olopatadine)

Flonase (Fluticasone)

Nasacort (Triamcinolone)

*Beconase (Beclomethasone)

*Nasarel (Flunisolide)

*Nasonex (Mometasone)

*Qnal (Beclomethasone)

*Rhinocort (Budesonide)

*Vancenase (Beclomethasone)

*Veramyst (Fluticasone)

*Zetonna (Ciclesonide)

NasalCrom

(Cromolyn Sodium)

副交感神経神経遮断薬

Atrovent (Ipratropium)

 

 

 

 

 血管収縮薬系の鼻スプレーは、確かに鼻づまりによく効きます…薬局で処方箋なしで買えるので安全に使えそうですが、よく効くので癖になってしまいがちです。1回の用量と使用頻度を守り、3日以上は続けて使わないようにしないと次第に鼻粘膜が厚くなり、アレルギーに関係なく常に鼻づまりするようになってしまいます(薬剤性肥厚性鼻炎)から気を付けましょう。

 抗ヒスタミン薬系の鼻スプレーは、主に鼻水とくしゃみを止めるのに効きます。


ステロイド系の鼻スプレーは毎日使用


 ステロイド系の鼻スプレーは、フロネーズ(日本ではフルナーゼ)やネーザコートを除き処方薬ですが、花粉の飛翔が始まる1~2週間前から使い始め、1日1回のように決められた用量を毎日欠かさず続けると効果があります。スプレーの噴霧も決められた方法を守らないと、鼻粘膜を傷つけ鼻血が出やすくなりますから、気を付けてください。また、ステロイドは基本的に身体の免疫を弱める成分ですから、感染症に対する抵抗力が落ちることは忘れないでください。

 脂肪細胞安定薬(英語ではMast Cell Stabilizer)というのは、花粉症の症状を引き起こすヒスタミンやロイコトリエンを分泌する脂肪細胞の働きを抑制する成分で、ステロイド系ほど効き目は強くありませんが安全性は高く、免疫を弱めてはいけない人にお勧めです。商品名はナサルクロム…薬局で買えます。

 副交感神経神経遮断薬のアトロベントは処方薬で、鼻水を生成段階で止めますが、鼻づまりやくしゃみには効果がありません。

 生理食塩水系の鼻スプレーは数多くありますが、鼻保湿スプレー(Nasal Moisturizing Spray)と書かれた大きめの容器に入っていますから、容易に区別がつきます。特別な薬効はありませんが、副作用もないので1回の用量や使用頻度を気にせずに、鼻がすっきりするまで何度噴霧しても問題ありません。変わり種としては、虫歯予防の甘味料としてしばしばガムに使われるキシリトール(英語ではザイレトール)入りのエクスリア—(Xlear)という鼻スプレーもあります。


血管収縮薬だけの目薬は目のかゆみに無効


 最初にご案内するのは血管収縮薬系の目薬…というのは、処方箋なしで買えるアレルギー用目薬としては最も種類が多く、安全な目薬と信じて買ってしまいがちですが、実は効き目は限定的で使いすぎると症状を悪化させるリスクがあります。

 薬効を具体的にいうと血管収縮薬系の目薬は、目の腫れ・充血を一時的に解消するのに即効性がありますが、目のかゆみを抑えるのには役立ちません。長期間続けて使用すると、リバウンドで目の腫れ・充血が起きるようになり、使用を中止してもしばらくは症状が収まらないこともあります。また、眼圧を上げるので、緑内障のリスクを高めますからご注意ください。

アメリカで市販の主要なアレルギー用目薬(カッコ内は成分*印は処方薬)

血管収縮薬 抗ヒスタミン薬

抗炎症薬

脂肪細胞安定薬

Clear Eyes (Naphazoline)

Refresh (Phenylphrine)

Visine (Tetrahydrozoline

/Oxymetazoline)

*Emadine (Emadastine)

*Livostin (Levocabastine)

*Optivar (Azelastine)

《非ステロイド》

Acular (Ketrolac)

Acuvail (Ketrolac)

《ステロイド》

*Alrex (Loteprednol)

*Lotemaxr (Loteprednol)

Claritin Eye (Ketotifen)

Refresh (Ketotifen)

Zoditor (Ketotifen)

*Alamastl (Pemirolast)

*Alocril (Nedocromil)

*Alomide (Lodoxamide)

*Crolom (Cromolyn)

《抗ヒスタミン+脂肪細胞安定》

*Elestat (Epinastine)

