アメリカの 「マネーと保険」・e-ガイド(印刷ページ

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アメリカの銀行と日本の銀行

★口座管理は自己責任 ★「不渡り」ドンマイの社会 ★小切手口座の種類 ★母親の旧姓


口座管理は自己責任


 日本の銀行がミスをしてお客様に迷惑をかけたら一大事、時には支店長が菓子折りを手土産にお宅まで謝りに行くことだってあります。

 アメリカの銀行は、ちょっとしたミスでは謝りません。極端に言えば、自分のお金は自分で管理するもので、銀行はお手伝いする立場。日本流に腹を立ててもしかたありません。アメリカの銀行が、ミスを訂正してくださったら、「サンキュー」と言ってニコッと笑ってください。


「不渡り」ドンマイの社会


 日本の金融システムは、欧米では想像がつかないほど厳格です。個人取引で小切手が普及しないのは、うっかりミスが許されないからでしょう。

 裏返せば、手形や小切手は会社が使うものというのが日本の社会常識です。「不渡り」を出すと、社名が世間に知れ渡り、半年以内に二度目の「不渡り」を出すと、銀行取引ができなくなる決まりになっています。だから、「不渡り」=「倒産」。

 アメリカでは、誰でも気軽に小切手を利用します。口座に十分な残高がないのに小切手を切ると、小切手は「アンペイド」になります。直訳すれば「不渡り」ですが、日本の「不渡り」とは全く意味が違います。

 銀行や小切手の受取人など当事者に若干の迷惑料を払ったり、クレジット・ヒストリー(信用履歴)が少しだけ悪くなることがあるかもしれませんが、特に社会的な制裁はありません。「不渡り」ドンマイ(Don't mind.)です。

 小切手は、銀行の事務処理が単純で、ミスが起きにくい優れたシステムです。小切手には、振出人の銀行口座などがあらかじめ自動読み取りできるよう印字されています。銀行員が金額を読み取って追加入力してあげれば、後は全て機械処理される仕組みで、金額以外は間違いがおきにくいのです。

 日本でお金を動かす場合は、たいてい銀行振込。送金人や受取人の名前や取引銀行名など多数の項目をいちいち入力しなければならない煩雑なシステムで、間違いが起きる落とし穴がたくさんあります。


小切手口座の種類


 一般の皆さんにはなじみのない預金ですが、「当座預金」は小切手を振り出すことのできる預金口座のことです。チェッキング・アカウントを直訳して「小切手口座」と呼んだ方が分かりやすいかもしれません。

 預金には、大別すると、ほかに貯蓄預金(Saving Account)と定期預金(預金証書=Certificate of Deposit)がありますが、皆さんが、アメリカで日本の普通預金代わりに使うのが小切手口座(当座預金)。大きな違いは、日本の普通預金の「払い戻し依頼書」は本人がお金を下ろすときにしか使えませんが、「小切手」の場合は本人以外でも、お金を引き出せるということです。

 小切手口座(当座預金)にも、種類がいくつかあります。最も単純な小切手口座は、残高がいくらでもかまわない代わりに、利息が付かないし、お金が動くたびに手数料を取られてしまう口座です。

 一定の金額を常にキープする約束をすると、手数料を取られず利息も付けてくれる口座を開くことができます。赴任直後で家計の見通しがつかないうちは、無理をせず取敢えず口座を開き、後から契約を見直せば済むことです。

 銀行口座を開設するときに必要なのが、ソーシャルセキュリティー・ナンバーです。本来は個人の年金や税金を管理するための番号ですが、ちょうど日本の「本籍」のように使われます。昔はソーシャルセキュリティー・ナンバー取得手続き中でも口座を開設してくれる銀行があったものですが、2001年の同時多発テロ以降は手続きが厳格化し融通が利かなくなってきてしまいました。もっとも、駐在員の方は、ソーシャルセキュリティ・ナンバーなしには会社からお給料がもらえませんから、渡米後真っ先に手続きをなさるはずです。

 就労許可のない奥様の場合は、タックスIDナンバー(納税者番号)を取得して銀行取引をすることができます。ご主人と共有の口座(ジョイント・アカウント)を開くと便利ですが、しばらくは我慢して、タックスIDナンバーが取れてから、ご主人名義の口座に相乗りなさったら、よろしいでしょう。

 ソーシャルセキュリティ・ナンバーのない外国人の取扱いについては、役所や銀行にも、正しく理解している人が少ないのが実情です。ソーシャルセキュリティ・ナンバーなしでも銀行口座は持てるはずなのですが、実情からいえば、留学生が最初から一般銀行で取引するのは難しいかもしれません。 取り敢えず、留学先の大学のクレジット・ユニオンに口座を開くことにしましょう。


母親の旧姓


 ところで、銀行に限らず、様々な事務手続きの都度よく聞かれるのが「母親の旧姓(Mother’s Maiden Name)」。これは、一種の暗証(本人確認のコード)です。せっかく暗証を決めておいても、みんな簡単に忘れてしまいますから、「母親の旧姓」は誰にでもあるはずの究極の暗証として使われています。