小切手紛失被害の防止 ★「裏書」をご存じですか? ★銀行口座入金限り ★トラベラーズチェックの鉄則 ★「線引き」の効果は疑問 日本人同士で小切手をやり取りする機会は少ないかもしれませんが、お給料は自動振込みでも、会社から経費のお支払いを小切手で受け取るケースはないとも限りません。大事な小切手を落として、見知らぬ他人に使われてしまったらたいへん…どうしたら小切手の盗用を防ぐことができるのか、難しくはありませんから、しっかり勉強してください。 「裏書」をご存じですか? まず基本は、銀行で入金するときに小切手の裏にするサイン。日本では「裏書き」=アメリカではエンドースメント(Endorsement)という行為ですから、トラブル時に備えて名前を覚えておきましょう。買物をしたら、小切手の表の受取人欄に代金を支払う相手の名前を書くのは、皆さん、ご存知ですね。
小切手の裏の「裏書き欄」に、受取人が署名すると、お金を受け取る権利が他人に譲渡(transfer)されます。皆さんが口座に小切手を入金するときに「裏書き欄」に署名するよう銀行が頼むのは、皆さんの銀行が小切手振出人(発行した人)の取引銀行にお金を請求する際に正当な権利者であることを証明しなければならないからです。 (注)アメリカの銀行は裏書きなしでも入金することがあるかもしれません。 小切手は、小切手振出人の取引銀行に送られ、お金は小切手振出人の口座の残高を引き落として皆さんの取引銀行に支払われます。通常、小切手を入金しても、銀行が全額をその場で払ってくれないのは、小切手支払人の銀行からお金が送られてくるのに日数がかかるからです。 ところが、小切手を換金する場所は銀行だけではありません。 銀行口座入金限り 気をつけてみると、チェック・キャッシング(Check Cashing)と呼ばれる(日本で言えば「サラ金」)お店が街のあちこちにありますが、このようなお店では身分証明書さえ見せれば手数料を取って小切手をその場で換金してくれるのです。署名が本人のものかどうかは、小切手を受け取った人が(それなりの)確認をするだけで法律上はパス。大都会では偽造の運転免許証だって出回っているようですから、悪い他人の手に渡ったら…くわばらくわばら。 でも、心配ご無用。これを防ぐには、裏書きの署名の上に「For Deposit Only=銀行口座入金限り」と書き込むだけで十分です。このように書くだけで、サラ金が「いちげん」のお客さんに小切手を換金してあげることができなくなります。小切手を拾った人が自分の銀行口座に入金した上で引き出すことは可能ですが、これでは必ず足が付いてしまいます。 一番いいのは、小切手を受け取ったら、その場で「For Deposit Only」と書き込むことです。署名は銀行で入金するときまで放っておく方が、より安全です。 トラベラーズチェックの鉄則 トラベラーズ・チェック(旅行者小切手)の場合は、特に気をつけましょう。トラベラーズ・チェックには署名欄が二つありますが、一つは皆さんの真正な署名の「控え」です。「控え」の署名欄は、トラベラーズチェックを購入したら直ちに署名しておかないと、他人に偽の署名をされてしまうかもしれません。 もう一方(カウンターサイン)の欄が、本当の署名欄…トラベラーズチェックを使う時までブランクにしておかなければいけません。二つとも署名したトラベラーズチェックは既に現金と同じで、拾った人に使われても文句はいえません。 買物のお支払いのときに、店員さんの目の前で署名するのがトラベラーズチェックの鉄則です。反対に、自分のトラベラーズチェックと説明しても、拾ったものだと疑われてしまうかもしれません。 「線引き」の効果は疑問 日本では、(「線引き」と言うのですが)小切手の表面に二本線を引けば「For Deposit Only」と同じ効果のある行為になります。アメリカでも、法的には同じ規定があるようですが、「線引き」は世間で知られていないので当てにするとトラブルになるそうです。 裏書き欄に三本線があるのは、裏書きの下に裏書きすると、人から人に小切手を譲ることができるからですが、スペースが狭ければ、線を気にしないで、のびのびと署名しても特に問題はありません。 もらった小切手をなくしてしまったら、小切手の振出人に再発行をお願いしましょう。相手に手数はかかりますが、(たまに郵送中に紛失するケースもあり)アメリカでは珍しくない話です。紛失した経緯や金額によりますが、他人に使われるリスクが高ければ、振出人が取引銀行にストップペイメント(Stop Payment)を依頼して紛失した小切手を無効にするのが安全です。ストップペイメントは無料サービスではありませんから、迷惑をかけた人が銀行手数料を払うべきです。 蛇足ですが、チェックブック(小切手帳)をまるごと落としたらたいへんです。いつでもどこでも気楽に持ち歩くのは少し考えものかもしれません。 |