*Patanol (Olopatadine)

*Pataday (Olopatadine)

血管収縮薬+抗ヒスタミン薬

Opcon-A (Naphazoline/Pheniramine)

Naphcon-A (Naphazoline/Pheniramine)

*Vascon-A (Naphazoline/Antazoline)


脂肪細胞安定薬系の目薬はゆっくり効きます


 抗ヒスタミン薬系の目薬はすぐに効いて目のかゆみを和らげてくれますが、効果は数時間で切れてしまいますから日に何度も点眼しないといけません。それはいいとしても、処方箋なしで買える抗ヒスタミン薬系の目薬オプコン-Aとナフコン-Aには、抗ヒスタミン薬の成分だけでなく血管収縮薬の成分も含まれているので、無制限に使うことはできません。ほしければ、主治医に目薬の名前を言って処方箋を書いてもらいましょう。

 次は、抗炎症薬系の目薬です。非ステロイドの抗炎症薬は神経細胞の末端部に効いて、点眼後1時間ほどで目のかゆみを解消します。目に注入した時に、チクッとした痛みやヒリヒリした痛みを感じることがあります。ステロイドの抗炎症薬は、慢性で重症のアレルギー性眼病患者の治療に限って使われます。

 脂肪細胞安定薬(英語ではMast Cell Stabilizer)は鼻スプレーの項でもご説明しましたが、花粉症の症状を引き起こす化学物質のヒスタミンやロイコトリエンを分泌する脂肪細胞の働きを抑える成分です。即効性はありませんが安全性が高く、副作用を気にかけず何ヶ月も長期にわたって使い続けることができます。最新のタイプで、特にコンタクトレンズ利用者にはお勧めのアレルギー用目薬…処方薬には抗ヒスタミンの薬効成分を含む目薬もあります。


お勧めは各種アレルギー薬の併用


 さて、これまでの説明で内服薬・鼻スプレー・目薬それぞれに多種多様のアレルギー薬があることがご理解いただけたかと思います…皆さんに最適のアレルギー薬は、症状に合わせて皆さんご自身が見つけるか、信頼のおける主治医や専門科医に症状をよく説明して選んでもらわなければなりません。

===== 軽い花粉症の場合 =====

 といっても、症状が軽ければ私のように、くしゃみ・鼻水・目のかゆみだけが気になるときには第二世代抗ヒスタミン薬の内服薬、鼻づまりや目の腫れ・充血が気になるときには血管収縮薬の内服薬を飲むとか、あるいは両成分を含むxxx-Dと名の付く薬を薬局で運転免許証を提示して買い飲み続けても、用量さえ守れば問題ないでしょう。 

===== 処方薬は実質的に安価 =====

 第二世代以降の抗ヒスタミン薬は飲んでも眠くなりにくいのですが、それでも眠くなりがちの方には鼻スプレー・タイプがお勧めです。

 私自身は必要がないので主治医に相談したことがありませんが、処方箋がないと買えない抗ヒスタミン薬の鼻スプレーや目薬は、副作用も少なく薬効も期待できるので試してみる価値があります。かなり特殊な持病がなければ、主治医は誰でも二つ返事で処方してくれるでしょう。

 処方薬というと高価につきそうですが、一昔前には、アレグラ‐Dが処方薬時代は医療保険の対象で安く買えたのに、処方箋なしに薬局で買えるようになった途端に、全額負担で実質的に値上がりしてしまったことがありました。皆さんの医療保険のプラン次第ですが、アメリカでは処方薬や処方薬のジェネリック(後発薬)が薬局の棚で買える薬より実質的に安く買えても不思議ではありません。また、処方薬が皆さんの医療保険の対象でなくても、GoodRx(goodrx.com)というサイトを利用しクーポンで安く購入する方法もあります。

===== 重症の花粉症の場合 =====

 本当に重症の方の場合は、減感作療法(アレルギーに身体を慣れさせる治療法)などで根本的な治療を受けたほうがよろしいのでしょう。

 でも、そこまでではない方なら、花粉症のシーズンが始まる1~2週間前からステロイド薬系や脂肪細胞安定薬系の鼻スプレー(フロネーズ、ネーザコート、ネーザルクロム)を毎日欠かさず使用しそれでもアレルギーのひどい日に限り、抗ヒスタミン薬系や血管収縮薬系の内服薬を飲むようになさってはいかがでしょう。性格の違う薬ですから併用に問題はないと思いますが、具体的な商品名を上げて主治医に相談してみてください。